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水川あさみ「プライベートがお芝居に反映される」30代後半で意識するようになった、人間力と経験値を上げる方法

  • 2023年11月8日
  • Walkerplus

近年は連続テレビ小説「ブギウギ」や「ブラッシュアップライフ」、映画「沈黙の艦隊」など幅広い作品で活躍中の水川あさみ。最新出演作となる映画「唄う六人の女」では、竹野内豊演じるフォトグラファーと、山田孝之演じる開発業者の二人の男が森に迷い込むきっかけを作るミステリアスな女性“刺す女”を演じている。異なる存在が“共生”したサスペンススリラーの本作の撮影秘話や、演じた役柄について、さらに俳優として変化したことなどを語ってもらった。

■ロケ地である京都の山奥や奈良の博物館など「自然の力を借りながらお芝居した感覚はあります」
――本作は、マネキンが主演の異色ドラマ「オー!マイキー」や山田孝之さんが一人三役を演じた映画「ミクローゼ」などを手がけた石橋義正監督の約10年ぶりの新作です。かなり早い段階から水川さんにオファーがあったそうですが、台本を読まれてみてどう思いましたか?

【水川あさみ】どうやって映像化するのかまったく想像がつかなかったのが最初に台本を読んだときの印象でした。でも、だからこそ可能性を秘めた作品なのかもしれないと思いましたね。石橋監督の作品は過激な要素があるというか、すごく独特な世界観のものが多いので、果たして「唄う六人の女」はどういう映画になるんだろうとワクワクしましたし、この物語に身を委ねてみたいと思ったので、お引き受けしました。

――監督からは役に関して何かリクエストはありましたか?

【水川あさみ】「表情は作らないでください」という言葉と、“刺す女の存在の仕方”に対するリクエストはありましたが、作品に関する細かい説明や「こういうお芝居をしてほしい」といったお話は一切されませんでした。

もちろん、わからないことがあれば監督に相談することもできたと思うのですが、“刺す女”は異界のような場所に生息していて言葉も発しないので、すべてを理解する必要はないと、そんな風に感じたんです。なので、自分が台本から感じたことを大事にしながら“存在の仕方”を意識して演じていました。

――人里離れた森のシーンは京都府南丹市の山奥で撮影され、刺す女が住んでいるかやぶき屋根の家は奈良の博物館で撮影されたそうですね。

【水川あさみ】ロケ地となった自然の力を借りながらお芝居した感覚はあります。もしも同じシーンを都内のマンションの一室で撮っていたら、刺す女の不思議なニュアンスは出せなかったかもしれないなと。森のシーンも同じで、なんていうか…場所自体が呼吸をしているところで演じるのと、人工的な場所で演じるのとでは心の持ちようやエネルギーが違ってくる気がするんです。

本作は自然な場所が大きな意味を持っているので、撮影環境からいろいろなものを抽出して、それを役のエッセンスに取り込みながら演じていましたね。

――六人の女たちの衣装とメイクがそれぞれ個性的で、とっても素敵でした。

【水川あさみ】六人の女たちの衣装は全部オーダーメイドだそうです。メイクに関しては、みんな色の違うコンタクトレンズを入れているのですが、その効果もあって不思議な存在感を放っていますよね。刺す女の髪型は、監督が長さや形にかなりこだわってらっしゃって、地毛にエクステをつけたあと、監督のイメージどおりに形を整えていきました。

■若い頃から友人として付き合いのある山田孝之と「久々にがっつりお芝居ができてうれしかった」
――一切セリフのないお芝居に挑戦されてみていかがでしたか?

【水川あさみ】すごくおもしろかったです。いつもは“この人はどういう感情でこの言葉を言うのか”“このシーンはどんな捉え方をしているのか”といった役の心情を探りながら演じているのですが、今回は観た人が自由に感じ取れるような余白を残しておきたいという監督の思いがあったので、あまり余計なことをしてはいけないと思ったんです。

なので最初だけ自分が考えてきたお芝居をしてみて、そこから首の傾け方や目線、仕草や行動など、監督が提示していくことに合わせていく感じでした。

――竹野内豊さんとは映画「大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇」で共演されていますが、今回久々にご一緒してみていかがでしたか?

