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「遺伝資源」 詳細解説

読み:
いでんしげん
英名:
Genetic Resource

1993年に発効した「生物の多様性に関する条約(生物多様性条約、略称:CBD)」は、生物多様性を守るとともに、生物資源を持続的に利用していくための国際的な枠組みで、次の3つを目的としている。1) 生物多様性の保全、2) 生物資源の持続可能な利用、3) 遺伝資源(遺伝子資源ともいう)の利用から生じる利益の公正かつ公平な配分(略称:ABS)。このうち、人間にとって役に立つ遺伝子を資源として位置付ける「遺伝資源」には、1) 植物遺伝資源、2) 微生物遺伝資源、3) 動物遺伝資源―などがあり、医薬品の開発をはじめとするバイオテクノロジーやバイオ産業が発展していく上で、なくてはならない重要な資源だ。

同条約は、遺伝資源について各国が主権的な権利をもつことを認め、遺伝資源を提供する国と利用する国の双方が利益を得られる方法により利用することを求めている。また、研究などで生じた利益を提供国へ公正に配分すべきであるとしている。こうした規定ができた背景には、遺伝資源がいわゆる開発途上国に多くあるという事実に加えて、主な利用者である先進国が十分な代償なしで遺伝資源を途上国からもち出してきたと多くの途上国が主張しているためだ。途上国はまた、遺伝資源の利用に関する「原住民の知識」と「地域社会の知識」を保護することや、知的所有権化などの国際的な制度の創設を強く主張している。

遺伝資源の利用と知的所有権に関する課題を解決することが、生物多様性条約締約国会議(COP)における最大の議題のひとつとなっている。2002年に「対話から行動へ」をテーマにオランダのハーグで開催されたCOP6では、遺伝資源の利用とそこから生じる利益配分に関する「ボン・ガイドライン」が策定された。各国による国内法の策定や遺伝資源の利用に関する契約作成時の基準となる指針だが、あくまで任意で法的拘束力はない。このためインドやブラジルなどの遺伝資源の主要提供国は、遺伝資源の不正利用を防ぐとともに、その利用から生じる利益が提供国へ適正に配分されるように、法的拘束力のある国際的な枠組みの策定を求めている。

これに対して、日本やカナダをはじめとする先進国側はその後の議論の場で「ガイドラインで十分」という姿勢を崩さず、話し合いは2010年に名古屋市で開催されるCOP10にもちこされることとなった。この点について、わが国が法的拘束力のある枠組みの策定に消極的だった背景には、生物多様性条約にいまだ参加していない米国への配慮があるという見方もある。ガイドラインにとどめることで米国の参加を促そうというのだ。しかし、COP10で日本は議長国をつとめるだけに、法的拘束力をもつ制度の実現に向けたリーダーシップが求められる。

一方、国内の企業などが海外の遺伝資源を利用する場合には、同条約の原則に則って行動することが必要だ。経済産業省と(財)バイオインダストリー協会(JBA)は、海外の遺伝資源を利用する際の留意点や注意点などを「遺伝資源へのアクセス手引」としてまとめている。

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