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「幸福度」 詳細解説

読み:
こうふくど
英名:
Happiness

国力や社会の質を総合的に評価する場合に、従来は生産や所得など経済面が重視されてきた。日本では景気を測る指標として、かつてはGNP(国民総生産)が用いられていた。現在は1年分の生産物やサービスの金額を合計したGDP(国内総生産)や、GDPに海外からの第1次所得の純受取を加えたGNI(国民総所得)などが主な目安とされている。しかし、社会が成熟して価値観が多様化するにつれて、経済的な豊かさだけが幸福なのではなく、心の豊かさも欠かせないという考え方が主流になりつつある。

このように、市民一人ひとりの幸福を所得などの経済的要素に限ることなく、家族や社会との関わり合いなどの要素も含めて評価する見方のことを幸福度と呼び、それを「見える化」する指標を幸福度指標という。こうした考え方は国際的には1970年代から一部で主張され、世界銀行がレポートを発行するなど識者の間では持続可能性に関する要素として注目されてきた。2007年6月にトルコで行われたOECD(経済協力開発機構)の世界フォーラムでは、あらゆるコミュニティが21世紀における「進歩」の意味を自問することを奨励するイスタンブール宣言が公表された。

その後、フランス政府が設立したスティグリッツ委員会による報告が、経済指標としてのGDPの限界を示唆するとともに、幸福度や持続可能性に関する指標の開発を提言。G20やG8などのサミットでも主要議題となり、幸福の度合いを計測する指標づくりが急務とされた。国際的な研究成果とあいまって、近年、政治においても幸福度を重視する動きが強まっている。ブータン王国は、国民1人あたりの所得は低いにもかかわらず、2005年の国勢調査では約97%の人が幸福であると回答した。これは、1970年代に当時の国王が国民総幸福量(GNH)の考え方を提唱し、GNPより重要であるとして国家運営の主軸に据えたことが影響している。

ブータンに始まったGNHの考え方は、今では国連などの国際機関が進める幸福に関する指標づくりの主流と目されている。日本でも、主観的な生活の評価や幸福感を中心とする「主観的幸福感」の観点から、さまざまな現象が解明されつつある。内閣府による調査研究によると、所得が上昇したからといって人々が幸福と感じるわけではなく、失業は所得の減少以上に個人に大きな悪影響をもたらす。また、労働者が雇用主による経営を信頼していることが、生活全般の幸福の度合いに影響する。さらに、加齢とともに幸福を感じる人が少なくなる傾向がみられるという

国内外のこうした動向を受けて、政府は2010年6月に閣議決定した「新成長戦略」の中で、幸福度について、所得などの経済的要素だけではなく、家族や社会との関わり合いなどの要素も含めたものと定義した。一方、2011年3月に発生した東日本大震災が、日本国民の幸福に対する価値観や人生観を大きく変えたという指摘もある。幸福度とその指標づくりに関する研究の進展は、持続可能な社会を実現していくために重要な課題だ。

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