サイト内
ウェブ

「うちの子に限って」いじめの被害者と加害者、それぞれの親が抱える葛藤。話題作の著者・しろやぎ秋吾さんに聞きました

  • 2023年6月11日
  • レタスクラブニュース


「あるわけがない、うちの子に限って──いじめに関わるなんて」
最初は無視や悪口から始まったいじめ。やがて、被害者のケガ、不登校、SNSでのいじめ動画の拡散、加害者への誹謗中傷、紛糾する保護者会など、どんどん状況が悪くなって……そんなとき、親はどう子どもに向き合ったらいいのでしょうか。

しろやぎ秋吾さんの話題作『娘がいじめをしていました』は、そんな状況をリアルに描いた話題作です。いじめ被害を受けている本人の視点ではなく、加害者と被害者それぞれの親の視点からみた小学生のいじめを描いています。

『娘がいじめをしていました』あらすじ



赤木加奈子はある日、被害者・馬場小春の母親・千春からの電話で娘の愛がいじめの加害者であることを知ります。親子3人で馬場家を訪れ謝罪をしますが、事態はこれだけでは収束しませんでした。夏休み明けのある日、加奈子はSNSで「いじめの加害者」として愛の実名と顔写真が晒されていることに気づきます。さらに、実際にいじめの現場を撮影した動画までが拡散され、ネット上では愛への誹謗中傷が止まらなくなり、クラスでも愛はいじめられるようになってしまいました。


一方、被害者である馬場小春の母親・千春も、いじめをきっかけに不登校になってしまった娘への対応に苦慮します。学校の対応が遅いことに苛立ち、フリースクールに通わせることも考えますが、夫には「小春を甘やかしすぎてる」「子どもの喧嘩に口を挟んだりするから」と非難されます。「やっぱり学校に行きたい」という娘に一度は希望を抱いたものの、朝になっても布団にくるまって出てこない様子を見て、思わず声を荒げて八つ当たりしまうことも。

追い詰められてしまった母親たちは、それぞれに我慢の限界を迎えていました。そんな中、クラスではいじめについての保護者会が開催されることになって……。

「すごくリアル」「本当に怖い」「学校に置くべき本」など、SNSでも大きな反響を呼んでいるこの作品の著者、しろやぎ秋吾さんにお話を伺いました!


著者・しろやぎ秋吾さんインタビュー



──この作品でいじめの加害者側である愛の母親・加奈子は、中学生の頃にいじめられた経験があることから、娘がいじめをしたことが許せずつい感情的な行動を取ります。怒鳴ったり手を上げたりなど親として正しくない行動ではありますが、「もし自分がこの立場だったら」と考えると感情移入できる部分も大きいです。そんな加奈子のキャラクターについてはどのように考えて作っていかれたのでしょうか。

しろやぎ秋吾さん 加奈子は「いじめを絶対に許さない」という強く思っている普通の人です。普通に感情に任せて怒鳴るし、嫌なことからは逃げたりします。とにかく普通に抱く感情が「いじめを許さない」芯とぶつかってぐちゃぐちゃになるキャラクターにしようと思いました。



──いじめの被害者である小春の母親・千春も、学校や加害者親への対応に悩み、夫にも頼れず、不登校になってしまった娘に対して苛立ちを隠せなくなるなど、こちらも悩みの深さに共感してしまいます。千春のキャラクターについてはどのように作っていかれましたか?

しろやぎ秋吾さん 千春も間違ったキャラクターにしたくありませんでした。小春の小さな変化に気づいて話を聞き出そうとしたし、話せない小春に寄り添って待とうとしました。子どものことを思うからこそ焦ったり怒りを募らせたりして抱え込む普通の人です。
不登校の様子は、自分が不登校だったので当時を思い出しながら描きました。




──いじめの加害者側だった愛はやがて実名とともに動画がSNSで拡散されてしまい、いじめられる側になり、誹謗中傷がエスカレートして事態はどんどん悪化していきます。スマホやSNSの登場で子どもたちの「いじめ」も親世代とは変化していることを感じる場面ですが、このエピソードを描いた理由をお聞かせいただけますか?

しろやぎ秋吾さん いじめの告発投稿や告発動画は、不登校になってしまった小春が、まだ学校に通っていた時に撮影されたもので、これが夏休み明けの9月に投稿されています。この写真や動画が拡散されたために、加害者側だった愛がいじめられる側になっってしまった風に描いていますが、実際はいつからいじめが始まったかはわかりません。ネット独特の陰湿さや攻撃性、実態の見えなさを表したくて、小春の母親が復讐を始めた様にミスリードして描きました。
このシーンでは子どもを晒すなんてありえない、それこそがいじめだという声が多かったのですが、そうするしかない状況もありえるのかもしれません。



──この作品はいじめの被害者側の立場も加害者側の立場もリアルに描いていて非常に考えさせられる内容でしたが、SNSや読者の反響はいかがでしたか? 多かった感想や、印象に残っているものがあれば教えて下さい。

しろやぎ秋吾さん 反響が特に多かったと感じたのは、加奈子が愛に声を荒げて怒るシーンです。威圧的な態度で子どもに対して気持ち悪いとまで言ってしまう、いかにも問題がありそうなシーンで、読者は加奈子を批難していましたが、気持ちはわかる、自分もそうしてしまうかもしれないという声もたくさん見られました。

    *     *     *

この作品に登場する赤木家も馬場家も、何の問題もなさそうなごく一般的な家庭です。ふたりの母親もどこにでもいる常識的な母親で、その悩みも共感できるものばかり。つい子どもに声を荒げてしまう場面ですら、「わかる……」と思う部分があります。ふたりがこの後どのように子どもたちに向き合っていくのか、そしてどんな選択をするのか。それは、あなたが子どもに向き合う上でもなんらかのヒントになるかもしれません。


取材・文=レタスユキ

キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。

掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。
Copyright (c) 2016 KADOKAWA Corp All Rights Reserved