食の都・パリを牽引する名門ホテルのメインダイニングは、受け継がれてきた技術と革新的な感性を備えたスターシェフたちの“作品”に魅せられる場所。
その優美なガストロノミーを皮切りに、今行くべきグルマンの旅を案内する。
4回に渡り、名門ホテルのメインダイニングとそのホテルをご紹介。
アラン・デュカスのDNAを受け継ぎ31歳でエグゼクティブシェフに就任したアモリー・ブウール氏。
「デュカスはフランスの伝統料理を継承するアンバサダーのような存在。“伝える”ために若い人材を積極的に登用し、自由な発想を応援してくれています」と話す。
地元の生産者をサポートしたいという思いから、使う食材のほとんどが国内産。
一方で調理法は様々な国のものを取り入れ、その一つが日本食。脂、塩、砂糖を極力抑え素材そのものの味を引き出す技術、魚の調理法、海藻の使い方など幅広く用いているという。
「盛り付けやお皿はあえて伝統とは違うものに」と、オードブルのカキはドライアイスのスモークに包まれて供されるという演出も華やかだ。
レストランの内装はヴェルサイユ宮殿の「平和の間」をイメージして造られ、2016年にフィリップ・スタルク氏によってアレンジされた。
艶やかなインテリアと、軽やかで大地を感じる料理とのミクスチャーがフランス料理の新たな風となっている。
このレストランを率いて3年を過ぎた感想をアモリー氏に聞くと「とにかく成長し続けた3年でした。
結果として以前と変わらず満席なのは嬉しいですね」。デュカスの愛弟子の進化をゲストも称賛している。
Amaury Bouhours(アモリー・ブウール)
アラン・デュカスのレストラン「ル・ルイ・XV」で働き始め、ホテルなどで経験を積み2020年にル・ムーリスの店舗でエグゼクティブシェフに就任。
RESTAURANTLE MEURICE ALAIN DUCASSE(レストラン・ル・ムーリス・アラン デュカス)
所在地 228 rue de Rivoli, 75001 Paris
電話番号 01 44 58 10 55
営業時間 19:00〜21:30
定休日 土・日曜
https://www.dorchestercollection.com/paris/le-meurice
1835年に創業し、王侯貴族がよく訪れていたことから“王様のホテル”と呼ばれていたル・ムーリス。スペインの画家、サルバドール・ダリが定宿にしていたなど、芸術家にまつわるエピソードが多い老舗ホテルだ。
長きにわたる歴史を継承しながら、2007年から10年近くかけてフィリップ・スタルクによる大規模改装が行われ、そのコンセプトというのが“モダン・ヴェルサイユ”。
クラシカルなインテリアに個性が光るアートピースを織り交ぜるなど、自由な感性をちりばめゲストを迎えている。
豊かな味わいの地元食材が楽しめるセカンドレストラン「ル・ダリ」や重厚感あるレザーシートが趣を醸す「バー228」など、記憶に深く刻まれる場所で、特別な時間を過ごしたい。
Le Meurice(ル・ムーリス)
所在地 228 Rue de Rivoli, 75001 Paris
電話番号 01 44 58 10 10
客室数 160室
料金(1室)1,775ユーロ〜
https://www.dorchestercollection.com/paris/le-meurice
文=梅崎奈津子
撮影=小野祐次
コーディネート=宮方由佳