電磁現象を音に変換する…ってのが、すでに宇宙。
NASA の磁気圏マルチスケール衛星が、約10 万km離れた宇宙で「コーラス波」と呼ばれる電磁現象を検知しました。コーラス波は、地球の磁力線に沿って伝わる電磁波のことで、音に変換すると小鳥のさえずりのような音色になります。
このコーラス波、名前は可愛らしいですが、実は結構な曲者。太陽嵐から地球を守る放射線帯に影響を与えるだけでなく、「キラー電子」と呼ばれる衛星や宇宙船に損傷を与える高エネルギー粒子を加速させることもあります。場合によっては電子機器を機能不全に陥らせることもあるんだとか。
コーラス波は、これまで地球周辺の双極磁場のある領域にしか存在しないと考えられていました。しかし今回、これまで想定されていたよりも3倍地球から離れた場所で観測されたことで、強い磁場を持つ天体の近くだけでなく、宇宙のどこでも発生する可能性があることがわかったのです。これは、これまでの宇宙科学をひっくり返す、画期的な発見です。
この発見により、より高度な宇宙天気監視システムが登場し、過酷な環境でも宇宙船を保護できるような耐放射線性電子機器の研究も進むことでしょう。そうなれば、たとえば火星や月への有人探査ミッションが安全に実行できるかもしれません。
また、これまで想定していなかった領域でのコーラス波を研究することで、衛星、GPS システム、通信ネットワークなど、地球のインフラへの影響もより正確に予測できるようになると考えられます。
今回観測された「小鳥のさえずり」は、単なる癒しサウンドではなく、これから先、火星や遠く離れた星への有人探査といった宇宙ミッションに大きく影響する可能性があります。
Source: Dailygalaxy
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