ゲームタイトルは、最近ではダウンロードやインストールによるデジタルデータでの購入が主流となり、物理ディスク自体が過去のものとなりつつあります。
PCソフトウェアの専門店などのドアを叩けば、百科事典ほどのサイズのPCゲームのパッケージと梱包箱が見つかります。ビデオゲーム業界の成長期には、コンピューター関連ショップには当時の最先端グラフィックデザインで飾られた箱の横に、ジップロップの袋に入れられたシェアウェアゲームが並んでいました。
その時代の一部のデザイナーは、大きな箱を目を引くような立体のオブジェに作り変えるような芸術表現もしていました。そんな縁の下の力持ち的なデザイナーの1人がHock Wah Yeo氏です。
マニアックなゲームやソフトウェアについて掲載しているThe Obscurityは、2021年にYeo氏のキャリアについて詳しく調べた記事を出しました。
Yeo氏は上記のような時代より少し前に、当時のパートナーだったValerie Wong氏とともにデザインスタジオを立ち上げています。そのときにYeo氏はゲーム業界に注目をし始めたとのことです。Yeo氏は複数のゲームタイトルのデザインの制作を発表し、ゲームパブリッシャーも次第にYeo氏の作品に注目していったといいます。
そんななかPCゲームメーカーのBroderbundは、『Prince of Persia』という後に多くの続編が作られるタイトルの1作目の再リリース時に、新たなパッケージの制作を彼の手に委ねました。記事トップの画像の作品がそれです。すでに単なる直方体ではないこのデザインによって、ゲームの売上は3倍になったといいます。その後Yeo氏のデザインは、さらに個性的なデザインへと変わっていきます。
Yeo氏はThe Obscruityに対し、「誰かに何かを売りたいと思ったら、その人の手に渡らなければならないのです」と語っています。仮にそれが最高のゲームだとしても、手にとる興味が湧かなければ何も始まらないというYeo氏のデザイン哲学が垣間見える言葉ですね。偏在するレビューやマーケティングや広告のシステムが現在のようにはなかった時代には、お客さんはパッケージからそれがどんなものかを判断していたわけです。それがスペシャルな何かで、手にとりたくなるというデザインは、とても重要だったということですね。
Yeo氏とWong氏のデザインスタジオの名前は、当時としては珍しく箱の裏側にクレジットされていたといいます。Yeo氏が生み出すデザインは、それほどユニークなものであったことを示しているといえますね。
さて、Yeo氏はその後PCゲームの隆盛の中で活躍し、その後新たなYeo Designを立ち上げ、ウェブデザインとブランディングへと移行しました。Yeo氏のキャリアやそれぞれのデザインのさらなる詳細を知りたい方は、The Obscurityで読むことができます。Yeo氏が生み出した古き良きPCゲームパッケージデザインの数々は、以下より紹介していきますのでご覧ください。
第二次世界大戦下を舞台とした潜水艦シミュレーションゲーム『Wolfpack』。発売当時は同じジャンルのゲームである『Silent Service 2』に遅れをとったそうですが、このグラフィックデザインは高い評価を得たといいます。
『Wolfpack』はClassic Reloadでウェブブラウザからプレイできますよ。
戦闘機シミュレーションゲームの『Jetfighter: The Adventure』。Yeo氏がパッケージデザインを自由な発想で制作した最初のゲームです。アーケードアクションとシミュレーションを混ぜたコンセプトで作られました。パッケージの裏側にはジェット機の翼のようなフラップがあります。
『Jetfighter』はウェブブラウザからプレイできます。
爆発的ヒットというわけではありませんが、『JetFighter』は多くの続編がリリースされました。2作目となる『Jetfighter II: Advanced Tactical Fighter』は、より高度で戦術的なゲームになりました。
パッケージは立体要素が加わり、V字の出っ張ったデザインの中央にジェット機が映るものでした。
『Jetfighter II』はこちらからプレイが可能です。
ポイント&クリック型アドベンチャーゲームの『Gabriel Knight: Sins of the Fathers』。名作として知られるこの作品は、ビデオゲームにおけるストーリーテリングを進歩させたとして愛されています。
いびつな四角形と三角形が組み合わさったようなパッケージ、印象に残るグラフィックは恐怖を感じさせるに十分なデザインでした。
『Gabriel Knight』はPlay CLASSIC games onlineでプレイできます。
3D戦車シューティングゲームの『Spectre』。3Dグラフィックス初期に流行となりました。
シンプルでありながらほかのものと雰囲気の違うこのパッケージは、SF的な鋭い形状とピラミッドのような突起が重なったものになっています。ゲームのフラットなポリゴングラフィックを基にして作られたそうです。
『Spectre』はこちらからプレイできますよ。
小売業者はオリジナルのSpectreのパッケージデザインに満足できなかったといいます。それは前面に突き出た三角形が原因でした。
