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「脱原発」 詳細解説

読み:
だつげんぱつ
英名:
Nuclear Power Free

ウランなどの核燃料を原子炉で核分裂させて電気を起こす原子力発電は、火力発電水力発電に代わる発電方式として米国や日本をはじめとする世界各国で利用されてきた。国内には、2014年8月の時点で48基の商業用原子力発電所がある。原発は、発電過程で二酸化炭素(CO2)を出さないことから、国は地球温暖化対策としても推進してきた。しかし、放射性物質は取り扱いが難しく、ひとたび事故が発生すると取り返しのつかない事態になる。2011年3月11日に発生した東日本大震災と津波による東京電力福島第一原発の事故は、未曾有の原子力災害となった。

しかも、事故から3年以上経っても、原発における汚染水処理などの作業は収束のめどが立っていない。事故現場に近い地域の多くが立入禁止のままで、各地で除染作業が続いている。これに加えて、国内の原発は停止したままであるにもかかわらず、深刻な電力不足には陥っていない。こうした教訓と事実を踏まえて、原発のある社会を脱する「脱原発」を目指す動きが、再生可能エネルギーへの移行を求める市民だけではなく、地方自治体や企業の間に広がっている。1975年に設立された原子力資料情報室(CNIC)は、原子力に頼らない社会を目指す大きく10の理由があると主張している。

CNICによると、原発には放射能災害の危険性がある。また、処理できない大量の放射性廃棄物を発生させる。さらに、核拡散の危険性をはらんでいる。このほかに、事故がなくても労働者の被曝を伴う、原発だけでなく関連施設にも大きな危険や問題がある、地域の自立や平和を損なう、「原子力ムラ」と呼ばれる風土が形成され情報の隠ぺいやねつ造がつきまとう、省エネに逆行する、真の温暖化対策にはならない、大停電を起こしやすいなどの理由をあげている。

福島第一原発事故以降、脱原発の理念は福島などの被災地に限らず日本全国で多くの支持を得た。政府は、事故の早期収束を図るとともに、国内外で放射線による環境汚染や健康への影響が限定的またはほとんどないと繰り返してきた。しかし、この姿勢がかえって原子力に懐疑的な市民の反感を買い、脱原発運動が続く原因のひとつになっている。脱原発を求めるデモは東京の国会前だけでなく、原発再稼働の中止を求める運動とも相まって全国で行われている。

脱原発の動きは市民だけにとどまらない。地方自治体では、原発依存のエネルギー政策からの脱却を目指す「脱原発をめざす首長会議」が、2012年4月に発足した。2014年8月現在で、元職33名を含む全国39都道府県の100名が参加している。札幌市のように「まちづくり戦略ビジョン」の中で脱原発を打ち出した自治体や、北海道のように脱原発の視点に立って省エネや新エネを促進する条例を制定しているところもある。島根県でも脱原発条例案が県議会に提出されたが否決された。

一方、産業界では、2012年3月に「エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議」が設立された。2013年11月に一般社団法人化している。

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