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映画監督・足立紳、娘の恋バナにモヤり、息子との帰省に涙する8月

  • 2023年9月21日
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「足立 紳 後ろ向きで進む」第41回

 

結婚21年。妻には殴られ罵られ、ふたりの子どもたちに翻弄され、他人の成功に嫉妬する日々——それでも、夫として父として男として生きていかねばならない!

 

『百円の恋』で日本アカデミー賞最優秀脚本賞、『喜劇 愛妻物語』で東京国際映画祭最優秀脚本賞を受賞。2023年のNHKの連続テレビ小説『ブギウギ』の脚本も担当。いま、監督・脚本家として大注目の足立 紳の哀しくもおかしい日常。

 

【過去の日記はコチラ】

 

 

8月1日(火)

午前中、いつもの喫茶店で仕事。午後『イノセンツ』(監督:エスキル・フォクト)を鑑賞。今年ナンバー1だ。自作を含めて今年は子どもの映画が多い気がしているのだが、その中でもっとも子どものリアルが描かれているような気がした。子どもって不思議な力も持っていたりする。後半はなんだか超能力の戦いみたいになってしまい、私は乗れなかったのだが、そこまではとにかく目が離せない。私も子どもの不思議な力というものを、日常生活を描いた作品の中に取り込んでみたいのだが、なかなか形にできていない。だが、とにかく大いに刺激を受けた。

 

8月2日(水)

午前中、いつもの喫茶店で仕事。夕方、下北沢で演劇の打ち合わせ。無事にできるだろうか。まだ予断を許さない。台本は1ページもないし、内容も何も決まっていない。だが3年前にコロナで中止になってしまったので、今回は何としてもやりたい。

 

8月4日(金)

朝から仕事。夜、とある劇団のお芝居を観に行ったのだが、まったくの意味不明。

 

こういうときに劇団名や、映画なら作品名など書いたほうが面白いし、他人の文章にはそれを求めるくせに自分にはできない……。

 

8月5日(土)

息子、長野の山村留学から元気に帰宅。バスから降りてきた息子は大変いい顔をしていた。友達もできた様子で別れを惜しんでいた。が、帰路の電車内で山村での生活を色々聞いても「別に」「特に」と何も話さない。最後に配られた班ごとの写真もチラッと見るだけ。班写真に写っている子の名前を聞いても、面倒くさがって話してくれない……残念だ。なんでこんなに話してくれないのか……。照れ臭いのかなんなのかよく分からない。毎年キャンプから戻ってきたときはこうだ。

 

で、このキャンプの趣旨は「子どもたちからたっぷり話を聞いてください!」なので、主催側からは「こんな様子でした!」という報告は一切ない。毎年、息子がどんなふうに過ごしているのかまったく分からない。だったら事細かに様子を教えてくれる別のキャンプに変えればいいのだが、費用の問題もある……。

 

ゲームの話ならエンドレスなのだが……もっと聞きたかったなぁ、キャンプのこと。ゲームには勝てないな。

 

8月6日(日)

息子と妻、キャンプから戻ったばかりだが、保育園友達と母同士で西武園のプールに1泊2日の小旅行。

 

夜、娘と近所のイタリアンレストランでここぞとばかりに散財しまくる。食欲旺盛な高校生娘と高校生並みの食欲の50親父で食い散らかしながら、娘の恋バナを聞く。それにしても……人の恋バナって自分の娘のだとしても本当に面白くない……。が、話しているほうはめちゃくちゃ楽しそうなのだ。別れ話とかなら楽しいのだが、恋が充実している話って聞いててぜんぜん楽しくない。娘の場合は恋が充実しているわけでもなく、好きな人と目が合ったとかなんとかそんな話だから余計にだ。「もうその話、つまらなさすぎて苦痛だ」と言うと「ダルッ。親失格」とのこと。

 

8月9日(火)

本日から息子と私の実家の鳥取へ。3年振りの帰省だ。

 