2作目の『Spectre Supreme』では、ピラミッド的なシルエットを維持したSF感のあるデザインながら、ショップの棚に並べやすくなったのです。
My AbandonwareからMac版をダウンロードできますよ。
翌年1994年には3作目の『Spectre VR』が発売されます。
1990年代には何かにつけて「VR」という言葉を使用し、テック感を出す時期があったそうです。『Spectre VR』は、今の私たちが思い浮かべる仮想現実ではなく、オンライン対戦やマルチプレイ機能を意味するものとして名付けられたそうです。
パッケージは2作目を基にグラフィックが変更されたようなデザインになりました。
こちらもウェブブラウザでプレイが可能です。
冷戦時代を舞台にした戦車シミュレーションゲームの『Armored Fist』。
これまでに比べると標準的なボックスデザインながら、箱自体が戦車のようにも見えるようなデザインです。開発元のNovalogicとYeo氏は、実験的なデザインを作ることにおいて十分な信頼があったといいます。
『Armored Fist』はウェブブラウザでプレイができます。
実写映像を利用したインタラクティブフィルムアドベンチャーゲーム『Double Switch』は、2018年に25周年記念としてNintendo Switchでもリリースされました。
パッケージデザインはSpectreやArmored Fistとも似ていますが、前面中央の鍵穴の後ろに人物の描かれた紙を配置することで覗き込んでいるような奥行きの立体感を演出しています。
『Double Switch』はこちらから購入ができます。
こちらは教育用のアートソフトウェアの『Flying Colors』。
グラフィック要素は少し古い感じもしますが、このパッケージデザインは古びてはいないように思えます。
ひし形が3つ並べられたような構造は、それぞれをスライドすることで変形し、縦にも置けるようになります。真ん中だけをずらして下の画像のようにもできて、アートソフトウェアにあったパズル的造形が素晴らしいです。
『Flying Colors』はこちらからダウンロードができますよ。
Photo: Hock Wah Yeo冒頭でも紹介した『Prince of Persia』です。
Yeo氏とWong氏のデザインスタジオの名を世界に知らしめた記念碑的なパッケージデザインといえます。再リリースの1992年に使われたパッケージです。
台形が組み合わさった構造と針の上を飛び越える主人公のグラフィックが印象的なこのパッケージを制作した後、多くのパブリッシャーがYeo氏に同様のパッケージのデザインを依頼しに来たといいます。
『Prince of Persia』はウェブブラウザでプレイができます。
1作目の成功によって、続編となる『Prince of Persia 2: The Shadow and the Flame』のデザインにも当然Yeo氏が抜擢されました。
こちらは前作のパッケージ構造を上下逆さにしたようなもので、主人公のシルエットと燃えさかる炎のグラフィックが印象的です。ゲーム自体も1作目から改善され、当時大きく評価されたといいます。
『Prince of Persia 2』はこちらからプレイ可能です。
上記のDouble Switchと同様に実写映像を用いたインタラクティブフィルムで、一人称視点の格闘ゲームの『Supreme Warrior』。
こちらはプラスティックの透明な箱の中に、逆さの三角形が入ったような構造で、性質の違う2つの箱によりセミ3D的なコンセプトのデザインになりました。
『Supreme Warrior』はウェブブラウザでプレイができます。
ロボット探査機を操作して不気味な宇宙船を探索するホーラーゲーム『Iron Helix』。
パッケージはそれ自体がゲームコンソールのようになっていて、さらに外側の箱を外すとデバイスの内部がむき出しになるようなデザインになっています。
『Iron Helix』はウェブブラウザでプレイが可能です。
終末的世界をモチーフとした一人称シューティングゲーム『Havoc』。
今回紹介したなかで一番衝撃的で、時代を先取りしすぎたともいえるようなデザインです。まず、このパッケージは卵の箱として使われる素材でできていて、さらにそれらはリサイクル素材とのこと。ユニークな触感と確かな立体感を持ったデザイン、さらに真ん中に窓が置かれることで焼却炉のようにも思えます。この燃えるように映る画像はこれ自体が紙のCDスリーブになっていたそうです。
『Havoc』はMac版がこちらからダウンロードできます。
所有欲を刺激される、レトロ携帯ゲーム機。デザインのクオリティ高すぎ これこそガジェットな楽しみ方よ。中華のゲーム機メーカーGAME KIDDYから、新しい携帯ゲーム機「GKD PIXEL」が登場。手のひらサイズのゲーム機が好きな人にはかなり刺さりそうなブツですよ、コレ。所有欲に訴えてくるデザイン レトロな2.4インチQVGA液晶に、十字キーと4ボタン。往年の携帯ゲーム機を思わせるデザインながら、128MBのRAMとSoCにIngenic X1830を備えています https://www.gizmodo.jp/2024/01/gkd-pixel-retro-game-console.html