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地動説を知った17世紀の科学者たちが考える地球外生命体とは?

  • 2024年4月22日
  • Gizmodo Japan

地動説を知った17世紀の科学者たちが考える地球外生命体とは?
Illustration: NASA

昔の人の宇宙人観とは?

クイーンズランド大学の宗教思想史名誉教授であるPhilip C. Almond博士が執筆した記事をThe Conversationから転載しています。

私たち地球人はずっとずっと昔から地球外知的生命体について語り続けています。特に17世紀のヨーロッパでは、他の惑星に生命が存在するかどうかかなり活発な議論がされていたそうです。

地動説が宇宙人議論を加速

17世紀の地球外知的生命体の議論が起こったのは、これまで信じられていた「地球が宇宙の中心にあり、すべてが地球の周りを回っている」とするプトレマイオスの天動説から、太陽が中心にあり、地球を含むすべての惑星が太陽の周りを回っているというコペルニクスの地動説への移行の結果でした。

もし私たちの地球が太陽の周りを回る他の惑星や衛星と似たようなものだとすれば、その惑星も地球と同じようなものだと考えたわけです。そして、もし他の惑星が地球のようなものなら、おそらくそこに住む人たちも存在するはず、と。

ロバート・バートンが1621年の『憂鬱の解剖学』で述べた

もし地球が動くなら、それは惑星であり、月に輝き、月や他の惑星の住民に対しても。月や他の惑星が私たちに対してするのと同じように輝く。

という言葉はよく知られています。

17世紀の科学と神の存在は切り離せない関係

同様に、オランダの天文学者クリスティアーン・ホイヘンス(1629〜1695)も、コペルニクスの「太陽が中心」という考えにで、他の惑星にも生命が存在すると考えていました。

しかし、ホイヘンスはそうした推測は「神の完全性」の教説に基づいていました。つまり、神は全能で善良であるがゆえ、宇宙のあらゆる場所に物質を創造し、生物で全宇宙を満たす機会を逃さなかったという考えです。

ホイヘンスは1698年に出版した『The Celestial Worlds Discover’d 』の中で、私たちと同様に、他の惑星の住民も手や足を持ち、直立していると示唆しています。しかし、他の惑星、特に木星と土星はもっと大きいので、そこに住む人たちは私たち地球人より遥かに大きいかもしれませんよね。社会生活を送り、家に住み、音楽を奏で、神の業を熟考するなどしているかもしれません。

一方で、宇宙人がどんな風なのかを推測することに過剰に自信を持たない人たちも多かったようです。それでも、アイザック・ニュートンと並んで王立協会のメンバーでもあったジョゼフ・グランヴィルは1676年に、たとえ他の惑星の生命の詳細が分からなくとも、「月が住める場所であるという仮説や、実際に住民がいると考えることを否定するものではありません」と発言しています。

神の仕業

地球以外にも生命がいるかどうかという議論は、当時の近代科学が神の自然界における業というところに焦点を当てていたこともあり、結論には至らないままでした。これについては17世紀後半に地球外の世界について書かれた最も影響力のあった作品、コペルニクス主義者のベルナール・フォントネルの『世界の複数性についての対話』(1686年)で詳しく述べられているテーマです。

フォントネルによると、宇宙には無限の惑星と無限の居住可能な世界が存在しているとのこと。これはコペルニクス主義の結果として、地球と他の世界の性質の間に引かれた類推から導かれた答えだったようです。

しかしまた、万物の源泉である神の豊かさという考えの結果でもありました。フォントネルが宣言したように、「自然が作品の中で用いるべき無限の多様性」というアイデアがこの本を軸となっています。

アダムの子孫

しかし重大な問題がありました。もし月や惑星に知的生命体がいるとしたら、その生命体は「人間」なのでしょうか? そして、もし人間なら地球人のようにイエス・キリストの業によって救済されたということでしょうか?

17世紀の新しい科学の創始者の一人、ジョン・ウィルキンス(1614〜1672)は、コペルニクスの宇宙の神学的含意と格闘した人です。ウィルキンスは月に住民がいると確信していましたが、月の住民が「アダムの子孫」かどうかについては全く確信が持てないようでした。

Illustration: Wikimedia

わからないことを解決する簡単な方法はコレ

ウィルキンスの解決策は単純で、月の住民たちの人間性を否定することでした。1638年に出版した『The Discovery of a World in the Moone 』の中で、月の住民たちは

私たち人間と同じではなく、私たちの性質にある種の割合と類似性を持つ別の種類の生物である。

と書いています。

結局、フォントネルもこの解決策で落ち着いています。月にアダムの子孫ではない人間が住んでいたとしたら、それは「神学的に大きな困惑を引き起こすだろう」とは宣言。フォントネルは、「おそらく人間ではない」住民の存在を主張したかっただけだと書いています。

人間そっくりの宇宙人の存在は、イエス・キリストの生涯、死、そして復活による全人類の救済というキリスト教の物語の信憑性を脅かす可能性があったのです。

なので、宇宙人の人間性を否定することが簡単な解決策だったというわけです。このように、宇宙人が私たちと違うという現代の考え方は、神学的な問題への解決策として生まれたのです。地球外に住む生命は文字通り、そして比喩的にも「エイリアン(異人)」で落ち着きました。こうして、エイリアンは脅威的であり、恐れられる存在となったのです。

神の産物?

この現代で私たちは、宇宙が神の全能による産物である考える世界にはもう住んでいません。また、私たちの惑星が宇宙の中心であると見なすこともできません。そのため、逆説的にも私たち自身が自分自身に対する「エイリアン」になってしまったのです。現代の「疎外感」とは、神のいない広大な宇宙の中で迷子になり、見捨てられた感覚のことなのです。

近世17世紀において宇宙人は、地球人にとって脅威とは見なされていませんでした。結局のところ、たとえ彼らが「人間」ではなくとも、神の業の産物だと見なされていたからです。

しかし現代においては、宇宙人は意味や目的のない世界における私たち個人の意味を脅かす存在を体現し、表出化する存在となっています。私たち自身の疎外感の投影として、宇宙人は私たち人間を魅了し続けると同時に、恐怖の対象になったのです。

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