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巨大古代サケの驚きの顔が明らかに、鼻先から牙が横に突出

  • 2024年4月30日
  • ナショナル ジオグラフィック日本版

巨大古代サケの驚きの顔が明らかに、鼻先から牙が横に突出

 1972年、体長約2.5メートルにもなる史上最大のサケを発表した古生物学者たちは、この魚は陸を歩いていたサーベルタイガー(剣歯虎)の水中版だと考えた。サケの上顎(あご)から、2本の湾曲した歯が下向きに突き出ているとされたからだ。

 しかし今、新たな研究により、1200万〜500万年前に生きていたこのサケ(Oncorhynchus rastrosus)の象徴的な顔が覆された。2本の印象的な歯が「鼻先」から、キョンやイボイノシシのように、横向きに突き出ていたと実証されたのだ。論文は4月24日付けで「PLOS ONE」に発表された。同時に論文の著者らは、これまでの英名「セイバートゥースサーモン」に替わり、「スパイクトゥースサーモン」という新たな名前を提唱している。

 顔つきの変化は、化石記録から得られた新たな知識を反映している。

 古生物学者たちは2016年、Oncorhynchus rastrosusが成魚になって海から淡水域に戻る間に、特徴的な歯が変化することを発表していた。さらに今回の米フィラデルフィア整骨医学大学の古生態学者ケリー・クリーソン氏らによる研究で、Oncorhynchus rastrosusの有名な歯が、牙のように横に突き出ていた顔が詳しく復元された。

オスとメスの両方に「スパイク」

 サケがどのような姿をしていたかを解明するには、新しい化石の発見と半世紀前に初めて記載された化石の再分析が必要だった。最初の化石では、有名な歯を持つ顎と頭蓋骨のほかの部分が別々に見つかっていた。

「当初、歯の位置を確認できなかった理由の一つは、すべてが単独で発見されたためです」とクリーソン氏は話す。横向きの歯を持つ魚がほかに知られていないことを考えると、サーベルタイガーのような下向きが理にかなっているように思われた。

 しかし2014年、米国オレゴン州の化石産地を調査していた古生物学者たちが、Oncorhynchus rastrosusの頭蓋骨の化石を新たに発見した。よく目立つ歯も付いていた。最初の化石のCTスキャンも参照した結果、新しい化石はオスとメスのもので、どちらも成魚はよく目立つ歯を持っていたことがわかった。

 オスとメス両方の歯を発見したことは、研究チームにとって驚きだった。

次ページ:なぜスパイクが生えていたのか?

「2014年の化石の発見者から話を聞くと、まるでつがいのように、オスとメスをペアで発見していたことがわかりました。そして、どちらも巨大なスパイクを持っていました」とクリーソン氏は説明する。スパイクトゥースサーモンは成魚になる前から頭蓋骨の変化が始まり、特徴的なスパイクが生えていたようだ。

「今回の復元は、非常に説得力のある証拠によって裏付けられています」とカナダ、アルバータ大学の古生物学者マーク・ウィルソン氏は評価する。ウィルソン氏は特に、スパイクが種全体の特徴だとわかったことが注目に値すると考えている。なお、ウィルソン氏は今回の研究に参加していない。

なぜスパイクが生えていたのか?

 当然ながら、古生物学者はスパイクの珍しさから、なぜそのように進化したのか、何に使われていたのかという疑問を抱く。

 過去の研究では、成魚のスパイクの一部は摩耗していたことがわかっており、硬い表面とこすれていたことを示唆している。おそらく巣をつくる際、この歯で堆積物を削って動かしていたのだろう。川底に穴を掘ろうとするほかの魚から巣を守るのに役立っていた可能性もある。

 一方、クリーソン氏らは防御に使っていたのではないかと考えている。先史時代のサケは、現代のサケと同じように、体を左右に動かしながら泳いでいた。最も強い筋肉はこの動きに使われていたため、横向きのスパイクで捕食者やライバルに一撃を加えることもできたはずだ。

 しかし、すべての専門家がそのように考えているわけではない。ウィルソン氏はスパイクを使って営巣地を掘り、オスは産卵期にライバルを威嚇していた可能性を指摘している。

 防御のために使っていたか、競争のために使っていたかにかかわらず、スパイクのような歯が恐ろしいものであることは確かだ。

「地質調査に使う1ポンド(約450グラム)のハンマーを研ぎ、200ポンド(約90キロ)の筋肉で振り回す姿を想像してみてください」とクリーソン氏は話す。サーベルのような歯は持っていなかったが、恐ろしい歯だったことに変わりはなかったようだ。

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