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パン食い競争で最も使用されているパンとは?時代に合わせて変化し続ける「運動会」の今と昔

  • 2022年7月13日
  • Walkerplus

子供の頃の一大イベント「運動会」。組体操や騎馬戦、パン食い競争、クラス揃ってのダンス披露など、人それぞれの思い出がある行事の1つだ。

運動会といえば秋に開催されるイメージが強いが、最近では5月〜6月の春頃に開催されるケースも増えてきている。さらに“大人”の間でもさまざまな形の運動会が行われているなど、当たり前のように取り組んできた行事だが、自身が経験した以外の運動会についてはあまり知らないことに気づいた。

そこで今回は、一般社団法人 運動会協会理事で追手門学院大学准教授の上林功さんに「運動会文化の変遷と今」について話を聞いた。

■動物を捕まえる競技があった!?運動会ができたきっかけ
運動会の起源は明治時代で、当時の富国強兵を目指す政府が軍の練兵に取り入れた「競闘遊戯会」や、大学で流行した遠足先でのレクリエーションなどが変化したものとされている。現在では見られないような競技も行われていたんだとか。

「日本で最初に行われた海軍兵学寮での運動会では『豚追い競争』がありました。仔豚に油を塗って捕まえる競争で、後にニワトリやウサギなどの動物を捕まえる競技に広がっていきます。今では見られなくなった競技です。また、『綱引き』などは今でも行われていますが、もとは地域同士で競い合ったり、地域で結った縄を神社に奉納するなど儀式的な側面があったりもしたようです」

当時は地域や自治団体主体での行事だったが、全国各地に小・中学校が作られるなかで地域運動会が学校運動会へと変化していった。現在のように「秋の大運動会」と銘打って10月10日の体育の日前後に開催されるようになったのは、1964年の東京オリンピック開催がきっかけと言われる。

■時代に合わせて変化する運動会の在り方
大人が「これぞ運動会」と思っている競技にも変化が起きている。特に騎馬戦や組体操、棒倒しなどは、生徒だけでなく観客も盛り上がる競技として白熱した人も多いのではないだろうか。しかし、現在ではこれらの花形競技を行わない学校も多くなったという。

「怪我人が出やすい競技であることや、保護者からの要望もあり、危険な競技を取り入れる学校が少なくなっているのが現状となっています。かつての運動会では『仮装⾏列』や『御神輿作り』など必ずしも運動と関わりのない要素もありましたが、教育成果発表を兼ねた体育大会としての側面が強くなった今では、⾃由度の⾼い内容が貴重になってきています」

一方で昔ながらの競技も使用するツールによって現代版に進化しているそうで、例えばムカデ競争で使う専用のベルトなど安全に配慮した製品の登場が、競技の生き残りに一役かっているようだ。

■最近のパン食い競争は“パンを使わない”⁉︎
運動会の代表的な競技の1つといえば「パン食い競争」。バラエティー番組の企画などでも行われているが、地域や企業の運動会を企画している株式会社運動会屋(以下、運動会屋)の話によると、必ずしもパンが使用されているわけではないという。

「一般的には『あんぱん』のイメージが強いかもしれませんが、よく使用されているのはパンじゃなくて『カステラドーナツ』だったりします。理由として、小さい個包装になっていて⼊⼿もしやすいことが挙げられます。一方であんぱんが使われないのは、大きくて咥えにくく、誤って地面に落としてしまう可能性があり、衛⽣的に良くないことが一因として挙げられます」

とはいえ、2番目に支持されているのはやはり「あんぱん」だそうで「パン食い競争=あんぱん」というイメージは未だ根強い。地域のパン屋さんが協力している場合もあるそうで、もしかしたらフランスパンやチョココロネなど、バリエーション豊かなパン食い競争をしている運動会もあるかもしれない。

