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サンゴ礁を守りし海の掃除屋。わが名はナマコ

  • 2024年3月14日
  • Gizmodo Japan

サンゴ礁を守りし海の掃除屋。わが名はナマコ
Image: Shutterstock

見た目で判断しちゃダメ。

海洋面積の1%にも満たないのに、海洋生物の25%が一生のうちに何らかの形で関わるといわれているサンゴ。気候変動による海洋温暖化や、人間活動に起因する海洋堆積物などによって、白化や死滅の大ピンチを迎えています。

今回、Nature Communicationsに掲載されたジョージア工科大学の研究者らによる論文で、サンゴの健康維持に重要なパートナーが明らかになりました。その意外な救世主は、なんとナマコです。

サンゴの健康の秘訣はお掃除

ナマコは「海の掃除屋」と呼ばれる底生生物で、海底の堆積物を食べ、バクテリアや汚染された有機物を消化し、キレイになった健康な堆積物を海に戻します。ナマコはサンゴや生態系の健康維持にかなり貢献しているんです。

研究結果によると、ナマコはこれと同じ作業をサンゴの表面でも行なって、サンゴの健康を損ねる有機物を取り込んで掃除しているそう。堆積物が原因で起こるサンゴの病気を、ナマコが予防してあげているというわけです。

ナマコがいないとサンゴが死ぬ確率は15倍

長年サンゴの再生に携わり、これまでに1万以上のサンゴを植え付けてきた論文の筆頭執筆者であるCody Clements氏は、フランス領ポリネシアの島でサンゴを植えている際、周辺にたくさんいたナマコを一掃しました。すると、サンゴが枯れ始めたのだそうです。

それまでほとんど植えたサンゴを枯らさなかったClements氏は、何かあるに違いないと確信。サンゴの周りにナマコがいるのといないのとで、どんな違いがあるのかを調べることにしました。

そこで海にナマコがいる区画といない区画を作り、サンゴの健康状態を毎日観察したところ、ナマコがいない区画のサンゴは、根元の方に発生した白い帯のようなものがだんだん上へと広がり、死滅するサンゴもありました。

ナマコがいる方の区画のサンゴでは、いない区画よりも病気の広がりは見られませんでした。調査の結果、ナマコがいない区画のサンゴは、いる区画と比較して15倍も死滅しやすかったそうです。

太平洋のアメリカ領パルミラ環礁で、違う種のナマコを用いて同じ実験を行なったところ、同様の結果が得られたとのことです。

乱獲による個体数の減少

研究者らは、ナマコが食用として乱獲される以前は、サンゴと海の生態系は今よりもっと健康だったのではないかと推測しています。人間はサンゴを乱獲し、害となる有機物を海に流入させてサンゴを病気にさせてきました。そしてそこに乱獲が加わるワンツーパンチで、ナマコの死滅が進んだのです。

ナマコは密度が高くないと繁殖できませんが、研究で使われたのは、運がいいことに食用にされているナマコではありませんでした。そこに希望があるといいます。

食用にされない、乱獲されないナマコなら、人間の手を加えなくても繁殖が進む程度まで養殖してサンゴ周辺に放てば、自然の力でサンゴ周辺の生態系を健康な状態に保てるようになると研究者は考えています。

あとはどの種のナマコが最も効率よくサンゴの健康を維持できるのかを調べて、ナマコにおまかせすればいい感じですね。

温暖化とサンゴ病を生き延びるために

IPCCの特別報告書によると、産業革命前と比較して気温が1.5度上昇すれば70%から90%、2度上昇だと99%のサンゴが死滅するといわれています。

温暖化を生き延びた先に待っているのが、病気による死滅では悲しすぎます。サンゴと海にとってのルンバのような働きをしてくれるナマコを守って、大活躍してもらいましょう。

パンチ力だけじゃないぞ! シャコが凄腕のハンターである理由 寿司ネタとしてもおなじみ、シャコを含む「シャコ目」。そのパンチの威力は、みなさんも耳にしたことがあるでしょう。彼らはパンチ力だけでなく、素晴らしい目を持った恐るべきハンターなのです。 https://www.gizmodo.jp/2023/10/mantis-shrimp-eyes-punch-1.html

Reference: Georgia Tech University, Crements et al. 2024 / Nature Communications, Georgia Tech Research / YouTube, IPCC

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