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「建築物環境衛生管理技術者」 詳細解説

読み:
けんちくぶつかんきょうえいせいかんりぎじゅつしゃ
英名:
Building Sanitation Management Technician

「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」(建築物衛生法、またはビル衛生管理法)に基づき、特定建築物の所有者には、法で定める「建築物環境衛生管理基準」に基づき、空気環境の調整や給排水の管理、清掃及びねずみ等の防除などの項目を中心として特定建築物の維持管理を行うことが義務づけられている。このため、建築物環境衛生管理技術者(ビル管理技術者とも呼ばれる)を選任して維持管理業務を監督させなければならない。建築物衛生法で定める特定建築物は、興行場、百貨店、集会場、図書館、博物館、美術館、遊技場、店舗、事務所、学校、旅館など特定用途に用いられる建築物のうち、延べ面積が3,000平方メートル以上(学校の場合は8,000平方メートル以上)のもので、工場や病院など特殊な環境にあるものは除外されている。

建築物環境衛生管理技術者は、同法に基づく国家試験または講習会によって厚生労働大臣免状を交付された者であることが求められる。試験は毎年10月に行われ、試験科目は、1) 建築物衛生行政概論、2) 建築物の構造概論、3) 建築物の環境衛生、4) 空気環境の調整、5) 給水及び排水の管理、6) 清掃、7) ねずみ・昆虫等の防除などだ。講習会でも同様の科目が講義される。建築物環境衛生管理技術者の職務は、「特定建築物の維持管理が環境衛生上適正に行なわれるように監督する」ことで、環境衛生上の維持管理業務の全般を監督する。また、必要な場合、特定建築物の所有者や占有者などに対して意見を述べることができる。具体的には次のような職務がある。

1) ビル管理業務計画の立案:年間または長期に衛生的環境を確保するための総合計画及び個別計画や、空調・給排水設備等の整備、空気環境等の測定、水質検査の実施、清掃、ねずみなどの防除、設備・機器などの整備改修、技術者講習、研修会開催などの計画を立案する
2) ビル管理業務の指揮監督:ビル管理日誌などの帳簿書類の整備や、施設管理、清掃及びゴミ処理、ねずみ防除などの実施状況の監督、建築物の安全管理に関する確認、設備の点検、整備担当者に対する技術指導、営繕工事の発注及び工事監督などを行う
3) 管理基準に基づく測定、検査の実施及びその評価:空気環境等の測定、データの評価及び活用、換気量及び回数、外気導入量、居室利用形態等の点検、給水栓末端の残留塩素濃度測定、水質検査の実施、空調、給排水、ボイラーなど各種機器の整備及び能力の検証、照明、騒音など環境衛生上必要な調査の実施とその評価などを行う
4) 各種是正措置の実施と提案:帳簿書類の様式改正及び記載方法改善、居室利用形態や室内空気環境、飲料水水質の改善などの是正措置を実施する。また、設備・機器の老朽化や能力低下への対応策を検討し、改善案を作成、所有者などに意見を提案する

同法では、特定建築物所有者などに必要事項を記載した帳簿書類の備え付けを義務づけている。帳簿の種類には、1) 年間管理計画、2) 空調設備管理、3) 給水設備管理(飲料水、雑用水)、4) 排水設備管理、5) 清掃・廃棄物処理、6) ねずみ等の防除、7) その他(吹付けアスベストの管理計画など)がある。また、ビル管理業務は建築物衛生法で定める事業登録制度に基づき都道府県知事の登録を受けた次の業者などに委託することができる。1)建築物清掃業、 2) 建築物空気環境測定業、3) 建築物空気調和用ダクト清掃業、4) 建築物飲料水水質検査業、5) 建築物飲料水貯水槽清掃業、6) 建築物排水管清掃業、7) 建築物ねずみ昆虫等防除業、8) 建築物環境衛生総合管理業。

一方、冷却塔などの空気調和設備で増殖したレジオネラ菌などによる集団感染や結核、インフルエンザの集団感染が発生して社会問題化した。このため、2003年に建築物衛生法関連政省令改正が改正され、空気調和設備の維持管理基準にレジオネラ菌などの病原体による居室内の空気汚染防止措置を講ずることを追加した。同改正ではこのほかに次の規定が追加、創設された。1) シックハウス室内空気汚染)対策として建築物環境衛生管理基準値にホルムアルデヒド量を追加、2) 建築物環境衛生管理基準の適用対象となる飲料水の範囲を明確化、3) 雑用水にも水質規制の適用を拡大、4) ネズミ等の防除方法等を見直し、5)特定建築物に関する規模要件(10%除外規定)を撤廃。また、ビル管理業務は建築物衛生法で定める事業登録制度に基づき、都道府県知事の登録を受けた者に委託することができる。建築物衛生法に基づくビルの衛生管理業務と、技能検定であるビル設備管理技能士などが行う業務、その他の保安業務などはビルメンテナンス業と総称されることが多く、業界団体もある。

また、近年、吹付けアスベストの取り扱いが重要視されており、東京都は「吹付けアスベストに関する室内環境維持管理指導指針」を作成して適正管理を徹底している。このほか、都ではビルピット対策指導要綱に基づく排水設備の管理にも力を入れている。さらに、地球温暖化の防止など環境保全を目的として、事業者を中心として省エネルギーや環境管理の取り組みが進んでおり、ビルなどの建築物自体を環境に配慮した設計、構造にする動きがある。ライフサイクルやファシリティマネジメントを考慮したビル管理が求められる今、建築物環境衛生管理技術者の役割はますます重要なものとなっている。

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