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「景観法」 詳細解説

読み:
けいかんほう
英名:
Landscape Act

景観とは、もともと地理学などの分野で、地形や植物相などの観点から整理した風景のことを呼ぶ用語だった。その後、すばらしい風景や景色、眺めなどを指す言葉として用いられるようになった。四方を海に囲まれ、山脈や高山、川や湖沼が多く、四季の変化がある日本は、その独特の自然環境が生んだ美しい自然景観に恵まれている。また、歴史と文化の中で育まれてきた都市や建築物などの文化的景観や、農山漁村など里地里山の景観も大切な歴史・文化資産だ。

しかし、開発や都市化、地域における過疎化などに伴い、日本の美しい景観は日々失われつつある。そこで、わが国の都市や農山漁村における良好な景観の形成を促すために、2004年に日本初の景観に関する総合的な法律である「景観法」が公布された。都市だけでなく農山漁村や自然公園なども対象とした点が大きな特長だ。景観法の制定にあわせて、旧・都市緑地保全法が現在の都市緑地法に改正された。また、都市計画法などの関係法が改正された。これらを合わせて「景観緑三法」と呼び、2005年に全面施行された。

日本にはそれまで、景観そのものを整備したり保全したりすることを目的とする制度はなく、地方自治体が独自に条例を定めて景観・美観地区の保全や、屋外広告物の規制などを行っていた。景観法の制定により、景観保全の基本理念や国・自治体・事業者・住民の責務が明らかになり、自治体による取り組みを国が後押しできるようになった。景観法は、良好な景観の形成に関する施策を、自治体が地域の実情に応じて選べる柔軟な制度になっている。景観づくりの担い手である景観行政団体は景観法に基づく事務の多くを実施し、すべての都道府県と政令指定都市、中核市が対象となる。他の市町村でも、都道府県知事と協議して公示すれば景観行政団体になることができる。

景観行政団体は、景観計画で定める「景観計画区域」において、建築物の建築などにあたって制限すべき形態や色彩、材質などデザイン面での基準を定めたり、高さや壁の位置などに関する規制を行ったりする。大規模な建築物の建築や開発行為などを行う際には届出が必要だ。また、景観上重要な建築物や樹木の指定も行う。全国における景観行政団体の数は、2013年5月の時点で598団体に上る。一方、積極的な景観形成を図る地区を、市町村が都市計画法にもとづく「景観地区」として決定することもできる。

このほかに、住民の積極的な参加を図るための景観協議会の組織や、土地所有者などとの景観協定の締結、景観整備機構へのNPO法人などの指定などについての規定がある。景観行政団体の長による命令に違反したり、必要な届出を行わなかったりした者に対する罰則もある。景観法の施行にあわせて、毎年6月1日が「景観の日」となった。一方、文化財保護法は、地域住民の生活や産業と深く結びついて形成されてきた景観地を「文化的景観」と位置づけている。

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