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バッテリーで変わる電気の使い方~再エネ拡大から暮らしの変化まで~
― 第24回エコ×エネ・カフェ(前編)

  • 2017年2月23日
  • 緑のgoo編集部

蓄電池は今後どうなる?

蓄電池は今後どうなる?

矢部: リチウムイオン電池が普及するきっかけは車になると思っています。やっぱりkWhで考えると、車に搭載されている電池は他の電池に比べてコストパフォーマンスが桁違いなんですよね。ですから、大型のリチウムイオン電池がこれからどれだけ売れていくかが勝負です。そういう意味では、テスラが行った赤字覚悟の価格破壊が日本でも始まって、大型のリチウムイオン電池が売れるようになると、家庭にも普及が進むと思います。

森: カリフォルニアや中国で大型電池が普及して安くなるというのはどういうことですか。
矢部: カリフォルニアは太陽光発電がすごく増えているので州政府が「大きい電力会社は何万kWの電池を置きなさい」というルールをつくりました。これがきっかけで大型電池が普及するのではないかと思います。リチウムイオン電池は日本で発明されて日本のメーカーが圧倒的なシェアを占めていたのですが、最近は中国や韓国のメーカーも安いものがつくれるようになりました。国の目標でも太陽光や風力発電を増やそうとしていますが、そのためにも電池がもっと安くならないと難しいと思います。「スマートグリッド」という言葉も耳にしますが、これは、系統全体で使っていないような電池も有効活用するしくみで、いま注目されています。

森: 各家庭に電池を置くよりも、変電所や電力系統に置く方がコストパフォーマンスがよいということですね。ゼロエネルギーハウスがあると「電力会社に頼らなくても生活していける」というイメージがありますが、そういうわけにはいかないのでしょうか。

矢部: 日本は、雨が続く季節もありますから、電力会社から完全に自立しようと思うとものすごく大きな電池を置かなければならず、とてもお金がかかりますし効率が悪いです。現在、太陽光発電や蓄電池は経済面が普及のネックになっていますが、安くなれば一般の方にも手に入りやすくなるのかなと思います。それから電気自動車ですね。先ほど、とある電気自動車は30kWh程度の容量があるとお話ししましたが、住宅に置く蓄電池が5~10 kWhというのに比べるとすごく容量が多いんですね。例えばテスラが今年販売を始める電気自動車の場合、300km以上走れるよう大きな電池を積んでいるはずなのに、3万5千ドルは安いです。車がきっかけで電池が量産されれば、今後電池がすごく安くなるかもしれません。

電力会社の視点から見た蓄電池

森: ここでJ-POWERの藤木さんより、電力会社の視点から聞いてみましょう。

藤木: お話の中に「系統」という話がありました。再生可能エネルギーは不安定なので、日本の系統にはなかなか入れにくいというお話がありましたが、ヨーロッパ、特に北欧の方では日本より再生可能エネルギーの割合がだいぶ高いということを聞きました。日本とヨーロッパの系統に違いはあるのでしょうか?

矢部: ヨーロッパでは特に風力が増えましたね。ドイツでは、風力と太陽光、そして今はバイオエネルギーが増えていて、すでにかなり電気代が安くなっています。ただ、ヨーロッパは他の国と電力系統が繋がっていて、フランスの原子力で発電した電気をドイツに送ったり、ドイツで余った電気をまわりの国に流したりすることができるんですね。日本は島国なので、各地域を結ぶ連系送電線というのはこれから増やしていこうという状態です。特に、北海道や東北、九州は、送電線の容量が小さいので、太陽光や風力発電で作った電気を需要の大きい地域に送電できず、太陽光・風力を連系できる量が制限されてしまっています。

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藤木: 蓄電池の普及は電気自動車のバッテリーがきっかけになるという話がありましたが、他に電気を貯める仕組みで有力なものはありますか?例えば、自然エネルギーを使って水を電気分解して水素の形にするというような技術の提案もされています。

矢部:「変換効率」という問題があります。揚水式発電は水をくみ上げてまた下に流すことで、エネルギーの3割くらいがロスになってしまうと言われています。電池の場合はエネルギー効率が80~90%と、効率が非常に良いんです。水素のオススメの使い方は、太陽光や風力発電でつくった電力で水素を作って貯蔵し、これを燃料電池自動車で使うという方法です。燃料電池は発電効率が良いですが、経済的なものは30~40%、さらに電気分解の時の効率もありますから、だいたい20~30%くらいしかエネルギーが残りません。一度電気分解して水素をつくって、その水素でまた電気をつくろうとすると、エネルギーを7割以上ロスしちゃうんですね。蓄電池だったら10~20%のロスで済むので、有効です。



森: 今年度最初のエコ×エネ・カフェのテーマは水素だったのですが、冗談で「蓄電池があれば水素はいらないじゃないですか」と言ったら「そうですね」と言われてしまいましたね(笑)。そこは反論して欲しかったですが、電力の分野でもいろんな多様性が必要だという話になりました。矢部さんも蓄電池の研究者ですが、蓄電池に懐疑的な部分もお持ちなのではという印象を受けますが。

矢部: 私はただ、安くなって欲しいなと思っているだけです(笑)。

森: やはり価格がこれからの課題ですね。

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第24回エコ×エネ・カフェの前編はゲストの矢部さんから『バッテリーで変わる電気の使い方』について触れていきました。次回後編は『参加者のバッテリー/蓄電技術に対する考えはどう変わったのか?』全員参加のワールドカフェの様子をレポートしていきますのでご期待ください。

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