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「市民活動」 詳細解説

読み:
しみんかつどう
英名:
Citizen's Activity

近年、市民が自発的・主体的に、非営利で公益的に取り組む市民活動が活発になっている。行政や企業だけでは対処しきれない問題や、事業に取り組む市民の力に期待が集まっている。市民活動と同じような意味で使われる語にボランティア活動があるが、こちらは、無償性(労働の対価を求めないこと)を強調した言葉である。また、市民活動の中で、とくに市民が行政手続や事業における合意形成などの過程に参加することを、市民参加(住民参加)と呼ぶ。

市民活動を継続的かつ組織的に行うため、市民が民間非営利組織(NPO:Non-Profit Organization)や非政府組織(NGO:Non-Governmental Organization)と呼ばれる団体を組織して活動する場合もある。その活動内容や規模はさまざまだ。たとえば、海外における災害や紛争の被災地での支援活動、外国から来て日本に住む人々との交流による相互理解の取り組み、買い物補助など地域に暮らすお年よりのサポート、点訳や音訳、不登校児童のサポート、都心部に残る緑地を利用しての自然観察や維持管理活動、消費者問題への取り組みなどだ。活動形態も、地域に密着した事業を行うものや、人権擁護や政策提言など「アドボカシー」に力を入れるものなどいろいろある。

市民活動やNGO/NPOに関連して、活動の無償性が議論されることがある。市民活動はそれ自体無償性が強いが、ボランティア活動を継続して行うため、NGO/NPOなどの団体を立ち上げた場合に、スタッフを雇用して給与を支払っても問題はない。ただし、NPOは存在そのものが非営利を目的とするため、事業や活動を通して得た収入を、構成員に利益として分配することはできず、事業の原資として充当することとなる。NGO/NPO性の所以である。また、ボランティアでも、活動に伴って発生する交通費や食費などを、常識の範囲内で受け取ることは問題ないとされる。一方、市民活動においては「終わりよければすべてよし」ではなく、活動の理念や過程が重要だ。最近は対価でなく買い物に利用できるポイントなどが付与される場合があり、普及の手段として注目されるが、ボランティアはあくまで無償性や自発性、利他性に基づく取り組み。見返りを求めた瞬間にボランティアの価値は失われるので、運営する側、活動する側の両者が、ボランティアの本旨から外れないように注意すべきであろう。

政府は市民活動を促進するため、簡易な手続きで法人格を得ることなどを目的とした特定非営利活動促進法(NPO法)を1998年に施行した。同法は、法人格を持たない任意団体として活動する場合に生じていたさまざまな不都合(銀行などの口座開設や事務所の賃貸借契約が団体名で行いにくい、行政や企業などの委託事業を受託しにくいなど)を解消し、ボランティア活動をはじめとする市民の活動を発展・促進させることで、公益の増進につながることを目的としている。その成立には、阪神・淡路大震災におけるボランティアなど市民の活動が影響した。創設以来、法人数は継続的に増加、2007年12月末時点では3万3000団体を超えるなど、社会に着実に定着してきている。その一方、営利目的と見られる活動や詐欺などの違法行為を行う法人が見られるなどの事例も現れており、2003年には、特定非営利活動の範囲拡大や、暴力団排除の強化などを含む法律改正が行われた。

また、地方自治体では、市民活動が「新しい公共」の担い手として、今後の地域活性化などに重要な役割を果たすとの考えから、市民活動促進に関する指針や条例を策定し、市民活動をサポートするセンターの設置や活動資金の助成など、市民活動へのさまざまな支援を行っているところは多い。市民自身の手により、市民活動を運営面で支援したり、必要な情報を提供したりする取り組みも各地で行われている。全国にあるNPOセンターなど支援機関・施設の運営形態は、1) 公設公営、2) 公設民営、3) 民設民営、4) その他、のどれかだ。

一方、市民活動を行うNGO/NPOなどの多くが、財政難や人材不足などの問題を抱えている。資金源の大半を民間や行政の助成金が占める団体が多い。今後、日本で市民活動が拡大するためには、市民意識の向上や、それに伴う参加やとともに、組織運営や人材育成などのマネジメント面での強化や支援が必要だ。NGO/NPOに企業的な要素が求められる一方で、ビジネスの分野で、CSR(企業の社会的責任)や、事業を通して社会貢献や社会変革をめざす社会企業家などが登場し、市民活動との近接領域が増えつつある。

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