娘は部活があるとのことで妻とお留守番。飛行機事故の映画を観てから頑なに飛行機に乗りたがらなかった息子だが、ゲームとマンガで釣ってなんとか乗せられた。ちなみに、私も飛行機は大の苦手。墜落するんじゃないかととても不安になる。

 

昼過ぎ、岡山空港まで父親に車で迎えに来てもらう。鳥取空港よりもだいぶ安いから岡山にするのだが、そろそろ父親に長距離を運転して迎えに来てもらうのはまずいな。

 

鳥取に向かう途中のラーメン屋に寄る。山間のラーメン屋さんなのだが、美味しいのだ。息子、人生初のインベーダーゲームにはまる。(店内にあった)

 

 

15時過ぎ、私の実家の倉吉に到着。庭の木に、なんの鳥かは知らないが、巣を作っていた。かわいい……。

 

夕方、近場の海に爺さん婆さんと行く。はしゃぐ息子に私の父もはしゃぎ、波に足をとられ、海にさらわれそうになっていた。怖かった……。

 

 

8月10日(木)

車の免許のない私は父に車を運転してもらい、朝から息子を青山剛昌記念館に連れて行き、そのあとはプールに連れて行く。午後からは市長さんにお会いしたりして、夜は高校の同級生と飲み会。バカ話に花が咲き乱れ、とても楽しかった。

 

8月11日(金)

私が日本一美しいと思っている浦富海岸に行く。鳥取の海の中でも息子の大好きな海水浴場だ。息子はとにかく海が好きなので、将来は漁師とか海女さんになるのもいいのではないかと思う。

 

父と母は浜の木陰にいたが、それでも80歳間近の年齢にはこたえる暑さだっただろう。ランチに海辺の美味しいイタリアンをご馳走したがまったく親不孝者であると思う。やはり車の免許が必要だ。

 

 

8月12日(土)

午前中、高校時代の友人のやっているコワーキングスペースにてオンライン会議。息子は友人の息子と同級生なので、2人で遊ばせる。3年振りの再会だが、小学5年生にとっての3年振りなど初対面に近い。

 

会議後、私と友人と息子たちの4人で海に行く。息子たちはあっという間に仲良しになり、小アジを死ぬほどつかまえていた。

夜、友人宅でそのアジを素揚げにして食ったのだが、大変美味しかった。息子はそのまま友人宅に泊まった。こうして田舎に友達ができる姿を見ているとグッとくるものはあるのだが、初対面に近い友達に息子のハチャメチャマイペースぶりが発揮されないかとハラハラしながらも、私は友人とともに、この日も高校時代の友人が集まり飲み会で深夜まで。

 

8月13日(日)

朝、息子を迎えに行き、そのまま父の運転で境港の水木しげるロードに行く。息子とお化け屋敷のようなものに入ったあと、ロードにあるほぼすべての店に息子が入店したいと言うので付き合う。鬼太郎のマンガと、砂でできた子泣きジジイの人形とお面を買う。

 

暑さで車の中に避難していた両親と合流して、せっかく境港に来ているので海鮮丼を食った。

 

 

8月14日(月)

午前中、オンライン会議。午後、友人と友人の息子と私の息子とで滝に行く。なかなかお目にかかれない遊び場に、私の息子は始終興奮して遊んでいた。

 

友人の息子はとても穏やかな子で、私の息子のようなタイプを柔軟に受け入れて遊んでくれるのでとても助かった。そして私の息子は楽しさや嬉しさを全身で表現するので、そんなところも友人の息子は気に入ってくれたのかもしれない。

 

夕飯は友人宅で食べる。息子は「こんな美味いもの、食ったことがねえ!」とがっつきながら、この日も友人宅に泊まった。

 

8月15日(火)

明日の朝、帰京するので、実質この日が最後の鳥取だというのに台風直撃。庭の小鳥たちが吹き飛ばされてしまって、庭のどこかで1匹だけずっとピーピー鳴いていて、その鳴き声を聞いているのも辛かった。母鳥も必死に鳴きながら小鳥を探している。

