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ある日突然「虹の橋」を渡った兄。迷いながらも永遠の別れを描いた理由とは?「悲しさを漫画の力で前向きなものへ変えたい」【作者に聞く】

  • 2023年6月14日
  • Walkerplus

福島中央テレビの情報番組「ゴジてれ Chu!」で、毎週火曜日に放送されている人気ミニコーナー「にゃん旅鉄道」。「ねこが働く駅」として知られる福島県の会津鉄道・芦ノ牧温泉駅を舞台に、働くねこたちの様子を紹介している。約1分間の短いコーナーながらTVerでは、この4年間で総再生数170万回を突破し、なんと映画も公開された。


「にゃん旅鉄道~さくらの物語~」は、そんな「にゃん旅鉄道」をモチーフにした創作漫画。妹ねこの「さくら」を主人公に、働くねこたちの日常はもちろん、芦ノ牧温泉駅にやって来る人々との実話をもとにしたエピソードや四季折々の風景を、イラストレーターで漫画家のゆきよみさん(@yukiyomi333)が丁寧に描く。

今回は、空に浮かぶ雲を眺めて「さかにゃ」「エビフリャイ」とつぶやくうちに目を閉じるさくら。気が付くと芦ノ牧温泉駅で駅長を務めていた兄が案内する「お座トロらぶ列車」に乗っていて…?

作者のゆきよみさんに漫画の見どころやお気に入りのコマについて聞いてみた。

■「虹の橋」を渡った兄との別れを漫画にすることは、とても迷った
今回の漫画のテーマは、ある日突然「虹の橋」を渡った兄・らぶについて。ファンタジーを交えて描かれる永遠の別れに、漫画だからこそ表現できる優しさのようなものを感じた。「にゃん旅鉄道」を漫画にするうえで避けては通れないテーマだが、ゆきよみさんは描くこと自体とても迷ったという。

「らぶとの別れを描くことは、ずっと迷っていました。漫画なんだから、楽しいお話だけで良いのではないか?と。でも、らぶが旅立ってしまったことは事実でもあります。そしてそれは、応援している私たちにとっても、すごく悲しい別れでした。その悲しさを漫画の力で、前向きなものへ変えたい。みんなに希望を伝えたい。そして何より、らぶに感謝を伝えたい。そこで、らぶが大好きだった会津の町と共に別れを描けば喜んでくれるのでは?と思い、漫画にすることを決意しました」

別れ自体は心が引き裂かれそうなほど辛く悲しいことだが、寂しくなったときに空を見上げれば、らぶが描いた食べ物や鉄道の雲が浮かんでいる…というラストに希望を感じる。

ゆきよみさんがこの漫画に込めた思いを教えてくれた。

「らぶが虹の橋を渡ったことは、きっと残されたねこ弟妹にとっても受け入れ難いものだったと想像します。今、芦ノ牧温泉駅では、らぶの妹ねこ・さくらが駅業務に奮闘中です。一人で一生懸命働くさくら、本当にすごいなって思いますし、そんな姿に励まされています。この漫画を描きながら私にはいつも、『さくら』を応援する気持ちがあって。だから別れは悲しいけど、大切なお兄ちゃんはいつもどこでも、ずっと見守ってくれているよと、さくらに伝わればいいなと思っています。そして、らぶのことが大好きだった人々も、芦ノ牧温泉駅の上に広がる大きな空を見上げれば、『らぶに会える』って思えたらという願いを込めました」

■鉄道会社の勤務経験も!ゆきよみさんが思う「鉄道の魅力」
らぶとの別れだけでなく、秋の会津の雄大な風景も本作の魅力のひとつ。「塔のへつり」と「観音沼森林公園」を漫画に登場させようと思ったきっかけは何だったのだろう。

「芦ノ牧温泉駅の小林駅長が、おすすめの紅葉スポットとして教えてくれたんです。地元の皆さんに愛される美しい景色ですので、丁寧に描けたらいいなと思い、試行錯誤しました。きっと今年の秋はらぶも、先輩のばすと一緒に会津の絶景を空の上から眺めるんじゃないかなと想像しています」

絶景だけでなく、秋の楽しみとして外せないグルメも漫画に多数登場している。「お座トロらぶ列車」では回転寿司ではなく回転会津料理がふるまわれ、食いしん坊のさくらは目を輝かす。パネルで注文した新米のおにぎりが、芦ノ牧温泉駅に展示保存されている「AT-301」で届くところも、ゆきよみさんのこだわりの一つだ。

実はねこや漫画だけでなく鉄道も大好きだという彼女に、鉄道の魅力を聞いてみた。

「鉄道の魅力…たくさんありますよ~!実は以前に鉄道会社で車両整備の仕事をしていたので、メカニカルな部分も大好きです。でもやはり、『日本の美しい風景に鉄道が走っている』という姿が一番好きですね。都会のごちゃごちゃした街を行く鉄道も、会津鉄道のように日本の原風景を行く鉄道も。私は残念ながら三半規管がすごく弱いので、見る専門ということもあるんですが…(笑)。鉄道は主に目で愛でています」

日本の原風景が残る会津で、多くの人から愛されて立派に駅長を務めたらぶ。そんな兄の姿を見て育ったさくらは、時折空を見上げながら、これからも駅を訪れるたくさんの客を見送るのだろう。さくらの成長と会津鉄道・芦ノ牧温泉駅の美しい風景を、これからも楽しみにしてほしい。


取材・文=石川知京

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