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なぜだか無性に食べたくなった「すっぱい玉ねぎ」。【和田明日香の地味ごはん日記 vol.9】

  • 2022年3月31日
  • 暮らしニスタ

こんにちは。和田明日香です。

明確に食べたいものがある時、どうしてそれが食べたいのか、考えてみるのが好きです。餃子が食べたいのは、テレビで大食いの女の子が餃子を何皿もたいらげるのをチラッと見たからだ、とか、唐揚げが食べたいのは、いつかのランチに唐揚げ定食か鯖の塩焼き定食か迷って鯖の塩焼きを選んだけど「やっぱり唐揚げにすればよかった」と後悔したからだ、とか。

食べたい気持ちが一体どこからきているのか、記憶と答え合わせするような感覚です。なにかきっかけがあって、その後すぐに食べたくなることもありますが、数週間も前の出来事に引っ張られていることもよくあるので、自分の潜在意識に気づいて面白いのです。

こんなに甘いものが食べたくなるってことはそろそろ生理だろうな、とか、外食が続くと豚汁をすすりたくなるとか、忙しくて頭がパンパンの時は凝ったものを作っていろいろ忘れたくなるとか、食べたいものは、体調や状況を客観的に把握するバロメーターにもなりますよね。体のサインを感じとるためにも、食べたい理由、考えてみるのはとてもおすすめです。

さて、なぜこんな話をしているかというと。最近、数日間にわたって、明確に食べたいものがあったからです。それは、すっぱい玉ねぎ。生のたまねぎ。しかもすっぱいやつ。これがずっと、頭の片隅にこびりついて離れませんでした。

旬の新玉ねぎを、スライサーで薄くスライスして、水菜とあわせて氷水に放ち、パリッとさせてからサラダにしてみました。焼き海苔をちぎってたっぷり加えて、醤油ベースにすりごまで香りをきかせたドレッシングをかけて。自分の分を取り分けた後、たっぷりと黒酢をかけて食べたのですが、う〜ん、なんか違う。確かにすっぱい玉ねぎなんだけど、何かが違う。

私が求めているすっぱい玉ねぎは、どんなものなのか。そもそも一体なぜすっぱい玉ねぎが食べたいのか。娘を塾まで迎えに行く電車の中で、考えてみました。

まず、すっぱいものが食べたくなるのは、疲れが溜まっているからだと言われています。クエン酸には疲労回復の効果があるから、それを求めているというわけ。あとは、肝臓が疲れている証拠とも。

それから、玉ねぎですが、食べると血液サラサラになる、というのは有名な効果ですよね。つまり体からのサインとして考えると、疲れと血流の滞りをなんとかしたい、といったところでしょうか。

確かにそれはあるかもしれないけど、なんだかピンときません。最近、何か食べそびれたとか、何かで見て気になった食べものとか、あったかなぁ……と、携帯の写真アルバムを流し見していると、そうだ、思い出しました。おそば屋さんの、突き出しだ!

▲おそば屋さんの突き出し。食べかけでごめんなさい。外食の写真は、だいたいこうなる。食べてから気づくのです。

1カ月ほど前に家の近所のおそば屋さんで撮った、玉ねぎとホタルイカの和え物の写真を発見。これがめちゃくちゃおいしくて、絶対に真似して作ってみよう!と思って慌てて写真を撮ったこと、すっかり忘れていたのです。なんでもすぐ写真に残せるから、なんでもすぐ忘れるようになってしまったのだろうか。

思い出したら余計に食べたくなって、どうすれば近いものができるか、頭の中で分解&組み立て作業。どれぐらいのすっぱさだったか、甘みや香りの印象はどうか、出汁は入ってたか、玉ねぎの食感はどうだったか……イメージを膨らませて、作ったのが、こちら。

▲新玉とおかひじきの和え物。見た目、全然違う!でも、食べたい味とドンピシャだったので、良し!

ホタルイカが手に入らず、代わりにおかひじきを入れたので、まったく別の見た目に。味付けも、酸味で失敗したくなかったのでお酢はあえて使わず、酸味のバランスが完成されているポン酢をベースに組み立ててみました。

ポイントは、玉ねぎをちょっぴりしんなりさせたこと。水にさらして辛みをしっかり抜き、水気を切った後、手でぎゅうっと絞って、ドレッシングに和えて少し置いておきました。新玉ねぎと水菜のサラダがなんか違ったのは、ここだったのです。

ドレッシングは米油を多めに加えて、すっぱいだけじゃなくしっかりコクが出るように。玉ねぎがしんなりとなじんだところで、シャキシャキのおかひじきを絡めて完成。おそば屋さんで食べたものとは完全に別物ですが、食べたかったとおりのすっぱい玉ねぎを山盛り食べることができて超満足!

▲ホタルイカと娘。ホタルイカは次女の大好物。細々とした下処理も全集中でやってくれます。食べたいものがあるときの集中力は私と一緒だなぁ。

何が食べたいか考えることは、自分自身と向き合う作業です。そして、それを料理することは、自分を表現することです。ずいぶん大それたことを言っているようですが、つまりは、毎日の献立を考えているあなたは素晴らしい!ということ!何気なくやっていることかもしれないけど、本当はとても哲学的で、クリエイティブで、あっぱれなことなのです。

……と、春休み、毎日子どもたちがあれ食べたいこれ食べたいと見事にバラバラなことを言ってくるのを、なんとか頑張ってまとめている私を、だれか褒めてくれないかなぁと思って、書いています(笑)。

♦PROFILE♦
和田明日香(わだ・あすか)
料理家。食育インストラクター。東京都出身。3児の母。料理愛好家・平野レミの次男と結婚後、修業を重ね、食育インストラクターの資格を取得。各メディアでのオリジナルレシピ紹介、企業へのレシピ提供など、料理家としての活動のほか、各地での講演会、コラム執筆、CM、ドラマ出演など、幅広く活動する。2018 年、ベストマザー賞を受賞。著書に『10年かかって地味ごはん。』(主婦の友社)『子どもは相棒 悩まない子育て』(ぴあ)『和田明日香のほったらかしレシピ・献立編』(辰巳出版)など。

 

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