 

室内プールも閉まってしまったので、友人宅で昼過ぎまで遊んで帰宅した。この日がお別れの息子たちはとても寂しそうであった。その気持ちはよく分かる。私も幼少のころは母の実家のある熊本に夏休み中行っていたが、そこでできた友達と別れるのが寂しくてたまらなかった。

 

夕方、家に戻ると、鳥たちの鳴き声は消えていた。もちろん姿も見えぬまま……。

 

夜、息子は友人の息子とLINE電話をして、眠たくなるまでしゃべっていた。息子にとってこの夏の帰省は良い経験になっただろう。

 

8月16日(水)

朝、6時半に家を出たのだが、友人と友人の息子が見送りに来てくれた。どうしても見送りたいと友人の息子が言ったらしい。私の息子はとてつもなくうれしそうだった。

 

見送りたいと言ってくれた友人の息子にも、わずか数日の関係だったからスーパーマイペース振りを我慢してもらえただけかもしれないが、他人から見送りたいと思ってもらえた息子にも、私は泣きそうになってしまった。

 

私の父親の車に乗り、とうとうお別れ。息子は車の窓から顔を出して、ありったけの大声で「バイバーイ!」と何度も何度も叫んだ。それはまるでホウ・シャオシェンの映画の1シーンのようで(そんな場面があったのかどうかは知らないが)、かなりヤバかった。私の胸はいっぱいになってしまい、涙がちょちょぎれた。友達が見えなくなると息子は空港に着くまで、1時間ずっと無言だった。

 

夜、東京に戻った息子はさっそく友人の息子とLINE電話。この辺が現代は風情がない。次に会えるのがいつになるのか分からない関係性はもう現代では無理だ。直接ではなくとも、こうしてすぐに顔を付き合わせて話すことができてしまう。

 

それにしても今回の帰省は仕事に遊びに51歳の肉体には非常にきついものだった……。楽しかったけど。

 

8月19日(土)

部活(ハンドボール)の試合で6時出発の娘のために5時過ぎに起きて弁当を作る。7時に妻と私も家を出て、試合を観に行く。しかし朝からもう酷暑。

 

今日はリーグ戦で2試合ある。2試合とも勝てば来週の決勝トーナメントにすすめるとのこと。1試合目は9時開始で、スタメンは全員2年生。娘たち1年生はベンチ。試合は一進一退の攻防。1点差でからくも勝利。娘たち1年生に出番はなかった。

 

2試合目が悲劇の13時開始ということで、妻とアイスクリームを食べに行き、近くにあった古着屋で実物大のドクロの貯金箱を買うなどして時間をつぶしてから会場に戻る。

 

2試合目は序盤から大量リードをうばい楽な展開。10点差くらいついているのだから1年生も出せよと思いながらイライラして観ていたら、試合終了5分ほど前から1年生たちにチェンジ。ゴールキーパーの娘も出て来たが、わずか5分で2点取られてしまった。やはり2年生のキーパーの子と比べるとだいぶ素人くさい。なのに試合後、「私がキーパーになってから、相手が急にコースに決めてくるようになった」とビッグマウスをのたまっていたのでビビった。

 

めでたく来週の決勝トーナメントに進出を果たしたが、おそらく1年生の出番はないだろう。それにしてもハンドの試合というのは室内でやるものと思っていたが、高校生レベルだと外もあり得るのだな。ぶつかって倒れたりする場面もかなりあったが、硬い土の校庭で女の子にはざぞ痛かろう。

 

その後、男子の試合も始まったが、女子のあとに見ると、男子の試合は尋常でない迫力。高くジャンプしてシュートを投げ込む姿はかなりカッコ良かった。

 

それにしても選手も暑いだろうが、50過ぎの肉体にはこたえる炎天下だった。帰宅してシャワーを浴びて仕事。

 

8月20日(日)

