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畑のトリセツ!「どうする?!猛暑対策」

  • 2024年2月27日
  • NUKUMORE

野菜を育てるための「菜園づくりのヒント」をご紹介!記録的な猛暑にも負けない、畑の準備や野菜の適切なメンテナンス方法などを、4名の野菜のプロたちから学びましょう!

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涼しい環境づくりと水分の補給

連日猛暑日が続く記録的な暑さで、畑の野菜は大変なストレスを受けています。トマトやナス、キュウリなどは高温で受粉できず花が落ちて収穫量が減り、実がついても品質のいいものが採れなくなります。高温で体が弱るため病虫害も多発します。

発芽適温や生育適温に近づける工夫が必要です。遮光資材を利用して葉の温度を下げ、葉焼けや実焼けを防ぎます。地温の上昇を抑えるには、草マルチや敷きワラが有効です。気温が高いと野菜は葉からの蒸散量が増えるので、適度な水やりも必要です。
畑に遮光シートの天幕を張るとかなり涼しくなる。畑仕事もラクになる。 YD29_p22_map_1_1709001218

1. 黒マルチの上にワラを敷いて断熱!

家庭菜園では黒マルチを利用する人が多いです。透明マルチほどではありませんが、黒マルチが張られた畝は土壌表面の温度がかなりの高温になり、野菜にストレスがかかります。

高温期には、黒マルチの上にワラや刈り草を厚めに敷いておくことをおすすめします。黒マルチに直接日光が当たらず、地温の上昇が抑えられます。とくにワラは茎が中空のため断熱効果が高く、地温の上昇抑制にはうってつけのマルチ資材です。 黒マルチは雑草を抑制するほか、畝の保湿効果がある。水やりの回数を減らせるので、干ばつ対策にもなる。 YD29_p22_map_2_1709001196

2. 遮光資材で強い光をやわらげる!

遮光シート、寒冷紗、防虫ネットなどの被覆資材を利用して、強い日差しをやわらげて、野菜を守りましょう。

トンネル被覆、天幕の設置、また、トマトの雨よけ栽培をしているなら、雨よけビニールに寒冷紗を重ねるのもおすすめです。

ただ、極端な遮光は野菜の生育を妨げます。遮光率20~30%程度までの資材を利用するといいでしょう。

また、被覆資材を掛けっぱなしにしないこと。内部が蒸れると逆効果。午後に涼しくなったら被覆資材を開放して風を通すなど、こまめに対応します。

3. 下草を生やして土の温度を下げる!

ビニールのマルチを使わないなら、ワラや刈り草、堆肥、もみ殻などの有機物マルチを利用します。
有機物マルチにも地温の上昇や土の乾燥を抑える効果があります。

ただ、猛暑と干ばつがセットになって襲ってきた場合、有機物マルチは少々役不足の感がいなめません。効果を上げるには、かなり分厚く敷いておく必要があります。

草を活かして野菜を育てる“草生栽培”は、猛暑や干ばつに強い栽培法です。草を抜かず、野菜の生長を邪魔しない程度に刈り、草丈をコントロールしながら野菜を育てます。下草のおかげで、地温が下がり、土は乾燥しにくくなります。手間をかけてきちんと管理できるなら、家庭菜園でも採り入れ可能な栽培法です。

さて、誰でもできる現実的なやり方として、有機物マルチにプラスして畝に下草を生やしておく方法をおすすめします。有機物マルチには雑草抑制効果もありますが、それでもチョロチョロと雑草が生えてきます。この雑草を抜かずに生やしておきます。

地温が下がり、夜露や朝露で土が乾きにくくなります。雑草が伸びて野菜を邪魔するようになったら、適宜刈って地面に伏せておきます。有機物マルチと雑草が土壌微生物を養い、土づくり効果も上がります。

