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“アニメ化は無理”とされた『閃光のハサウェイ』 富野監督が求めた「脱ガンダム」と「脱富野」

  • 2021年6月11日
  • Walkerplus

公開が延期となっていた映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』が、6月11日より全国ロードショーする。本映画は当初、2020年7月23日の公開を予定していたが、2021年5月7日、そして5月21日と、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け3度にわたって公開が延期されていた。今回、同作の公開決定にあたってガンダムシリーズを統括する小形尚弘ゼネラルマネージャー(以下、GM)を直撃。32年前に刊行された小説を映画化した理由、ガンダムの生みの親・富野由悠季氏が映画『閃光のハサウェイ』に望むものなど、映画制作の舞台裏を聞いた。

■小説で描かれた「地球環境問題」「テロリズムの歪み」は現代社会の写し鏡

3度の延期を経て、6月11日の公開が決定したことについて小形GMに聞くと、「コロナ禍はまだ予断を許さない状況ですが、作品自体は完成しているので、ファンの皆さまにお届けできるのはうれしい」と率直な想いを吐露。続けて、「劇場版だからこその“クオリティ”になっているので、ぜひ劇場に来てほしいです。感染予防対策を実施した上で楽しんでいただきたいです」とコロナ対策をしたうえで“劇場の醍醐味”を体感してほしいと強調した。

小形GMが30年来の『閃光のハサウェイ』ファンであることは、これまで多くの場で言及されてきた。「僕は今年47歳なので、中2の頃に『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』を見た世代です。ただ、当時の僕は映像的なカッコよさに惹かれつつも、内容的には訳がわからなくて…」と苦笑する小形GM。結局、シャアやアムロが生きているのか、死んでいるのかもわからないまま本屋さんに行ったら、ちょうど『閃光のハサウェイ』が小説として雑誌に載っていたのだそう。

「『逆襲のシャア』の続きと書いてあって、これを読めばアムロとシャアのその後のことが書かれているんだろうなと思って読むと、全然書かれていない。しかも結末にとんでもない衝撃を受けて…。人生の中で特に印象に残っている小説の1つだと思います」

『機動戦士ガンダム』の生みの親である富野由悠季氏は、アニメ監督としての顔以外にも演出家、脚本家、作詞家といった多くの分野で結果を残しているスーパークリエイター。なかでも、小説家としては70冊以上の作品を上梓し、1100万部超の累計発行部数を誇るベストセラー作家でもある。1989年発行の小説『閃光のハサウェイ』は累計発行部数130万部を越える代表作のひとつだ。

ガンダムファンの間で“名作”と名高い『閃光のハサウェイ』だが、そのテーマ性から「アニメ化は無理なのでは」と長らく囁かれていた。それゆえに、映画化決定の報に、ファンたちは狂喜した。

小説から30年経って、今なぜ映画化に至ったのか。その理由について小形GMは「『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』で宇宙世紀に再スポットが当たったのが大きかったと思います。『UC』から8年後の話になっているので、必然的にこの選択になった形です」と、活気づく宇宙世紀シリーズの続きを描く“必然性”があったと話した。何より、同小説で描かれた“地球環境問題”、“テロリズムの歪み”は30年経ったいまはより深刻さを増しており、現代社会の映し鏡のようなリアリティを持って迫ってくる。「富野監督の予見に時代が追い付いた」と言われる所以だ。

■ガンダム作品でも「人間ドラマ中心に描ける」という部分に挑戦

まさにファン待望の作品なのだが、サンライズのガンダム公式YouTubeチャンネル『ガンダムチャンネル』では、一足先に同映画の冒頭15分が公開され、美麗な作画はもちろん、緻密なSF表現や登場人物の内面描写が話題となっている。

「『閃光のハサウェイ』の監督・村瀬(修功)さんは『UC』では原画として参加されています。他のガンダム作品だと『機動戦士ガンダムF91』の冒頭の作画監督を担当。クロスボーン・バンガードのMSが月に向かって発進していくシーンだったり、印象的なモビルスーツのカットの多くは村瀬監督です。アニメーターとして世界でも何本かの指に入る方だと僕は思っているので、ビジュアル面に関してはこれまで以上の作品になったと思います」

では、今作における村瀬監督の演出のどこに注目すべきか。それは人物描写だと小形GMは語った。「作画や画作りも素晴らしいのですが、村瀬さんの真骨頂は“内面表現”だと思います。『閃光のハサウェイ』は、ハサウェイ(・ノア)が『逆襲のシャア』の時に何を見て、経験し、影響を受けたのか。その結果どんな青年になったかという部分にスポットを当てた作品になっています」と小形GMは説明した。

『閃光のハサウェイ』は元々小説であり、従来のガンダムアニメにある冒頭の戦闘シーンといった“お約束”は存在しない。小形GMはその点について「『閃光のハサウェイ』は今までのガンダムと比べて戦闘シーンは少ないです。そこは映画として割り切って、ガンダム作品でも“人間ドラマ”中心に描ける、という部分にチャレンジしています」と力を込める。一方で、小説の著作者である富野監督からは「小説に忠実すぎる!」と怒られたとも。富野監督には、オリジナルにとらわれず、今の時代の観客と映画としての構造を意識しろという想いがあるのだと、小形GMは教えてくれた。

「富野監督が特に大事にしているのは映画という構成論。『自分が書いたのは小説であって、映画をやるんだったらちゃんと映画的な構成にしろ』と言われました。ごもっともなことだなと。僕も、反省点として小説に引っ張られすぎたという思いはあります。逆を言ったら、小説再現に関しては非常にうまくやれたという部分はあります」

『閃光のハサウェイ』の魅力を語るとき、それは鮮烈なラストとセットとなっている。ファンの間では、小説版のラストが踏襲されるのか、それとも変更されるのか、と話題になっている。小形GMは「映画は興行収入的な部分も含めた“生もの”であり、その時代時代の社会的な雰囲気も含めて、社会情勢に影響される部分もある」と映画製作の舞台裏を告白。「ただ、この作品に関しては30年前に富野監督が書いていますので、内容が大きくブレることはないとは思っています」と強調した。

最後に、映画『閃光のハサウェイ』で特に注目して見てほしい部分について聞いた。

「本作ではハサウェイとギギ(・アンダルシア)、ケネス(・スレッグ)の関係性をしっかり描きたいという思いが村瀬さんにはあります。“3人の人間関係”をブレずにカメラも追いかけているので、ぜひその点に注目して観てください」



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