【水川あさみ】前回の共演から今までの間でお互いに変化したことなどは話しましたけれど、作品についてはほとんど話さなかったです。竹野内さん演じる萱島にとって、森にいる女たちはとても不可思議な存在なので、役やシーンについて共通認識を持つ必要がなかったというか、あまり明確にしない方がお芝居しやすいと思ったんですよね。

ただ、萱島を棒のようなもので刺したり突いたりするシーンがあったので、その時は「痛くないですか?」と確認することはありました(笑)。

――刺す女は何を考えているのかわからないキャラクターですが、萱島の持っていたチョコレートを食べるシーンは意外性があっておもしろかったです。

【水川あさみ】ああいう場面に石橋監督のユニークさが表れていますよね。

――何気ないシーンですがすごく好きでした。森に迷い込んだ萱島は女たちに対して乱暴なことはしませんが、山田孝之さん演じる宇和島は乱暴な態度で女たちを次々と敵に回していきますよね。

【水川あさみ】そうなんですよね。孝之とは同い年で若い頃から友人なのですが、自分を追い込んで役と向き合っていくので、今回かなり大変そうだなと思いながら見ていました。というのも、たとえば誰かに殴られるシーンがあったら、彼は自分でその部分を殴ったりするので、追い込み方が半端じゃないんです。

そうやって宇和島を演じるための悪いエネルギーを高めながら役に挑んでいく。今回久々にがっつりお芝居ができてうれしかったです。

――女性キャストのみなさんとはどのようにコミュニケーションを取っていましたか?

【水川あさみ】“濡れる女”を演じたアオイヤマダさんと、“見つめる女”を演じた桃果さんとは一緒のシーンが多かったので、二人とは結構お話ししました。奈良での撮影期間中は炊飯器を持参してホテルの部屋に置いていたのですが、それをアオイちゃんに話したら、食べ物の話ですごく盛り上がったんです。

そのあと、彼女が普段お世話になっている料理の先生のところに一緒に行きませんかと誘ってくれて、それをきっかけにプライベートでも仲良くさせていただいています。

■30代後半になって私生活と俳優の仕事が「深く繋がっていることに気づいた」
――先日、主人公の母親役を演じられた映画「霧の淵」が釜山国際映画祭で上映されて、現地にも行かれていましたよね。2019年に釜山国際映画祭にお客として参加したことがあるのですが、韓国に住んでいる方々の映画に対する熱量の高さに驚きました。水川さんは釜山国際映画祭で刺激を受けた部分はありましたか?

【水川あさみ】街をあげての一大イベントという雰囲気に圧倒されました。「霧の淵」は小規模な日本映画にもかかわらず、多くのお客様が来てくださって、それがすごくうれしかったです。上映後のQ&Aでは、みなさん鋭い視点からの質問をたくさんしてくださって、こちらが話す言葉を熱心に聞き入ってくれました。その時の映画への熱量と関心の深さに感動しました。

あと、映画のチケットを何枚も持って会場を走り回ってはしごされている方がいて、その姿に“映画が文化として根付いているんだな”と感じました。それはすごく刺激になりましたし、同じような光景を日本でも観られるようになるにはどうすればいいのかを考えさせられましたね。

――今後、俳優として挑戦してみたいことを教えていただけますか。

【水川あさみ】“いい作品を作りたい”と思っている人が周りにたくさんいるので、そういう方々と一緒にお仕事をし続けられるような俳優でありたいなと思っています。

それから、孝之がプロデューサーとして映画を作っていることや、自分も監督として短編映画を撮った経験をとおして、俳優が作り手側に回ってゼロから作品作りを経験することも大事だなと思ったので、それを周りに伝えていくために何かできることがないか探していきたいです。

――10代の頃から俳優として長いキャリアを築いてこられた水川さんですが、ご自身で“変化したな”と感じた部分はありますか?

【水川あさみ】10代、20代の頃は、ひとつでも多くの作品に関わろうという意識でお仕事していたのですが、30代になってそういう気持ちが一旦落ち着いて、だんだん自分が本当にやりたいことや関わっていきたい人が明確になっていったんです。それは私にとって大きな変化だったと思います。

あと、もうひとつ変わったことがあって、昔は私生活が俳優のお仕事に影響するとはあまり思っていなかったのですが、30代後半になって、その二つは深く繋がっていることに気付いたんです。プライベートで起きた出来事って、お芝居にちゃんと反映されるんだなと実感するようになりました。

――その気付きを経て、どんなことを意識するようになりましたか?

【水川あさみ】人間力と経験値を上げるためにも日常生活を疎かにせず、日々を大事に過ごす意識を持つようになりました。それからあまり先のことは心配せず、“あの時こうすればよかった”と後悔もしすぎずに、今、目の前にある作品とどう関わるかということにしっかりと向き合うようになりましたね。

そう意識することで、お仕事にもいい影響が出ているように思います。もしも俳優の仕事を死ぬまで続けることができたら、人生を終える頃には「うん」というたった一言に説得力を持たせられるような俳優になっていたいので、そのためにも一つひとつの作品を大事にしていきたいですね。

取材・文=奥村百恵

◆スタイリスト:番場直美
◆ヘアメイク:岡野瑞恵

(C)2023「唄う六人の女」製作委員会

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