*遮光シートの天幕

和歌山県の菜園家、田中旬子さんの畑では遮光シートの天幕を張って猛暑対策。 YD29_p22_map_3_1709001310 ショウガが天幕の下でよく育つ。 YD29_p22_map_4_1709001319 ニンジンの畝づくり。天幕の遮光が発芽を助ける。台風などの前には天幕を下ろしておく。 YD29_p22_map_5_1709001333

*被覆資材で畝を囲い暑さをしのぐ

滋賀県の菜園家、毛呂陽子さんは、トマト、ナス、キュウリの畝に防虫ネット、寒冷紗などを利用して猛暑対策。オオタバコガなどの害虫防除にも役立つ。成虫(蛾)は夜間に飛来して産卵するので、夜の間は囲っておくといい。 YD29_p22_map_6_1709001354

4. 夕方の水やりで涼をとる!

気温が高いと野菜は蒸散量が多くなり、野菜はそれだけ水を欲しがります。土が乾いたら水やりが必要です。

猛烈に暑い日には、朝の水やりは蒸発が多くてもったいなく、昼間の水やりでは葉が焼け、根が煮えて野菜のためになりません。野菜がよろこぶのは夕方の水やりです。株元にたっぷり水を与え、葉面にも水をサッとまき、葉の温度を下げてあげましょう。

5. 混植栽培で地面をカバーする!

写真はトウモロコシとラッカセイの混植例です。高温期にはラッカセイの葉で地面が覆われるため、地温の上昇と土の乾燥を防ぐことができ、トウモロコシの生育が促されます。

トウモロコシ+カボチャ、ナス+ラッカセイ、オクラ+スイカなど、背が高い野菜と地面を覆う野菜の混植栽培は、有効な猛暑対策になります。試してみましょう。 ラッカセイが土をカバーし、地温と水分が安定する。また、ラッカセイの根に共生する根粒菌が窒素分をつくり出して土を肥やし、少ない肥料でトウモロコシを育てられ、害虫被害も軽減する。
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【ワザあり!】 日よけ栽培で猛暑を乗り切る

遮光シート、寒冷紗 防虫ネット、不織布を使い分ける 写真は毛呂陽子さんの畑の様子です。毛呂さんは、粘土質で水はけの悪かった畑を改良し続け、そのうえで、果菜類の猛暑対策などを実践して、おいしい野菜を育てています。

写真①は、イチゴ苗を養生する工夫です。トンネルとトンネルの間に遮光シートを渡して屋根をつくり、その下に苗採りをしたイチゴのポットを並べておきます。苗は強い日差しから守られます。

写真②は、秋冬野菜の栽培の様子。秋冬野菜のタネまきや定植は、8月~9月の暑い時期に行いますから、できるだけ涼しい環境をつくることが発芽や初期生育を促すポイントになります。

タネまきから栽培初期の猛暑をしのぐには白寒冷紗のトンネルが役立ちます。さらに暑いときには黒寒冷紗を重ねるのもおすすめです。ただ、黒寒冷をいつまでも掛けていると日照不足で野菜が軟弱気味に育つので注意します。

涼しくなったら防虫ネットに掛け替え、さらに気温が下がったら保温効果のある不織布に替えて栽培を続けます。 写真①:トンネル畝の間に遮光シートで日陰をつくり、定植前のイチゴ苗を置いて養生。 YD29_p22_map_8_1709001458 写真2:白寒冷紗と黒寒冷紗を重ねてトンネル掛け。育ち始めた秋冬野菜を暑さから守る。 YD29_p22_map_9_1709001470

【ワザあり!】 ナスの草マルチは冬から始めてどんどん重ねる!

