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もみじ・楓の育て方ガイド!庭木や鉢植え、盆栽におすすめの種類はこれだ

  • 2020年9月9日
  • Walkerplus

コロナ禍の紅葉シーズンが迫る中、おでかけせずに風流なもみじや楓を愛でたいのなら、自宅で育てるというのも一手。実際、もみじや楓は庭に風情を醸す名脇役的な存在として育てられるケースも多い樹木のひとつだ。市街地の住宅では、里山や山林といった自然の中とは環境が異なるため、鮮やかな紅葉を期待するのは難しいが、樹木を身近に感じながらの暮らしはやはり良いもの。そこで、人気YouTubeチャンネルを運営する植木職人であり、造園会社を営む木下庭園管理の代表・木下透さんに、庭木や盆栽に適したもみじや楓の種類、育て方のポイントを聞いてみた。

■もみじや楓の紅葉の仕方は街と自然の中では異なる
庭木としてもみじや楓を育てることは、庭木のプロでなくとも十分に可能だ。ただし、そもそももみじや楓の紅葉は自然環境に左右されるもので、人工的に紅葉をコントロールすることはできない。

今回、もみじや楓を自宅で育てるにあたり、おすすめの品種や育て方のポイントを教えてくれた木下庭園管理の代表・木下透さんは、「美しい紅葉を引き出すには、昼夜の寒暖差、明暗差が重要で、適度な水分も必要です。街灯や外灯が一晩中明るく照らし、道路の熱が夜間も冷えない街中では、山と同じような紅葉はなかなか望めません」と説明。

さらに、もみじや楓を庭のシンボルツリーとすることについては、「あくまでも『名脇役』であって主役ではない木だと思っています」とコメント。一方で、紅葉はなかなか望めずとも、もみじや楓は樹形もナチュラルで、庭をより魅力的なものにする樹木であり、「特に和風の庭にはもみじは欠かせません」と語ってくれた。

では、どんな種類のもみじ・楓が庭木に適しているのか。育て方、剪定のコツや注意点とともに見ていこう。

■庭木に取り入れるのに最適なもみじの種類
まず、ショウジョウノムラモミジ。名前通り、ノムラモミジの一種だが、ノムラモミジが夏季に葉の赤色が薄れるのに対し、ショウジョウノムラモミジは通年、葉がえんじ色を保つ。「樹形が乱れにくく、剪定が比較的容易なのもポイント」と木下さん。

また、モミジの中でも最もポピュラーなのが、ヤマモミジ、イロハモミジ。流通量が多く、価格が手頃で、紅葉名所となっている庭園などでも多く植栽されている。細いうちの苗木を数本集めて、根本を寄せて育てる株立ちにし、洋風の庭を彩る樹木に使用するのもおすすめ。

■しだれもみじは風情たっぷり!育て方のポイントも
和風庭園をより風情ある景観に演出してくれるのが、しだれもみじ。独特な色合いや枝振りが魅力だ。代表的な品種は、春に出る葉が赤味を帯びたベニシダレと、新緑が美しく秋にほのかに色づくアオシダレで、ともに比較的大きさを維持しやすいのが特徴。枝垂れなのである程度の枝張りが必要だが、大きさは剪定によりコントロールしやすい。ボリュームを出したいときは外枝を残し、コンパクトにしたいときは内枝をうまく利用するのがコツだ。

ただし、これらのもみじを育てる上で注意をしなければいけないこともある。それがシンクイムシ。なかでもカミキリムシの幼虫である、テッポウムシは木の中に穴を開けて、木を枯らすほどの被害がある。日ごろから木の根元周辺に木くずが落ちていないかチェックするようにしよう。

紹介した4品種はそれぞれ、同じムクロジ科カエデ属に分類される植物なので、植え付けに適した時期は共通して2〜3月頃。

土質や日当たり、風通しなど植栽する環境はよほど劣悪でなければ、育てる上では問題はない。ただし、1日中強い日差しに当たると葉が茶色く変色してしまうことも。さらに、水はけが良く、適度に湿度を保てる土壌を好むことも覚えておこう。

植え付け後、肥料は特に必要ないが、与えるなら葉が落ちた寒い時期に有機肥料を。化成肥料を使うのはおすすめできないが、どうしても使用するなら液肥をセレクト。地表に化成肥料をばらまくと土が硬くなるのでNGだ。

そして、もみじ・楓の管理で最も重要なのは剪定。木下さんは「どこをどのように切っても基本的には芽は出てきますし、よほど手荒なことをしなければ枯れることはありません。ただ、大きさを保ち、風情ある枝振りを作るには剪定の技術が必要です」と話す。

木下庭園管理のYouTubeチャンネルでは、もみじの剪定方法について詳しく紹介した動画もあるので、剪定のポイントを知りたい場合は、チェックしてみるのもおすすめ。

■和洋どちらの庭にも合うコハウチワカエデもおすすめ
北海道から九州まで、全国各地に分布するコハウチワカエデは、楓の種類の中では成長が比較的緩やかで、庭や玄関先に植栽されることも多い。ただし、根付かせるまではこまめな世話が必要。もともとは山の高木の枝下で自生する樹木なので、直射日光や強風にさらすのは良くない。さらに自然の山の環境下にならうと、落ち葉を大量に含んだ土で、かつ水はけの良さも求められる。つまり植栽する場所、土選びが重要というわけだ。

ただ、上手に根付かせることができれば、初夏は美しい新緑、晩夏は深い緑、晩秋はほのかに色づいた葉など、季節ごとに美しい景観の変化を楽しめる。

■もみじや楓を鉢植え、盆栽で育てることはできる?
鉢植えで育てることも可能だが、庭に植栽する場合よりも、よりこまめな手入れが必要。とくに大切なのが水やり。土の表面が乾いてきたら必ず水やりを行い、さらに夏場は高温の時間帯を避けて、毎日水やりが必要になる。また、風を受けて倒れやすいので、あまり大きくなるまで育てることは難しい。

コンパクトなサイズ感が魅力の盆栽だが、室内だけで育てることはできない。庭や鉢で育てるのと同様、ほどよく日が当たる屋外で、風通しの良い場所を選ぶのが重要。もちろん、水やりも大切で、春の芽出し時期は1日1〜2回、夏は1日2〜3回が目安。逆に落葉した冬季は2〜3日に1回程度でOKとされている。表土が乾いてきたら水やりをするのを忘れないように。

ある程度の大きさまで育った苗を購入するか、野山などに行って、地面から生えている、種子から発芽した実生の樹木を掘ってきて小鉢に植えて楽しむのがおすすめ。見た目や大きさは個人の好みがあるので、芽摘みや剪定は専門書などを参考に行うようにしよう。

■木下透(きのした・とおる)/神奈川県横浜市にある造園会社、(有)木下庭園管理の代表取締役。神奈川県優秀技能賞、横浜市市長賞(優秀技能者)など受賞歴多数。2019年からは造園技能検定員も務める。さまざまな植物の剪定のヒントや、日々の仕事内容などを発信するYouTubeチャンネル「ktkzouenya」を開設しており、現在、チャンネル登録者数は3万2000人超(※2020年9月現在)。一般の人をはじめ、同業者からも勉強になるといったコメント多数。


取材・文=諫山 力

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