Photo: 武者良太
[解答例]XRを研究したい、一発当てたいエンジニアか好事家なら買ってよし。アプリが出揃っていない初物デバイスってみんなそうだと思うけど。
日本での発売はまだまだ先(というか未定)のアップル「Vision Pro」ですが、体験した人の一部からは「将来はコレがスタンダードなデバイスになる」といった趣旨の発言が飛び出ています。そう言われると気になるじゃない。欲しくなるじゃない。でも何をもってして標準的なデバイスといえるのだろうか。そもそも2024年の現時点で購入して良いデバイスなんだろうか。
悩みがたまってきたこの一ヶ月間。XRアプリを開発しているMESONさんや個人輸入をした友人にご協力いただいて、何度かVision Proを体験してきました。さあて、どんな価値があるか、どんな使い方だと満足できそうかを探っていきましょう。
Vision Proを語る上で欠かせないのが価格です。日本円にして50万円を超える3,500ドルというプライスに恐れる気持ちが湧き出てきます。
高級品として見てみましょう。外観の作りはとっても良い。従来のXRヘッドセットは高価なB2Bのモノでも洗練されていないものばかりで、コンテンツや体験以外に所有欲を満たしにくかったけど、Vision Proは大型大発熱チップx2枚のヒートシンク代わりとなるゴーグル部のアルミフレームが、それとは感じさせずに自然と収まっています。群を抜いていますね。
Photo: 武者良太後頭部を広く包んで支えてくれるヘッドバンドや、締付け構造もお見事といえるもの。VR FPSゲームのように、アタマをぶんぶんと振り回すような使い方をするのでなければ、頭頂部のバンドがなくてもまあまあ行けそうだと感じます。
Mac ProやAirPods Maxにも感じたことなのですが、性能だけではなく外観も高級なモノを作らせるとアップルは本当にお上手だなという印象を持ちますね。
同じくAirPods Maxでも感じたことだけど、重い。かなりのフロントヘビー。Quest 3など従来のXRヘッドセットに慣れていると、最初は「ちょっと重いくらいかもな」で済むけど、ヘッドレストつきリクライニングチェアに座っているのでなければ映画1本見るのもちょっと厳しいかも、って感じています。
増量したアタマの重さを支えられる首の太さがあれば別だと思うので、重さに関しては体験したユーザーごとに印象が大きく変わるポイントでしょう。しかしアップルが世に出したVision Proのデモビデオ、つまりはアップルのいう空間コンピューティングの聖書を見るに、Vision Proは日常の生活で使えるXRヘッドセットという見せ方をしていました...。えー。体格よくてもこの使い方は厳しくないかな。
充実の重みあるヘッドセットにくわえ、外部バッテリーをポケットにいれて家の中を歩いてVision Proを使うというシチュエーションは、ちょっと想像つきにくい。調理中にハンズフリーでレシピ見るなら、ケーブルはあれど軽量なARグラスを使いたくなるでしょうね。
そんな切ない思いをいだきながら使っていくと、あれ、超大型のモバイルディスプレイとしてはアリよりのアリすぎる存在だと感じてきました。デカいモニターって現実でも仮想でもやっぱり正義じゃないですか。しかもVision Proは解像感がかなり良い。ウィンドウ内にある細かな文字が読みやすいから、ストレスを感じない。iFixitの調べによればPPDは34。個人でも購入できるXRヘッドセット界のなかではトップクラスに位置します。良いじゃん。
Photo: 武者良太パネルのドットの存在は感じず、VRの仮想空間はリアリティがあるし、MRビューも色味が自然で馴染みやすい。スカッと抜けているように見えるあたり、高級モニターのようなクオリティがあると感じてきます。
32インチで72万8480円〜のPro Display XDRの正確性には及ばないでしょう。でも100インチ級の4Kテレビ(100万円前後)や、昼間でも使える4Kの高輝度短焦点プロジェクター(70万円以上+スクリーン代)と比べると、一人でしか使えないけど持ち運べるVision Proの魅力のほうが勝ります。
