小豆島の農家が10年近く続けた、野菜セットの定期便販売を終了した理由とは?

  • 2025年1月28日
  • コロカル
やめたこと、新しく始めたこと

野菜が美しい。ただただその美しさに感動し、うっとりしてしまう。

1月、小豆島で〈HOMEMAKERS〉として農業を営む私たちにとって、1年で最も穏やかな時期。カフェの営業は1月22日〜2月14日まで冬季休業しており、農作業もいつもよりおだやか。秋から年末にかけての収穫、加工品の製造、カフェでのイベント開催などによる超繁忙期をなんとか乗り越え、この季節を迎えられたことが心底うれしい。私は年々「冬」が好きになっていく。

冬になると、よく山歩きをします。私たちの活動の拠点である小豆島肥土山(ひとやま)集落と、その先に広がる瀬戸内海を山の上から眺める。

冬になると、よく山歩きをします。私たちの活動の拠点である小豆島肥土山(ひとやま)集落と、その先に広がる瀬戸内海を山の上から眺める。

新しい年が始まり、いくつかこれまでのやり方を見直し、やめたこと、新しく始めたことがあります。

まずやめたこと。野菜セットの定期便販売を昨年12月末で終了しました。毎回注文しなくても自動的に毎週、隔週、毎月などの頻度でお届けされる野菜セット定期便。お客さまにとっては便利であり、私たちにとっては野菜のお届け先を安定して確保できる販売方法。

HOMEMAKERSでは、毎週火曜日と金曜日に野菜の収穫・発送作業をしています。

HOMEMAKERSでは、毎週火曜日と金曜日に野菜の収穫・発送作業をしています。

出荷作業日の夕方4時に郵便局さんが集荷にきてくれるので、それまでになんとか作業を終わらせます。

出荷作業日の夕方4時に郵便局さんが集荷にきてくれるので、それまでになんとか作業を終わらせます。

10年近く続けてきましたが、ここ最近は気候の変化、物価の変化など変動するものが多く、定期的に同じ内容のものを同じ価格でお届けすることに、違和感と難しさを感じていました。野菜が少ない時期も定期便の野菜セットをなんとか用意しないといけないというプレッシャーや、酷暑の夏でも畑に出て野菜を収穫して休まずお届けしないといけないという負担から解放されなくては。

野菜がたくさん採れればたくさん販売する。採れなければ販売をお休みする。

できる限りシンプルに、その時々の畑や自然の状況にあわせて動けるように。

久しぶりにしっかり大きく育った「あやめ雪かぶ」。出荷のタイミングに合わせるんじゃなくて、野菜の成長にあわせて出荷できるようにしていきたい。

久しぶりにしっかり大きく育った「あやめ雪かぶ」。出荷のタイミングに合わせるんじゃなくて、野菜の成長にあわせて出荷できるようにしていきたい。

ひとつやめたことで、新しいことに取り組む余裕ができる。もっと野菜のことを伝えたい。HOMEMAKERSは、年間通して100種類ほどの野菜を育てているのですが、毎週野菜セットの野菜の内容は変わります。1年は約52週。その52週の野菜セットの内容を写真におさめてみようと思っています。

2025年1月14日発送の野菜セット。茹でるだけでおいしいアンチョビ菜(ナバナ)や中身がピンク色の紅芯大根など、スーパーで普段見かけないような野菜も入ります。

2025年1月21日発送の野菜セット。冬のケール(右下)は葉が硬めですが糖度が高く、ケールチップスにするととってもおいしい。

 

野菜のおいしい食べ方を伝える

小豆島で農業をしている私たちの強みは、年間通してさまざまな種類の野菜を育てられること。冬は氷点下になる日も多いですが、積雪することはほとんどなく、レモンやミカンなどの柑橘を育てることができます。季節にあった野菜を栽培して収穫できる豊かさや、野菜自体のパワーや美しさを伝えたい。

約10年前に植えたレモンの木。あまり手入れできていませんが、毎年冬に実をつけてくれます。

約10年前に植えたレモンの木。あまり手入れできていませんが、毎年冬に実をつけてくれます。

レッドサラダボウルレタスの1番内側の部分。黄色と赤色のグラデーションのフリルがなんとも美しい。

レッドサラダボウルレタスの1番内側の部分。黄色と赤色のグラデーションのフリルがなんとも美しい。

そして、野菜は食べるものなので、美しさだけじゃなく、おいしい食べ方も伝えたい。HOMEMAKERS CAFEでは、旬の野菜を使ったメニューを提供しています。カフェの厨房に入って、野菜の料理を担当してくれている仲間に、野菜の下ごしらえや料理の仕方などをインタビュー&撮影して、それをお伝えできたらと思っています。

厨房で料理されている野菜を見ていると、とても癒やされるんですよ。野菜が美しくて美しくて。

外側の黄緑色と内側のピンク色が特徴の紅芯(こうしん)大根。いちょう切りにするとスイカみたい。

紅芯大根の梅あえ。いちょう切りにした紅芯大根にたたいた梅干しをからめて、レモン果汁で味を整えました。

 

畑で収穫しきれずに残っていたレタサイという早生の白菜。トウ立ちしてナバナができていたので、まかないごはん用に収穫。茹でておひたしに。

畑で収穫しきれずに残っていたレタサイという早生の白菜。トウ立ちしてナバナができていたので、まかないごはん用に収穫。茹でておひたしに。

冬のケールをケールチップスに。油をまとわせてオーブンへ。葉が重ならないように並べることがしっかりパリパリにするコツ。

冬のケールをケールチップスに。油をまとわせてオーブンへ。葉が重ならないように並べることがしっかりパリパリにするコツ。

そうやって自分自身が感動することをもっと大切にしたい。何が儲かるかじゃなくて、何に感動して、何をしたいのか、きっと共感してくれる人がいるんじゃないかと。そういう人たちにHOMEMAKERSの野菜を食べてもらえるのが1番幸せなことなんだろうなと思います。

今伝えるメディアはたくさんあります。この小豆島日記もまさにそうですし、インスタグラムやYouTubeなんかも。なんでもできるわけではないので、私たちができるやり方で(ちょっと挑戦しながら)、今年は野菜のことをもっとお伝えできたらいいなと思っています。

昨年末のご挨拶用に撮った写真。農業をはじめて12年の冬の私たち。

昨年末のご挨拶用に撮った写真。農業をはじめて12年の冬の私たち。

information

HOMEMAKERS CAFE 

住所:香川県小豆郡土庄町肥土山甲1735 農村ゲストハウスNOTEL 1F

TEL: 080-4425-8192

営業時間:11:00〜17:00(16:30L.O.)

定休日:水・木曜

Web:HOMEMAKERS CAFE

writer profile

Hikari Mimura

三村ひかり

みむら・ひかり●愛知県生まれ。2012年瀬戸内海の小豆島へ家族で移住。島のなかでもコアな場所、地元の結束力が強く、昔ながらの伝統が残り続けている「肥土山(ひとやま)」という里山の集落で暮らす。移住後に夫と共同で「HOMEMAKERS」を立ちあげ、畑で野菜や果樹を育てながら、築120年の農村民家(自宅)を改装したカフェを週2日営業中。https://homemakers.jp/

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