朝からいつもの喫茶店で仕事。娘は部活。昼から息子と妻と『ブギーマン』(ロブ・サヴェージ)を観に行く。息子、ホラー映画は好きなくせに、聴覚過敏で劇場では耳を押さえ、目も半目で鑑賞。トイレに2回も行く。

 

 

夕方、妻が娘を祖父母宅に送り、息子をママ友宅に預けたのち(娘は明日から祖父母と飛騨へ、息子は明日から塾のメンバーと飯能へサマーキャンプに行く)、私と妻は21時に新宿のバスタへ。

 

明日、京都みなみ会館で『こどもしょくどう』と『雑魚どもよ、大志を抱け!』の上映&舞台挨拶があるため、深夜バスで京都へ向かうのだ。

 

妻に「一緒に行こうよ」、と誘ったところ、赤字になるからバスじゃなきゃ行かない、とのことで、泣く泣く苦手な深夜バスにしたのだが、私としてはせっかく京都に行く機会であるし、久しぶりに妻と2人でゆっくりしたかったのだが、妻からすると「せっかく娘と息子とあんたがいないという奇跡の時間を、あんたの京都行きに付き合ってやるのだから、行くなら深夜バスだ」ということなのだ。

 

私はバスが嫌いなのだ。酔う。でもまあ、妻と一緒ならと渋々深夜バスの条件を飲んだ。おしゃべりしていれば酔わないだろうと思ったのだが、乗車した瞬間に、妻はのび太のように寝てしまった。

 

私は眠れず1人悶々。深夜の二度のサービスエリアも降車した。当然お店はやっていなかったので、夜空を見上げるにとどめざる得ず。

 

8月21日(月)

5時10分、京都駅着。この後は舞台挨拶の時間までスーパー銭湯に行く予定なのだが、そっち方面に行く電車が6時過ぎまでない。私はタクシーでさっさと移動したかったが、当然妻は却下。電車の時間まで喫茶店に入ろうと言うが、こんな時間にやっている喫茶店などあるわけがない。

 

どうせ口を開けば怒られるので、黙っていたら「拗ねられたらあたしの心と身体がもたないから、タクシーで行ってやるよ」とタクシーでスーパー銭湯へ移動。

 

※妻より

いやいや、全然黙ってなかったでしょ。「時間がもったいない、早く風呂に入りたい!」と叫びまくって暴れていたでしょうが。

 

ホテル京都エミナースという、ホテルとスーパー銭湯が合体したようなところへ行ったのだが最高だった。妻のタガも壊れてしまったのか、朝食ブッフェとマッサージも付けてしまい、バスで来た意味はゼロに。

 

※妻より

東京から一人6300円の3列シートのバスで行ったのに、京都市内15分のタクシーで5000円超え。しかも朝食ビュッフェとマッサージ付けてしまい計2万3000円也。普通に新幹線で行ったほうが安かったという、節約した意味が全くないプランでした。

 

14時スーパー銭湯を出て、京都みなみ会館へ向かう。

 

みなみ会館に伺うのは『14の夜』の舞台挨拶以来で、新しくなってからは初めてなのだが、9月いっぱいで閉館される。『お盆の弟』のときにも舞台挨拶で行ったから今回で3回目だった。自分にとっては小さな作品をいつもかけていただいて感謝しかない。

 

『こどもしょくどう』と『雑魚どもよ、大志を抱け!』のトークイベント。久しぶりに『こどもしょくどう』も見たのが、この2作品、実はよく似ていてイジメを見て見ぬふりをしている主人公の初恋話であった。

 

『雑魚〜』のトークイベントには声で出演の藤本幸利さんと警官役で出演の横江泰宣さんも会場にいらしたので、急遽舞台にも上がっていただいた。終了後、トークイベントに来てくださった皆さまと飲みにも行けて、とても楽しい時間だった。

 

左から出演者の藤本幸利さん、佐藤現プロデューサー、足立、出演者の横江泰宣さん

 

大阪から駆けつけてくれた皆様たち。38度超えの猛暑の中、感謝しかないです

 

