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「棚田」 詳細解説

読み:
たなだ
英名:
Terraced Paddy Field

棚田は、山腹の傾斜地などに、棚や階段のような形状に作られた水田だ。棚田が日本で最初に作られた時期については、詳しいことはわかっていない。6世紀半ばから7世紀前半の古墳時代には傾斜地に田んぼが作られていたらしいが、考古学的にそれを実証する遺跡などは出土しておらず、これからの研究対象となっている。

「棚田」という言葉が文書の上で最初に現われるのは室町時代の「高野山文書」で、「今ハ山田ニテ棚ニ似タル故ニ、タナ田ト云」(山の中の傾斜地に作られた田んぼを「山田」といっていたが、棚に形状が似ているので「棚田」という)と記述されている。このように棚田とは、一般的に、傾斜地に作られた棚状の小区画の水田のことをいい、地域によっては「千枚田」あるいは「谷津田」とも呼ばれる。

棚田は米の生産だけでなく、自然や人間にとって多くの役割を果たしてくれるものだった。山に降った雨を一時的にストックして、それを地下にしみ込ませてゆっくり放流し、下流域で再使用できる「水資源涵養機能」や「洪水調整機能」を持っている。そのため、「小さなダム」ともいわれる。

さらに、最近注目されているのが「生態系保全機能」である。日本では近年、コンクリート三面張りの河川工事やゴルフ場や宅地造成などの開発に伴って里山が荒廃し、生態系が破壊されてきた。多くの田んぼも、効率化を進めるために圃場整備(改修工事)が行われ、用水路をコンクリートで固めるなどしたため、カエルなどの生き物が田んぼと周囲の水環境を行き来できなくなってしまった。一方、棚田は、里山に接した湿地帯に作られることが多く、機械化が困難なことから、昔ながらの畦や土で作った用水路が残り、生き物が自由に田んぼと沼や川などの周囲の水環境を往来できる。したがって棚田周辺では、今でもトンボやゲンゴロウ、カエルなどの昆虫、水生動物、両生類など多様な動物や、スミレなどのさまざまな野草を見ることができる。このように棚田は、生態系を保全する上でも重要な役割を果たしているといえる。

しかし、その棚田も農作業に従事する人の高齢化や、機械化が困難なこと、耕作にたいへんな労力が必要であることなどから、米の生産調整の実施と同時に転作や減反の対象となり、数多くの棚田が放棄され荒廃化した。このため全国各地で棚田を守る運動が活発になり、全国棚田協議会や棚田学会、NGO/NPOが組織されるようになった。このような動きを受け、農林水産省は1999年、棚田の保全活動推進の一環として、全国の代表的な棚田を「日本の棚田百選」として認定した。棚田の持つ環境保全効果や農村文化の継承などを評価し、守っていくことが目的だ。

そうした活動のかいもあって、棚田米のおいしさを多くの人が知るようになり、都市生活者を中心に棚田米を食べたり、棚田での農業体験を楽しんだりする人が増えている。また、棚田は近代化以前の日本の農山村の風景を保っていることもあり、日本人の「ふるさと風景」として人気が高く、アマチュアカメラマンの絶好の被写体ともなっている。美しい棚田を撮影した写真集も多く出版されている。

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