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【バイオプラスチック】は環境にやさしい?環境化学者・大河内教授に聞きました

  • 2023年11月30日
  • 暮らしニスタ

地球規模での廃棄物処理やリサイクルの課題、さらに最近では、マイクロプラスチックやナノプラスチックによる人体への影響も注視されている「プラスチック問題」。今回は対プラスチック問題によさそうな(?)「バイオプラスチック」についてお勉強。2017年からマイクロプラスチック研究に取り組む、早稲田大学の大河内 博先生に教えてもらいました。

▶「多くの人がまだ知らない、本当の『プラスチック問題』|環境化学者・大河内教授」から続く

バイオプラスチックとは?

ー「バイオプラスチック=環境に配慮されたプラスチック」というイメージがありますが、実際はどうなのでしょう。

商品パッケージなどには「バイオプラスチック」と書かれていることが多いですが、実はバイオプラスチックには、「バイオマスプラスチック」と「生分解性プラスチック」の2種類があります。

まず「バイオマスプラスチック」ですが、これは植物系の材料で作られたポリエチレンやポリプロピレンのこと。プラスチックは一般的には石油を原料として作られますが、その原料が植物系になったものが「バイオマスプラスチック」です。

原料が植物系と聞くと、やがて土に還るようなイメージをもたれるかもしれませんが、作られるプラスチック自体はポリエチレンやポリプロピレンと同じなので、通常のプラスチック同様、完全には分解しません。

一方「生分解性プラスチック」は、微生物によって環境中で分解されると言われています。ちょっとややこしいですが、石油由来の生分解性プラスチックもありますし、植物由来のバイオマスプラスチックで、なおかつ生分解性プラスチックでもある、というものもあります。

ーバイオプラスチックの中でも「生分解性プラスチック」はよさそうですね!

そう思っちゃいますよね(笑)。でも「生分解性プラスチック」であっても、実は簡単には分解しません。実験すると確かに他のプラスチックよりは分解しますが、分解速度が非常に遅いのです。

富士山頂などの上空では、そもそも微生物が少ないので分解されにくいですし、同様に海洋でも分解されにくいという論文があります。プラスチックを生分解性プラスチックに置き換えていけばプラスチック問題が解決する、ということはないんです。

プラスチックは分解されても、添加剤や有害物質は分解されなければ意味がない

ー生分解性プラスチックも万能ではないのですね。

生分解性プラスチックを使ったけれども、通常のプラスチックで使用されているような”添加剤”を使ってしまったら、これもまた意味がありません。

人体に有害なのはプラスチックそのものよりも、プラスチック製品の性能を上げるために添加されている添加剤や、プラスチックが環境中に放置された際に付着する有害物質のほうだからです。

プラスチックが分解されても、有害な物質が分解されずに残ってしまったら、「人体への影響」という課題は解決されません。

ーとなると、生分解性プラスチックの必要性がわからなくなってきました。

プラスチックは一度環境に放出されたら残ってしまいますが、仮に放出されたとしても、分解されればプラスチックゴミを減らせるのではないか、ということで生分解性プラスチックが作られました。

実際のところ分解スピードは遅いのだけれど、いずれは分解するのだから、ずっと残っているよりはいいだろうということですね。

そもそも今までの「プラスチック問題」というのは「プラスチック」の「ゴミ問題」であり、ポイ捨てなど、人間が意図的に捨てる場合の量で考えられていたので、分解されれば解決するだろうという発想は理解できますよね。

ただ実際は、人工芝、タイヤ、アスファルト、衣服、肥料、ビニールハウス、洗剤など、私たちの生活環境の中で使っているものや廃棄したものも、将来的には環境に放出されてしまう潜在的なマイクロプラスチックの発生源です。

多くの人は、目に見えるプラスチックゴミはポイ捨てしないようにしていると思いますが、マイクロプラスチックは私たちが生活している中で、知らない間にどんどん出ちゃうんです。

ですから私たちは意識してプラスチックを使う必要がありますし、今後はますます、目に見えないマイクロプラスチックにも目を向けていく必要があるのです。

大河内 博(おおこうち・ひろし)●環境化学者。早稲田大学理工学術院 創造理工学部 環境資源工学科教授。「地球の健康管理」を目標に、水・物質循環の視点から環境化学研究を展開。酸性雨、雲の研究をはじめ、大気中のマイクロプラスチック研究に取り組む。

撮影/目黒-meguro.8- 取材・文/石橋紘子(暮らしニスタ編集部)

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