8月22日(火)

朝9時出発。妻と京都駅で別れ、妻は帰路のバスに乗車。私はNHK大阪での打合せへ向かう。打ち合わせ後、10月から放送のドラマ『ブギウギ』の撮影を少し見学する。

 

今日は仲良しの俳優さんがたまたまクランクアップの日で(また情報解禁されていないので名前が出せない)、仮にSさんとしておくが、Sさんと昼間からおでん屋さんに飲みに行き、そのまま2人で酔っぱらって新幹線で東京に帰った。

 

代々木から大江戸線に乗り換えて、妻にLINEを入れると、バスで戻っていた妻も渋滞で遅れたらしくなんと次の新宿で私の乗車している大江戸線に乗るところだと言う。

 

「マジ!? なんか運命だね!」と付き合いはじめたばかりのカップルのようなLINEを送ると、電車が止まったのは国立競技場前だった。私はうっかり逆方向の電車に乗っており、奇跡を取り逃がしたのだった。

 

でも、この日は子どもが2人ともいないので家の近くの居酒屋に飲みに行って、チョーくだらない話をした。

 

8月23日(水)

朝からいつもの喫茶店で仕事。夕方、娘と息子、元気に帰宅。また楽しくもうるさい日々が始まる。

 

8月24日(木)

朝からいつもの喫茶店で仕事。夕方、シナリオ作家協会へ。メンバーの何人かとライターズチームを作れないかと画策している。うまくいくかどうかは分からない。ただ、自分たちからもどんどん企画を発信し、生き残りの道を模索せねばならない。

 

8月26日(土)

朝からいつもの喫茶店で仕事。午後、息子と『しん次元! クレヨンしんちゃん THE MOVIE 超能力大決戦 とべとべ手巻き寿司』(監督:大根仁)を観に行く。夏休みのイベントがすべて終わり、2学期が近づいて、鬱々とし始めた息子にとってかなり良い映画だったのではないか。

 

夜、小学校の花火大会に参加。このイベントは今年からだが、多分2学期が近づいて、イヤな空気につつまれている感じの子どもたちのためだろう。

 

やはり息子は久しぶりの学校の空気にかたまってしまい、本人が行きたがったから連れて行ったのだが、良かったのかどうか分からない。PTAから配られた花火は結局一本もやれず、そのまま家に持って帰った。

 

8月27日(日)

朝から仕事。夕方、家族で『MEG ザ・モンスターズ2」(監督:ベン・ウィートリー)観に行く。これはパート1より数段良くて、わりと楽しめたのだが、私はもうCGドバーの映画は胸やけもしてしまう……。息子と娘は楽しんだようだが、妻は寝ていた(※寝てねーし。by.妻)。

8月28日(月)

朝から仕事。午後、脚本家の今井雅子さんと、ご主人の杉田さん、地上げ屋のツヤさんと、昔からお世話になっているコピーライターの坂口さんと共に、神保町の学士会館のビアホールへ。ローストビーフと、ステーキと、ロールキャベツが美味しすぎて何度もおかわり。

 

今井さんとご飯に行くと、ケチ臭くなく食べまくるので楽しい。いつぞや一緒に函館の映画祭に行ったとき、回転寿司でえらい値段になったこともあるのだが、妻には今井さんのそういう姿を見習ってほしいのだ。

↑いやいや値段の話ではないです。スーパーで買い物し過ぎで冷蔵庫パンパンなのに外食してくるとか、注文し過ぎて平気で残すとか、ちょっといいとこ行くとすぐはしゃぐとか、そういうとこが激しくイラつくだけです。それにしても杉田さんと雅子さん夫妻。みんな50を超えたメンバーですが、本当によく食べ、よく飲みました!(by.妻)

 

8月30日(水)

家族で『春に散る』を観に行くためにネットでチケットをゲット。が、家を出る間際に息子の脳調が悪くなる。「僕は別にこの映画を観たいとは言ってない……」。いやいや昨晩話しただろうが……。夏休みが終わるという不安が全力で出てしまったいるのはよく分かるし、こうなると動けないのも分かっているのに、またまた私は怒ってしまった……。

