海と山の間に広がる尾道のまち。心惹かれる懐かしい風景には、何度訪れても飽きない魅力があります。
初めての尾道なら、ロープウェイに乗っての千光寺や、レトロな商店街で尾道ラーメンなどがおすすめですが、今回は“再来の尾道”をテーマに、まずは尾道駅から少し離れた浄土寺へ。
お寺でのお守り作り、古民家カフェランチ、海を見ながらのお茶時間、ときどき出会う猫たち……尾道の坂道を行ったり来たり迷いながら、のんびり散策してみませんか。
尾道の山の中腹には、民家とともにお寺や神社がたくさん点在しています。そのなかのひとつ「浄土寺」は、1400年以上前に聖徳太子がつくり、足利尊氏が戦勝祈願をして室町幕府を開いたという由緒ある古刹です。
所蔵している国宝や重要文化財も見応えがありますが、「しあわせ守り」といわれるお守りを作る体験もおすすめ。好きな絵柄のお守り袋や組紐を選んで、庭園を望む客殿で制作できます。
「浄土寺」へは尾道駅から歩くと30分近くかかるので、バス利用が便利です。駅前からおのみちバスに乗って、約5分の浄土寺下バス停で下車。山陽本線の線路をくぐって、急な階段を上った先に山門がそびえています。山門の前で振り返ると、瀬戸内海やその向こうに浮かぶ向島(むかいしま)、島につながる尾道大橋などが見晴らせます。
「浄土寺」の次はランチのお店へ。山門を出たら、来る時に上ってきた階段は下りずに尾道駅方面に向かいます。しばらく線路と並行な高台の道なので、景色を楽しみながらの散策です。
10分ほど歩くと、住宅街の路地裏にあるお目当ての「水尾之路(みおのみち)」に着きます。地元の名士の家だったという日本家屋をリノベーションしたカフェで、1日1組限定の宿でもあります。アンティークとデザイナーズのインテリアが絶妙に調和した心地よい空間です。
ランチには瀬戸内レモンの酸味が効いた「カルボナーラパスタ レモン風味」をぜひ。手づくりのスイーツもあるのでティータイム利用にも◎なお店です。
ランチでおなかが満たされた後は坂道さんぽへ。「れんが坂」は西國寺と大山寺(たいさんじ)を結ぶ坂道。「れんが」の由来は“煉瓦”ではなく“蓮華”だという説があります。“蓮華”はハスやスイレンを指すので、お寺が多いため付いた名前なのでしょうか。
「天寧寺坂」は天寧寺の本堂と三重塔の間をぐるっとL字形に通る階段坂で、ロープウェイ乗り場や艮(うしとら)神社、猫の細道といった有名な観光スポットの近くです。「天寧寺坂」を抜けた先の「千光寺通り」も階段状の坂。坂の途中で振り向くと三重塔越しの尾道らしい風景が見晴らせます。
それにつながる「千光寺新道」は国道に向かって下り坂になっていて、両サイドに瓦屋根の家屋が並び、撮影スポットとしてもぴったり。あちらこちらで見かける猫たちも、ぜひ坂道と一緒に写真に収めたいですね。
「千光寺通り」を一番上まで上って、千光寺の本堂と反対に「観音坂」を進むと、「鼓岩(つづみいわ)」という大きな岩があります。岩を叩くと中が空洞のようなポンポンという音が聞こえるため、別名「ポンポン岩」とも呼ばれる絶景ポイント。「鼓岩」の上に座ると、尾道のまちや瀬戸内海をさえぎるものなく一望できる最高の時間が過ごせます。
さんぽを楽しんだ後は、坂道沿いに立つ「茶立玄 山手(ティースタンドゲンヤマテ)」のお茶で休憩しましょう。「茶立玄 山手」は世羅(せら)高原に茶畑と茶工場をもつ「TEA FACTORY GEN(ティーファクトリーゲン)」の直営店で、広島在来茶がいただけます。
特におすすめなのは、しまなみ海道の生口島(いくちじま)で浜風に当てて天日干しをした「広島在来浜茶」。瀬戸内海の塩っぽさをかすかに感じるテイストです。
1階は板の間のソファ席、2階は和室の畳敷きの席になっていて、どちらのフロアも瀬戸内海に面して大きく窓が取られています。もとは書道教室をしていたという古民家で、尾道ならではのお茶と景色に癒やされて、ゆったりとしたお茶時間が過ごせます。
尾道は、今回ご紹介したほかにも、ひとり旅にもぴったりのスポットが盛りだくさん。気軽にふらっとおでかけしてみませんか。