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シェアリングエコノミーは社会を変えるか〜シェアが生み出す新しい価値~-第31回エコ×エネ・カフェ 前編-

  • 2019年10月16日
  • 緑のgoo編集部

シェアリングエコノミーは社会を変えるか〜シェアが生み出す新しい価値

石山:
シェアリングエコノミーというのは昔からあるものでもあり、新しいものでもある、とても広い概念です。

私は平成元年に生まれましたが、平成という時代は、低成長だったとか、マクロな経済成長からいうと失敗だったのではないかと言われています。でも本当は、これまでの豊かさや幸せの定義と、私たちが実際に感じているものとの間に少しずつ差がでてきたのが、平成という時代の最後だったのではないかと思うんです。

この中で、メルカリやAirbnb、Pairsなどのサービスを使ったことがある人はどれくらいますか?まったく見知らぬ人からものを買う。まったく見知らぬ人とスマートフォンを使ってやりとりをする。今、こういったサービスを年間何億人もの人が使っています。これって不思議だと思いませんか?

例えば「ライドシェア」は、見知らぬ人の自家用車に乗って移動するというサービスですが、昔お母さんから「知らない人の車に乗っちゃだめよ」と言われて育ったのではないでしょうか。かつて教わったこととまったく正反対のことからお金やサービスが生まれています。スマートフォンひとつで、昔の当たり前とまったく正反対の当たり前が生まれようとしている。これも、幸せや豊かさが再定義されていくことのなかで生まれてきたことではないかなと思います。

私はシェアリングエコノミーを暮らしの中でも実践しています。東京のシェアハウスに64人のクリエイターと暮らしているのですが、空いている時間にはそこで暮らす子どもの世話をしたり、一緒にご飯つくったり、介護の手伝いをしたりします。いろいろなスキルを持っている人がいるので、ほとんどのことを暮らしている人たちの力で解決できてしまうんです。

「いかしあう」シェアの世界

これまでの時代は、人類が便利さや効率性を追求しすぎた結果、個別化が進んでいきました。ものはたくさんあるけれど、でも実際は、ものを買わなくても、サービスに頼らなくても、自分たちが持っていることをシェアするだけでほとんどのことを解決することができる。これが今シェアが注目されている背景にありますし、つながりが希薄していった社会の中でなかで、とても大切なものになっていくのではないかと思っています。

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シェアリングエコノミーの確固たる定義は、世界的にも実はありません。この左側の図は江戸時代の長屋の風景ですが、かつてはお風呂やテレビは隣同士で共有する、子どもはまちのみんなで育てる、お醤油が足りなかったら貸し借りするといった暮らしがありました。これが今は、テクノロジーやインターネットができたことによって、スマートフォンひとつで世界中の人に自分が持っているものを発信してシェアすることが簡単にできるようになりました。これが新しいニューエコノミーとしてのシェアリングです。

シェアリングエコノミーには、B2Bで企業の余っている資産を貸し借りするというものもありますし、シェアサイクル(自転車)とかシェアカー(自動車)のようなB2C型も広がっています。特にイノベーションだと思うのは、インターネットプラットフォームが登場したことによって、個人間でも簡単にやりとりができるようになったということです。 従来はB2C、企業がものを生産して消費者に買ってもらうというのが経済の流れでした。シェアリングビジネスの特徴の一つは、提供するのは個人であるということです。これまで価格は企業が決め、企業が提示する情報を元に消費者が評価をしていました。それが今は、既に購入した人が評価した口コミのような集合知を元にしてを判断する評価システムが生まれています。たとえば食べログのようなサービスもそうですね。

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シェアリングエコノミーは大きく分けると、モノ、空間、移動、スキル、お金といった5つの分野に広がっていて、衣食住のほとんどがカバーできるほど急成長しています。市場規模も大きくなっていますし、調査によって、経済合理性だけではなくて、人々の幸せや幸福度に寄与するということもわかってきています。

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たとえば、リタイア後のおばあちゃんがAirbnbを通じて自分の家を宿泊先として解放したら、毎日外国人の方がやってきて、ご飯を食べて仲良くなって帰っていくようになった。それが生きがいや幸福度の創出につながっている。

北京ではホームクックという、家庭料理を食べたい人と食べて欲しい人をマッチングするサービスが流行ってきていますし、ニューヨークでは、使っていないカフェの時間をワーキングスペースとして貸し出すサービスがあります。

日本でも、スペースを貸したい人、借りたい人をつなぐサービスはあります。例えば廃校になった学校を貸し出しスペースとしてシェアリングのプラットフォームに載せることで個人とのマッチングが可能になり、結婚式のサプライズ動画の撮影や企業の運動会、コスプレイヤーの方のイベントなど、管理している自治体だけではなかなかイメージが湧かなかったような使われ方が生まれているのです。プラットフォームを使うことで欲しい人とマッチングできるようになったというところが新しいですね。

荷物を預けたい人と預かってくれる人、送迎して欲しい人、してくれる人をマッチングしたり、顔見知りのママさん同士をつないだり。新潟では、農家さんが忙しくない時期にきりたんぽ体験などを企画して個人に直接販売する、個人のガイドツアー等があります。浅草(東京)ではリアイアしたおじいちゃんが大好きなマンホールを解説するツアーを開催して好評です。企業がやるには小さすぎるけれど、欲しい人と個人がマッチングされて結ばれることによって新しい価値が生まれている。

代々木上原(東京)の待機児童が問題になっている地域では、保育園をつくりたいとクラウドファンディングで募ったところ、なんと10日間で1.7億円も集まりました。普通の人がこれだけのお金を銀行から融資してもらって資金を通達するのは、ほぼ不可能ですよね。でもそれだけのことが、共感の力で生まれている。これはイノベーションだと思います。

他にも、月額定額料金で全国のいろいろな家が住み放題になったり、店舗閉店の1時間まえに廃棄が確定しているごはんを取りにきてくれると、無料またはかなりやすい値段で買えるようになったり。ヨーロッパでは食材を近所の人との間でシェアするサービスが生まれています。

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リタイアしたおじさんが包丁研ぎをやってみたら人気が出て本の出版の話が生まれたり。料理の上手い人が作り置きをしたらそれがめちゃめちゃ評判になってレシピ本が出版されたり…。たとえばダスキンのような企業が提供する家事代行はマニュアル通りなので誰が来てくれても基本的には一緒だと思いますが、C2Cならより自分の個性を活かした方法で収入につながるということができるのが魅力的だと思うんです。

皆さんにも、何かシェアできるのがありそうでしょうか?たとえば車を所有している方でも、1週間のうち10時間未満しか使わない人という人がほとんどですよね。使わない時間は誰かにシェアするという発想で活かせるということを、是非覚えていてください。

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