 

どうして私はこうも学べないのだろうか。どうして同じ失敗を繰り返してしまうのだろうか。昔、撮影現場で先輩に言われた。「同じ失敗を繰り返すやつをバカって言うんだよ」と。心の中でその先輩に「バーカ。バカはお前だよ」なんて思っていたが、この自分の習性はさすがに嫌になる。

 

映画を観ながらそんなことばかり考えつつ、自己嫌悪にも陥ってしまったのでなかなか集中できなかったが、窪田正孝扮するチャンピオンのキャラクターがとにかく面白かった。試合のシーンはグッと力が入り前のめり。

 

帰りにYouTubeで発見した家の近所の町中華へ。炎天下の中に行列。娘は百均に行き妻は日陰に行き、私が列に並んで待つこと30分。ようやく入店。待った甲斐のある美味しい定食だった。高校生並の肉厚チャーシュー定食にカレー丼と醤油ラーメンを食らう。さすがに現役高校生の娘はがんがん平らげるが私は途中でお腹パンパンになった。

帰宅すると、脳調の悪いままの息子が「今日療育も行かないからね」と宣言。私はもう心が折れていたが、映画と療育の2つの直前ドタキャンに今度は妻が激怒。

 

「毎回毎回どんな思いでドタキャン&リスケの連絡対応してると思ってんだ!! しかも今日の今日のドタキャンはリスケとか返金なしなんだぞ!!」と怒鳴り、息子ギャン泣き。妻は家を飛び出て仕事に向かい、息子も家を飛び出てどこかにいった。

 

私は火に油を注ぐとは思いながらも「あの声と言葉は息子にはアウトです」と妻にLINEを送る。妻から逆ギレLINEが来るだろうと思ったが、珍しく「どうしようもなかった。悪いと思っている」と返信が来る。そう。どうしようもないのだ。息子も妻も私も。そして、世のどうしようもある人たちが私たちのようなどうしようもない人たちに正論をかざしてくる。どうしようもある人たちは、きっと運がいいだけなのだが、そのことに気づいているどうしようもある人たちは案外に少ない。というのが私の実感だ。

 

8月31日(木)

朝からいつもの喫茶店で仕事。今日もどうしようもない人たちを書く。

 

午後から俳優の眼鏡太郎さんの個展へ行く。眼さんのイラストは私の家の玄関にも飾ってある。その優しい感じの絵は、風水的にも抜群の効力を発揮してくれそうな気がして、それを期待してのことだ。久しぶりにお会いする眼さんとしばし語らい、かわいい花のTシャツを購入して帰った。

 

夜、息子と娘とジャルジャルのコントをみる。娘は「早く学校始まれ!」と叫び、息子は静かに始業式に緊張していた。私は笑っていた。

 

 

【妻の1枚】

 

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【プロフィール】

足立 紳(あだち・しん)

1972年鳥取県生まれ。日本映画学校卒業後、相米慎二監督に師事。助監督、演劇活動を経てシナリオを書き始め、第1回「松田優作賞」受賞作「百円の恋」が2014年映画化される。同作にて、第17回シナリオ作家協会「菊島隆三賞」、第39回日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞。ほか脚本担当作品として第38回創作テレビドラマ大賞受賞作品「佐知とマユ」(第4回「市川森一脚本賞」受賞)「嘘八百」「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」「こどもしょくどう」など多数。『14の夜』で映画監督デビューも果たす。監督、原作、脚本を手がける『喜劇 愛妻物語』が東京国際映画祭最優秀脚本賞。現在、最新作『雑魚どもよ、大志を抱け!』は2023年3月24日に公開。著書に『喜劇 愛妻物語』『14の夜』『弱虫日記』などがある。最新刊は『したいとか、したくないとかの話じゃない』(双葉社・刊)。

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