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コーヒーで旅する日本/九州編|自分を偽ることなく、時には技量がないと受け止める。「TOMOMO COFFEE」が教えてくれる真摯であることの大切さ

  • 2022年9月26日
  • Walkerplus

全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも九州はトップクラスのロースターやバリスタが存在し、コーヒーカルチャーの進化が顕著だ。そんな九州で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

九州編の第44回は、福岡県久留米市にある「TOMOMO COFFEE」。北野町という久留米市街地から離れた田園地にあり、一帯はのどかなロケーション。そんな町で15年前から愛されるロースタリーカフェを営むのは、店主兼ロースターの深町朋子さん。とにかく人柄が良く、サバサバしていて、気持ちの良い人だ。深町さんだからこそ生み出せる、人間味にあふれるコーヒー。「いつまでも顔の見えるお店でありたい」と、人との繋がりを大切にする「TOMOMO COFFEE」。そこには、コミュニケーションの真ん中にコーヒーがあった。

Profile|深町朋子(ふかまち・ともこ)
1975(昭和50)年、福岡県久留米市生まれ。大学卒業後、一度は物流関係の仕事に就職。もともとコーヒー好きだったこと、さらに、このままずっと会社勤めすることに疑問を抱き、30歳を機に退職し、コーヒーの道へ。カフェなどに勤めるも、自身が思うような学びは得られず、東京のセミナーなどに参加しながら独学で勉強を始める。その中で出会った堀口珈琲のコーヒーに強く惹かれ、同店が運営する生豆の買い付けグループ、リーディングコーヒーファミリーへの加盟を熱望。そのグループに加盟するにあたり、店舗を持っている必要があったことから、2007(平成19)年に、「TOMOMO COFFEE」を開業。

■素材の良さをから、愛される店づくりを
「TOMOMO COFFEE」の店主、深町朋子さんは、愉快な人だ。開口一番、「素材は間違いなく良いですから、おいしくなかったら私の技量不足!」と深町さん。会社勤めを経て、自分がずっと関わっていきたいと思える仕事として、コーヒーを選んだ。福岡市内のロースタリーカフェで働くも、「あなたには、カフェの仕事は向いていない」と言われ、それなら独学で勉強するしかないと、深町さんいわく“コーヒー放浪”の2年間を過ごす。機会があれば、東京のコーヒーショップが主催するセミナーに参加し、名店といわれる店を行けるだけ訪ね歩いた。その中で出合ったのが、現在、生豆の仕入れに繋がっている堀口珈琲だ。

「いろいろなコーヒーショップを巡る中で、『長く愛される店になるためには、良い素材を使わないといけない』と強く思いました。当時の私は技術も知識もありません。それなら、まずは絶対の自信を持っておすすめできる良い素材を仕入れられるようになろうと考えました」と深町さん。その当時から堀口珈琲はリーディングコーヒーファミリーという生豆の買い付けグループを運営しており、そのグループに加盟したい旨を伝えた。ただ、グループに入るためには店舗を持っていないといけない。深町さんは躊躇することなく、故郷である久留米市北野町にロースタリーを作ることを決意する。

■生豆が教えてくれた、たくさんのこと
「TOMOMO COFFEE」が店を構えるのは、のどかな田園風景が広がる田舎町。もともと実家の田んぼだったという場所に建てた店で、決して集客に恵まれた立地ではない。ただ、店を開いたのが地元だったのが奏功した。「近所のおじいちゃん、おばあちゃんが、畑仕事の合間などに立ち寄ってくれて。少しずつコーヒーショップとして認知を広めました。素材は間違いなく良いですから、その素材が持っている魅力を、とにかく消さないように、焙煎、抽出について一生懸命勉強しました」と深町さん。

良い素材を仕入れて、そのポテンシャルを消さないことに努める。このシンプルな味作りが深町さんには向いていたと感じる。なぜなら、深町さんは師匠が明確にいるわけではなく、ほぼ独学でコーヒーのことを勉強してきた人。つまり、仕入れた素材が深町さんの師匠のような存在で、おそらくこれまでも生豆にいろいろなことを教えてもらってきたのではないだろうか。

それだけこだわった原料を仕入れているが、豆売り、店内で飲むコーヒー(喫茶珈琲)ともにできる限りリーズナブルな価格を一貫しているのも「TOMOMO COFFEE」の魅力だ。豆売りはブレンド100グラム550円〜、ストレート100グラム600円〜で、喫茶珈琲は1杯480円。しかも喫茶珈琲は通常のカフェで飲むコーヒーの1.5杯分はカップに注がれている印象。深町さんは「少量の豆で淹れると、どうしても味わいが安定しなくて。ですから、2杯分ぐらいをいつも淹れていて、カップに注ぐとなみなみになっちゃいます。これも私の技量不足!」とサバサバと笑う。きっと、こんな飾らない深町さんの人柄も、地元で愛されている理由だろう。

■コミュニケーションの真ん中にはいつもコーヒーがある
コーヒー豆は青空の珈琲、緑の風の珈琲、深緑の珈琲など、名前もステキなブレンドが4種、ストレートは東ティモール、コロンビア、エチオピア、ケニア、コスタリカ、インドネシアなど11の産地を取りそろえ、焙煎度合いが違うものを含めると全17種とバリエーション豊富。開業時から変わらず、直火式の焙煎機を使っていることもあり、焙煎度合いは中煎り以上で、メインは中深煎り、深煎りだ。ただ、深めに焙煎したコーヒーも生豆が持っているフレーバーはしっかり感じられ、さらに酸味もほどよく残している。深煎りならではのボディ感ももちろんあるため、いわゆる昔ながらのコーヒーが好きという人にはしっくりくる味わいだろう。

コーヒーには焙煎した人の人柄が出る。「TOMOMO COFFEE」のコーヒーは、クリーンカップに秀でた浅煎りといった、いわゆる昨今のトレンドとは少し違う。ただ、奥深く、丸みがあり、余韻に甘さが残る味わいは、深町さんの人柄がにじみ出ているように感じる。

「福岡で開業したことも私にとっては幸運でした。豆香洞コーヒーの後藤さん、珈琲蘭館の田原さん、自家焙煎珈琲 萌香の帆足さん、ROASTERY MANLY COFFEEの須永さんなど、同年代の仲間たちに出会うことができ、たくさんの刺激を受けてきました。コーヒーはコミュニケーションの真ん中にあるもので、たくさんの繋がりを生み出してくれるもの。これからも、お客さまにとって顔が見える店であり続けたいと思っています」

■深町さんレコメンドのコーヒーショップは「このみ珈琲」
「福岡県直方市にある『このみ珈琲』。店主兼ロースターの許斐さんは、当店と同じリーディングコーヒーファミリーから生豆を仕入れています。買い付けグループに入ったのは私よりも断然早くて、大先輩に当たる方。筑豊という地域に根付き、それこそ老若男女、幅広いお客さまに愛されているお店で、コーヒーショップの理想的なスタイルだと感じています」(深町さん)

【TOMOMO COFFEEのコーヒーデータ】
●焙煎機/ラッキーコーヒーマシン直火式4キロ
●抽出/ハンドドリップ(KONO名門フィルター)
●焙煎度合い/中煎り〜深煎り
●テイクアウト/あり
●豆の販売/100グラム550円〜




取材・文=諫山力(knot)
撮影=大野博之(FAKE.)

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