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シェアリングエコノミーは社会を変えるか〜シェアが生み出す新しい価値~-第31回エコ×エネ・カフェ 前編-

  • 2019年10月16日
  • 緑のgoo編集部

シェアリングエコノミーの社会へのインパクト

こういったものが、社会にどのように影響を及ぼすのか。いま日本が抱えている問題として人口減少や過疎化、持続可能なまちづくりが注目されています。誰もが活躍できる、社会参画できる、いきがいの創出やつながりを見出すことができる。そして、過剰に生産消費しなくてもゆるやかな消費が生み出せる。需要が小さいものにも新しい価値を提供できる。そんな風にイノベーションを起こしていけるんじゃないかなって思います。

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このエコ×エネ・カフェもSDGsをテーマにしていますが、この表の左側にあるように、従来のビジネスは基本的には、「私のもの」と「あなたのもの」とを線引きをして、競争を促すことによって発展してきました。シェアリングエコノミーは、この表の右側にあるように、いろいろな人が自分の持っているものを少しずつシェアすることで市場を満たしていく・眠っているものを再活用・再利用することができるという意味で、SDGsともとても相性がいい経済活動と言えます。

大企業でも自社のアセットを活かして新しい持続可能な価値を生み出す動きが生まれています。例えば、ANAホールディングスは空席の目立つ路線を活かし、シェア企業と提携することで手ぶら旅という新たな旅のスタイルを提案しています。

世界のさまざまな都市でも取り組みが進んでいます。アムステルダム市は2008年ごろから、環境にやさしい都市をつくるというアジェンダのもと「アムステルダム・シェアリングシティ」という宣言を出し、条例が設定されました。

韓国のソウルでは人口が急増して環境・雇用などいろいろな都市課題に直面しましたが、2012年にソウル市長がシェアリングエコノミーの条例を制定して、行政が推進するさまざまな施策が生まれました。例えば、自治体とNPOが一緒に運用しているオープン・クローゼットというプロジェクトでは、就職活動をしている学生に、寄贈されたスーツを無料で貸し出すサービスを提供しています。

国内にも広がるシェアと共助の動き

国内でも2年前くらいから広がってきていまして、総務省の報告によると2018年度に76の自治体からの事例が紹介されています。これから人口が減り自治体の財源が減っていくと、これまでと同じように行政サービスを保持するのが非常に難しくなると言われています。こういった課題を、市民同士が助けあう「共助」によって解決していくことが期待されているのです。

北海道の天塩町では、過疎化によってバスや電車の本数が徐々に減り廃止になってしまいました。おばあちゃんが病院に行きたくても2時間はかかってしまう状況の中、ついにはタクシー会社も撤退してしまったのです。そこでライドシェアを通じて、運んでくれる人と移動したい人をマッチングをすることによって地域の病院まで送り届ける、共助による解決が見出されています。

自然災害が起こった時に、大きな組織や機関を通すとなかなか思うような支援が難しいことがありますが、プラットフォームを通じて直接つながりが生まれると、ここまでだったら自分で提供できますよ、といった細やかなやりとりができるようになります。

来年はオリンピックが開催されますが、大規模イベントなどで一時的に大勢の人が訪れる時に、ホテルを新築したりしなくても、民泊などによって新しい価値を提供していくことも注目されます。千葉市では市民の方を巻き込んで民泊を通じた訪日外国人の受け入れを推進したり、設備などの利活用について市民と一緒に考えるためのシンポジウムを開催しています。

新しい価値観の広がりと共に

シェアが広がることによって変わるものの一つが「働き方」です。仕事という概念も「労働としての対価を得る」というものから「生活の中で稼ぐ」とういうものに、さまざまなやりとりも、一つの会社の中だけではなく、いろいろな人や組織との関わりを通して行うようなスタイルになってきています。

「住まい・暮らし」も、これまでは家をひとつを買うか・借りるかだったのが、今は家をシェアすることによってさまざまな可能性が広がっています。私はいま東京と熱海と大分という合計3つの拠点を持っていますが、シェアリングエコノミーを使うとお金持ちではなくてもこれができてしまうんです。例えば自分が大分にいる間は東京の家を誰かに貸してシェアすることによって、新たな収入源にすることだってできる。こうやって移動や暮らしが楽になって、世界中に居場所が持てるといいなと思っています。

戦後のものが「ない」時代は、「資源は無限」という前提から経済を大きくしてきました。ものが飽和し始めている今、私たちは「資源は有限」であることを意識してビジネスをする必要があります。

個別化が進み、価格競争によって単価を下げることでものを手に入れやすくすることによって成長してきたのが、今までの経済であり豊かさでした。それはつまり、人と交流することなく一日を過ごせてしまうということです。つながりの希薄化によって孤独死のような状況が生まれています。

これまでの時代は所有することがしあわせのロールモデルでしたが、これからの時代はシェアすることそのものが豊かさの指標になると思います。お金かステータスではなく、つながりやより多くの人に信頼されていることが幸せの資産になっている。

少し前の時代はみんなが同じだったので違うことがかっこいいという価値観でしたが、今は簡単に自己表現・自己実現ができる、みんな違うことが当たり前という中で、共感したり、一緒だなと感じることに価値を感じています。「わたし(個人)主義」という主語が「私たち(みんな)主義」へと変わってきているんです。

人間関係も「血縁・地縁・所属組織」によるものから、「消費・趣味・価値観」に基づくものへと変わっていきました。商品やサービスを通じて人とつながる、Airbnbで一晩泊まって一緒にご飯を食べた人とfacebookでつながってそのままずっと友達でいるといった新しい価値が生まれています。

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