Macの外部ディスプレイとして使うと1画面しか出せないって? それがもう、出てきてるんですよねフリーウェアでデュアルディスプレイが出せるVision Proアプリが。現状はフルHDのみだけど今後は他の解像度にも対応するっていうし、期待してよさそう。
今回ご協力いただいた株式会社MESONは、Vision Pro用のお天気アプリ「SunnyTune」をリリースしています。これが想像以上に面白い。カンタンに記せばスマホのホーム画面に置くウィジェットのようなものですが、MR空間のなかにインテリア感覚で置けるのはまったくもって新しい。自分の部屋にテックな雑貨を飾るかのごとく、自由にレイアウトできるのですから。
「SunnyTune」は指定した地域の天候を3D&サウンドで確認できるものですが、便利で楽しい仮想テック雑貨はほかにもどんどんとVision Pro用にリリースされていくんじゃないかな。
他のアプリも見てみました。アナログタンテ&ミキサーの操作感を模したDJアプリの「djay」はちょっと残念。僕がパイオニアのDJコントローラに慣れているからでもあるんだけど、Quest用のTribe XRを超える体験ではなかったなーと。
世界各国の空港と航空機の離発着状況をXRで見ることができる「ForeFlight Voyager」は、時間溶けますね! Nゲージの鉄道模型を見ているかのように、ミニチュアの機械とジオラマの様子を全方位どこからでも見られる幸せたるや最高すぎ。
プリインストールされている恐竜動画の「Encounter Dinosaurus」は、XR映像エンタメのベンチマークになりそう。こっちのアイトラッキング情報を見ているのかな。手をだしたり見ている位置を変えるとチョウチョが停まる位置が変わったり、恐竜がずっとこっちを見てきてくれる。この機能性能を使ったリアルタイプ猫カフェアプリはまだですか!
Vision Proの空間コンピューティングとはなんたるかを理解できるアプリはまだまだ少ないものの、これからでてくるアプリを含めて期待していいんじゃないかな。
僕らが今までに体験してきたアイトラッキングUIって、キヤノンEOSの視線入力くらいじゃないかなって思うんです。全能感が湧き湧きしてくるじゃないですかEOS R3の視線入力AFって。僕らはもうジョイスティックを使う必要がないんだー! って。
キーボードもマウスもハンドコントローラもないVision Proは、主に視線で操作する世界初?のモバイルPCとなるわけですが、そのUIは操作しているだけでワクワクしてくる。目で見て選択。親指と人差し指でタップして入力。昔に見たSF映画のような世界が現実にきているわけで、そりゃハートがフルフルに震えますよ。
同時にキーボード、マウス、ハンドコントローラの良さにも気がつきます。現世にとってはまだまだ大事でレガシーにはできません。
だからこそ、アップルがアイトラッキング&ハンドトラッキングでどういう操作方式を組み上げていくのかが気になる。試行錯誤はあるでしょう。右往左往もあるでしょう。でも2024年の段階でVision Proを体験しておいたほうが、将来のコンピュータの操作方法を予想しやすくなるでしょう。
オールマイティに使えるデバイスではないけど、利用を限定するならば価値がある。そんな立場にありますねVision Proは。今から急いでアメリカ版を購入する必要はないと思うけど、真新しいモノを体験したい方は日本での発売を待って手に入れてもいいかも。
でもいつ発売されるんだろう。WWDCの頃かしらん?
Apple Vision ProとMeta Quest 3、いま買うべきXRヘッドセットはどっち? [解答例]5年先をひとつまみしたいならVision Pro。今のXR道をいっしょに歩きたいならQuest 3でしょうか。かたや50万円を超えるアップルの「Vision Pro」。もう1つは7万4800円から買えるMetaの「Quest 3」。価格が大幅に違う2台ですが、どちらも2024年を代表するXRヘッドセットとなるでしょう。さあ、どっちを買ったほうが楽しい2024年を過ごせるでしょうか。極力 https://www.gizmodo.jp/2024/03/which-vision-pro-quest-3.htmlSource: アップル
取材・撮影協力: MESON