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無印良品が取り組む「移住体験計画」と「産直EC」とは

  • 2023年1月3日
  • Walkerplus

「サステナブル」「SDGs」といった言葉・概念が浸透するはるか以前から、サステナブルという視点で常に活動を行ってきた無印良品。「素材の選択」「工程の点検」「包装の簡略化」といった「3つのわけ」というコンセプトを大切に、生活者の「自由」に寄り添いこれまで多くの商品を提供してきた。2021年に無印良品が発表した中期経営計画では、第2創業として「人と自然とモノの望ましい関係と心豊かな人間社会」をテーマに、「感じ良い暮らしと社会」の実現を目指していくことが掲げられ、すでに多くの取り組みが実施されているが、その中の一つが「地方創生」に伴うもの。

象徴的なのが団地や空き家のリノベーションだが、空き家を活用した移住体験計画などを実施するほか、各地域の食材を販売するといったライブ感を感じる試みも実施している。本記事では、これら移住体験計画、産直ECについて無印良品の執行役員・長田英知さんに解説してもらった。

■無印良品が考える移住体験計画への思いとは?

冒頭でも触れた無印良品の「感じの良い暮らしと社会」について、特に地方創生にフォーカスした場合、どんなことを目指すべきかを長田さんに聞いた。

「それぞれの地域の方々と共同で、街づくりを行っていくこと。この活動を通して、その地域に根ざしたライフスタイルを訴求し、『都市部と地方の交流』の仕組みを作ることができればと考えています。そして、『都市部と地方の交流』によって、地方へ人やお金の流れを作っていくことが理想ですが、その際にまず必須なのは『地方へ人が出向いた際に滞在(居住)する場所』だと思います。そういった意味でも、無印良品が取り組んでいる『空き家リノベーション』物件を活用した移住体験計画は、注力していくべきことだと考えています」(長田さん)

こういった思いがある中、2022年9月にはアメリカのホームシェアリングプラットフォームであるAirbnbと提携し、無印良品がリノベーションした空き家は、1泊単位でも貸し出しすることが可能になった。これまで「地方移住」と聞くと、中長期的に生活拠点を移すようなイメージがあったが、1泊単位でも滞在できるようになったことで、移住がより身近なものになり、例えば昨今注目されるワーケーションといった働き方においても活用できる有意義なサービスと言って良いだろう。

また、各地方自治体との連携も積極的に行っており、直近では高知・四万十町と連携し、すでに移住体験住宅のリノベーションを無印良品が行うことが決まった。無印良品では「(団地や空き家)のリノベーション」と「移住体験」を両輪で走らせながら、地方創生にかける取り組みをさらに拡大させていきたいという。

■地方物産を扱う「諸国良品」を通しての地方創生

そもそも無印良品の「都市部と地方の交流」への取り組みは、これら「(団地や空き家)のリノベーション」と「移住体験」が最初というわけではない。2003年より始まった「FoundMUJI」は無印良品のオリジナル商品以外でも、永く活かされてきた日用品を世界中から探し出し、それを文化や生活の変化に合わせて少しだけ改良し、適正価格で販売する試みで、いわば地方創生における考え方のベースになる取り組みであった。この「Found MUJI」の「探し出す」というコンセプトをベースに、特に日本国内の各地方の物品を扱うべく2015年に立ち上がったのが「諸国良品」だ。各地域に根差したもの、地域を守る取り組み・課題解決を担う商品などを取り扱い、これまでに1700以上の商品を取り揃えている。

「47都道府県、全ての地域の商品を取り扱っていますが、主に果物・季節のものを中心としています。ただし、地方のものであれば、どんな商品でも扱うというわけではなく、無印良品ならではの選定基準があります。『その地域に根ざしたもの』『地域の環境や文化を守る取り組みの上で作られたもの』など、各地域ごとが持つストーリーや背景があるものに限って取り扱っています。また良い商品なのに販路がない、規格外や数量が十分ではないため市場に出せない等のハードルがある商品も取り扱っています。言わば、名地域に根ざした選りすぐりの商品を扱うのが『諸国良品』ということになりますが、この流通もまた前述の『地方にお金の流れを作っていく』ことに貢献できていると自負しています」(無印良品・担当者)

ちなみに、「諸国良品」における最近の人気商品は「梅のセット」だという。さまざまな種類の梅を取り扱うことで購買意欲を促進し、さらに梅酒用の瓶とセットで販売することで地方への還元はもちろん、顧客のニーズにも寄り添った形だ。

また、各地方の生産者の思いをくみとりながら、産地や商品に新しい価値を与えるべく「諸国良品」ならではのPRを行うのも特徴だ。その一例として挙げられるのが、長野県産ブドウの販売である。「クイーンルージュ(R)」という新しい品種のブドウのPR支援では、無印良品銀座店と連携してカクテル販売や店頭販売を行った。産直ECサイトのみならず、オフラインでの連携ができるのも全国に店舗展開をする無印良品ならではの強みである。

■今後の取り組みにはオフライン・オンライン双方の使い分けが大事

無印良品が実施する移住体験、産直ECといった事業は、地方と都市部との交流を活性化させる大きな共通点であることは言うまでもない。人の流れを都市から地方へ、物の流れを地方から都市へ……やり方こそ微妙に違えど、この2つは長田さんが最初に言った「地方へ人やお金の流れを作る」ことに大きく貢献する試みと言って良いだろう。最後に移住体験、産直ECなどを通した地方創生への取り組みに対し、今後にかける思いを長田さんに聞いた。

「これからの地方創生の取り組みには、オフラインとオンラインをうまく活用することが大事だと考えていますが、無印良品として、『どんなことができるか』『どう取り組んでいくか』ということは常にある課題だと思っています。こういった課題にその都度向き合い実践を重ねながら、地方創生の可能性をこれまで以上に高め、さらに活発な取り組みにしていきたいと思っています」(長田さん)

文:松田義人

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