ハクサイの草マルチをナスの草マルチに継続利用 神奈川県の自然栽培農家、田村吾郎さんの畑では、草マルチを多用して野菜を育てています。夏の高温期でも水やりをすることなく、野菜は元気に育っています。田村さんに草マルチ利用のテクニックを伺いました。

「草マルチの効能を引き出すポイントは、時間をかけること。苗を植えてから草を敷くというタイミングでは遅いです。これでは突貫工事のようなもの。私の畑では、ナスの場合、前作のハクサイの草マルチを引き継いで利用します。ですからナスの草マルチ施用は、冬からスタートしていることになります」と、田村さん。

5月にナスを定植する際、草マルチを観察すると、草と地表面が接するところがすっかりなじんで、一体化した土のような状態になっていました。

田村さんは、ナスの定植後も草マルチを適宜積み足して、10cmくらいの厚さにしてナスを育てます。
「どの野菜も基本的に同様のやり方です。土となじんだ草マルチは、高温や低温、乾燥や多雨など、天候の変化に対して、かなりいい具合にコントロールしてくれます。この緩衝力は自然素材ならでは。おかげでこの夏も野菜は元気でした。ちなみに、突貫工事の草マルチの場合、高温期に草マルチがカラカラに乾くと、雨が降っても水をはじいて、下の土は乾いたままということがよくあります」と田村さん。

*草マルチと畝の土との境界がなじんでいることが大事

ハクサイの畝。刈り草を適宜積み足しながらハクサイを育てる。使うのはイネ科の夏草。ハクサイの収穫が終わったら畝に夏草をどっさり載せ、ナスの定植まで養生しておく。草マルチの底面は分解が進んで土化している。地表面と一体化した状態になっているのがポイント。 YD29_p22_map_10_1709001554 5月に草マルチをかき分けてナスの苗を植えて栽培を始める。生育は順調だ。 YD29_p22_map_11_1709001566 暑さに負けずに収穫が続く。 YD29_p22_map_12_1709001577 【+α】ガッテン農法流!ドーナツ状草マルチ
こちらは三浦伸章さんがガッテン農法セミナーで推奨しているユニークな草マルチ。刈り草をドーナツ状に敷き、その中央に野菜を植えます。サイズは直径1m20cm、厚さ20cm。野菜の根張りがよくなるそうです。 YD29_p22_map_13_1709001614

猛暑、干ばつ、長雨、冷夏にも対応! 新 畑のトリセツ “全天候型”菜園づくりのヒント

2023年の夏は、全国的に猛暑と干ばつが続き、集中豪雨もありました。
そして、秋らしい秋は短く、急に冬に入った感があります。
野菜によっては育ちが絶不調で、病虫害に悩まされた方も多かったようです。
畑の準備や野菜のメンテナンス方法に新たな工夫を採り入れて、猛暑、干ばつ、大雨などに強い“全天候型の畑づくり”を目指しましょう。

*教えてくれるのは

YD29_p16_map_4_1709001672 竹内孝功さん YD29_p16_map_5_1709001684 三浦伸章さん YD29_p16_map_6_1709001692 田村吾郎さん YD29_p16_map_7_1709001701 毛呂陽子さん

*野菜の根を守り育てるための新処方を紹介!

“夏野菜づくりはこれまでに経験したことがないほどに苦労し、病虫害も多く、収量も少なめだった”、“朝夕に水やりをしたが焼け石に水だった”、“真夏日がいつまでも続いたため、ダイコンや葉物野菜のタネまきは4回目でやっと成功した”といったお便りが、全国の読者から届いています。

異常気象への備えは、今後ますます必要になるでしょう。いったい、どうしたらいいのでしょうか。

異常気象下ではもはや、野菜の育ちを肥料と水でコントロールしようとしても限界があります。

もっとも強力な備えとなるのは、野菜自らが異常気象に強い体質になること、つまり、野菜が根を十二分に張って育つことです。
根の健全な発達には、水持ちと水はけのよさが両立した“団粒構造”の土づくりが欠かせません。その意味で、自然農法や自然栽培、有機農法に学んで土づくりを進めることが、これからの家庭菜園の基盤になってくるでしょう。 YD29_p16_map_8_1709001764

野菜作りにまつわる情報をもっと知りたい方におすすめ!

「野菜だより2024年1月新春号」では、今回紹介した野菜以外にもたくさんの家庭菜園の情報を、わかりやすく丁寧に紹介しております。 YD29_book_1709001831

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