パンを地面に落としてしまうリスクを考慮して、最近では台に置いたパンを咥える形もあるそうで、パン食い競争も時代の変化に合わせて進化し続けているのである。

そんな運動会だが、今、学校行事とは異なる“新たな形”で発展を遂げつつある。

■子供だけじゃない!大人も全力になれる最新の運動会
かつて運動会に全力で取り組んだ人も多いはずだが、今は子供や⼤⼈関係なく行われており、最近ではなんと“オンライン化”しているのだとか。そこで上林さんがも参加した「YCAM」(正式名称:山口情報芸術センター)主催のオンラインイベント「第5回 未来の山口の運動会」の様子について聞いてみた。

「おそらく世界初のオンライン運動会だと思われます。コロナが流行してすぐの5月に行われたイベントです。特徴的なのは、全種目がイチから考案されたものだということ。リモート環境で繋がれた各家庭でできる4種目が作られました。例えば『あつまれどうぶつのコラ』という競技は、お題として出された“どうぶつ”をジェスチャーで表現し、リモート会議ツールで映しスクリーンショットを使って再現していく競技ですが、出揃った作品はどれも笑いを誘うものでした」

コラージュした画像はTwitter上の投票で優勝が決定するという、オンラインならではのルールも。

「『ハッスルマッスル』というオンライン筋トレ競技では、事前にスマホを振ると数字をカウントしてオンライン上で合算される専⽤アプリを開発し、みんなでスマホを持ちながらカメラの前で筋トレを⾏い、得点を競いました」

ほかにも自宅にある本のタイトルでしりとりをしたり、カメラの前でグルグル回りながら何を持っているか当てる競技など、「オンライン」と「運動会」という一見結びつかないように思える組み合わせを、参加者だけでなく観覧者も楽しむことができる企画となっている。

「オンラインでも変わらないことや、逆にオフライン開催でしかできないことなど、いろんな発見があるイベントでした。また、コロナ禍で行動が制限されるなかでもWEB会議ツールを駆使したことで、これまでになかった運動会を開催できたのは本当にすごいことだと思います」

インターネットの環境さえあればどの地域からも参加可能で、気軽に観覧もできる。もしかすると、海外の人も一緒に楽しめるような一大コンテンツになる可能性を秘めているのかもしれない。

■巨大バトンでリレー!コロナ禍に配慮した社内運動会
運動会がオンライン化する一方で、前述した運動会屋が企業向けに展開する「大人でも楽しめる社内運動会」にも変化があるようだ。これまでの運動会のイメージは残しつつも、昨今の社会背景に合わせた形でリニューアルされている要素も。

「競技前後の手指消毒やマスク着用で、感染対策を徹底するようになりました。また、チーム対抗リレーでは手が触れ合わないように2メートルもある巨大なバトンを新たに取り入れるなど、ユニークな試みもあります。かなり大きいですが、空気が入っていて軽いようです」

また、運動会屋の公式サイトを調べてみると、会社ならではのオリジナル競技もあり、例えば金融業界であればお札数えのタイムを競う「お札数え競争」や、運輸・物流業であれば馴染みあるダンボールを使った「ダンボール積み上げ競争」など、興味をそそるものばかりだ。自分の職業ならどんな競技ができるだろう?と想像してみるのも楽しい。

リモートワークが主流となりつつある今、社員同士のコミュニケーション不足や運動不足などさまざまな課題がある。こうした企画提案が、会社内のチームワークを高めるために今後さらに重要になってくるかもしれない。

「運動会は社会背景とともに変化し続けますが、今も昔も変わらず“誰もが知っている⾏事”と言う点に大きな価値があると思います。昨今のコロナ禍でいろんな行事が中止されているなか、多くの学校は運動会をなんとか実施しています。それくらい学校にとって重要な⽂化なんだと感じています。そして昨年、ようやく全国の運動会について調査ができるようになりました。今後も引き続き調査していきたいですね」

運動会の文化が始まってもうすぐ150年。開催や競技の形は変われど、子供だけでなく大人も夢中になれる楽しさが今もなおしっかりと残っている。たまには家族や友人と懐かしの運動会話に花を咲かせてみてはいかがだろうか。もしかすると、まったく知らない運動会の姿が浮かび上がるかもしれない。

取材・文=西脇章太

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