バッテリーで変わる電気の使い方～再エネ拡大から暮らしの変化まで～
― 第24回エコ×エネ・カフェ（前編）

　
• 1ページ目：ゲスト紹介


• 2ページ目：電力(kW)と電力量(kWh)の違いとは


• 3ページ目：再生可能エネルギー拡大のための蓄電池


• 4ページ目：住宅用蓄電池で暮らしはどう変わる？


• 5ページ目：蓄電池は今後どうなる？

電力(kW)と電力量(kWh)との違いとは？

森：　本題に入る前に、電力kW（キロワット）と電力量kWh（キロワットアワー）の違いを理解することが重要ということでしたね。

矢部：　新聞の記事でも、このふたつを間違えていることがあるんですね。kWもkWhも「W」が大文字なのは、”人の名前は大文字にする”という決まりがあるからです（ワットという単位は発明家のワットに由来）。電力の単位はkW、「力」という字が付いていますから力の大きさです。電力量の単位はkWhで、1kWを1時間使ったときのエネルギーを表します。例えば、太陽光発電が何百万kW増えましたというときに、「原子力発電所何基分です」と表現されることがあるのですが、エネルギーという意味でいうと太陽光は，夜などには発電できないのだから、同じ100万kWでもkWhは少ないということになりますよね。例えば40 アンペア契約のお家は4kWまで使えます。値段でいうと1kWhが30円くらい。エネルギー量が1kWhというのは相当な量なので、30円で買えるのは安いんです。

森：　平均的な家が1日で使う電力量は10kWhなんですね。

矢部：　電子レンジを使ったりする時は瞬間的に電力は大きくなりますが、電力量で言うと、冷蔵庫やエアコンが一番使うんですね。それを1ヶ月で均すと、１日10kWhくらいになります。

森：　水道に例えると、電力は水の勢い、電力量は水が貯まった量ということですね。

矢部：　そうです。そして電池の場合は「何kWhか」、つまりどれだけ貯められるかが勝負になってくるんです。

森：　 強さじゃなくて、kWhの方が重要なんですね。

矢部：　電気自動車はパワーが必要なので電気自動車用の電池は大きい力を出すことも求められますが、住宅で使ったり電力系統に置く電池はkWhが大事なんです。

電気は貯められる？

森：　「電気は貯められない」とよく言われますよね。

矢部：　いえ、他のエネルギーの形に変えることで貯められるといえば貯められます。一番多く貯められるのはダムで、水をくみ上げて、それを落とす、揚水式の発電ですね。もうひとつは、動いているものには運動エネルギーがあるのでそういうものにして貯めこむ。例えばフライホイールです。沖縄などにもあるのですが、大きな筒をモーターで高速回転させておいて、電気が必要なときに発電する。電気で回してそれがまた電気を生み出すというものです。今日お話しするバッテリー（蓄電池）は、電気を化学物質に変えるというものです。

森：　今ある蓄電池の種類を教えてください。

矢部：　最近はスマホにも入っているリチウムイオン電池があっという間に普及しました。それ以外に、昔から車によく載っていた鉛電池があります。リチウムイオン電池は日本で発明されたもので、小さい容積に電気を多く貯められるのですごく売れています。

森：　リチウムイオン電池はショートすると発火すると言われていますね。

矢部：　反応性が高いので、例えば釘を打つなどして強い刺激が与えられた場合や、内部に不純物があったような場合には発火します。今、一部のメーカーのパソコンは飛行機の中に持ち込めないですね。。確かに危険な要素はありますが、電気自動車もどんどん普及しているくらいですから…。自動車をつくっている人に言わせれば、自動車事故があった時は、引火性のあるガソリンの方が、電気自動車よりも危ないという人もいます。

森：　ナトリウム硫黄（NAS）電池とはどういうものでしょうか。

矢部：　一番エネルギー密度が高い電池で、小さい容積の中に電気をたくさん貯められます。難点は、ナトリウムは固体なので300℃ぐらいに温めておかなくては動かないんです。持ち運びできず、断熱性の高い箱に入れて温めてから使います。レドックスフロー電池は、バナジウムという液体の化学反応を利用して充放電を行います。

森：　この他にもいろいろな研究があるのですか？

矢部：　はい。ちなみに電気の分野では「安くたくさん電気を貯める」ことが100年以上前からの課題です。実はガソリン自動車よりも電気自動車が先にできていましたが、電気を貯める技術の問題で普及しませんでした。現在も多くの研究が進んでいます。スマホ用のリチウムイオン電池はここ数年で圧倒的に安くなってきましたね。電気自動車はまだこれから少しずつという感じですが、テスラという会社が、3万5000ドルで、1回の充電で345キロ走る電気自動車電気自動車を発売するというので、普及が加速するかもしれません。普通のハイブリッド自動車にも、最近はリチウムイオン電池が使われるようになりました。

色々なバッテリーがあるけれど

森：　乾電池の容量はとても小さいのですね。

矢部：　はい。スマホ用電池の方がずっと容量が大きいです。自動車用の鉛電池はさらに一桁大きくなります。

森：　乾電池と蓄電池は構造が根本的に違うのですか？

矢部：　使っている物質が違います。ですから乾電池に充電しようとすると中にガスが発生して危険です。

森：　J-POWERの揚水発電所は貯められる電気量が800万kWhと桁違いに大きいですね。リーフの電池30万台分が1つの揚水発電所で貯まるのはすごいですね。

矢部：　揚水発電はたくさん貯められるのですが、広い場所が必要なので、最近は他の方法で電気を貯められないか研究が進んでいます。