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「カネミ油症救済法」 詳細解説

読み:
かねみゆしょうきゅうさいほう
英名:
Act on Promotion of Kanemi Rice Oil Disease Relief

カネミ油症事件は、1968年に福岡県や長崎県など西日本一帯で発生した、ポリ塩化ビフェニル(PCB)などの化学物質による中毒症だ。手足のしびれなど深刻な健康被害が報告され、調査の結果、カネミ倉庫製のライスオイル(米ぬか油)の製造工程で使われたPCBとこれに由来するダイオキシン類が商品である油に混ざり、それを食べた人が被害を受けたことがわかった。その後、製造者責任が裁判で問われ一部で和解が成立したが、被害者の完全救済には至らず、国が仮払金の返還を求めるなど事態は悪化した。

その後、政権交代もあって被害者救済の議論は遅々として進まなかったが、2012年8月29日に「カネミ油症患者に関する施策の総合的な推進に関する法律」(カネミ油症救済法)がようやく成立し、施行された。本法は、PCBなどを食品経由で摂取したことで起きた健康被害や、油症患者が置かれている事情を踏まえて、患者の救済策に関する基本理念を定めるとともに、国などの責務を明らかにしている。基本理念では、油症患者が居住地域にかかわらず状態に応じた適切な医療を受けられるようにすべきであるとしている。また、生活の質の維持向上、診断技術の向上と成果の普及・活用・発展、患者の人権尊重などを基本としている。

基本理念にのっとり、国は患者に関する施策を総合的に策定して実施する。また、医療費の支払などに関する支援や、健康状態の把握、診断基準の見直し、調査研究の促進、医療提供体制の確保、情報収集提供体制の整備など、必要な施策を講じる。厚生労働大臣と農林水産大臣は、施策の推進に関する基本指針を策定する。関係する地方自治体は、地域特性に応じた施策を策定して実施する。原因事業者は、患者に対する医療費の支払いをはじめ、被害の回復を誠実に行うとともに、国と自治体が講じる施策に協力する。

本法の制定を受けて、厚生労働省は基本指針を策定する予定だ。案の段階では、原因事業者による医療費支払など被害の回復に関する支援について、将来にわたり医療費が確実に支払われるようにするとともに、必要に応じて原因事業者への指導を行う方針を示している。また、油症の調査・研究を推進するため、患者の健康実態調査を実施し、対象者に「健康調査支援金」を当面、毎年度支給する。

政府は、施行後3年をメドとして施策のあり方について検討を加え、その結果に基づき法律の見直しを行う。また、原因事業者の事業の継続が困難となることが明らかな場合にも検討が加えられ、見直しが行われることになっている。

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