月見茶会やライトアップも。個性豊かなイベントで新しいお寺のかたちを追求する岐阜県〈東光寺〉

  • 2024年7月5日
  • コロカル
岐阜県の郊外に位置する禅寺

「お寺」と聞いて、何が思い浮かびますか? 住んでいる地域にもよりますが、「法事をする場所」「お墓参りに、年に1〜2回行く場所」、あるいは「通りすがりでよく見ているけど、どんなところかは知らない」など、あまり馴染みのないところだというイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。

しかしそうした状況に危機感を持ち、お寺を観光資源・文化財として残そうと、ユニークな取り組みを多々行っているお寺があります。岐阜県山県市にある〈東光寺〉です。

〈東光寺〉

〈東光寺〉は約520年の歴史を持ち、敷地面積3000坪を誇る山県市最大の禅寺です。美しいドウダンツツジと苔庭でも知られ、最近は成人式や結婚式の前撮りスポットとしても人気を集めています。

「お寺=おかたい場所」のイメージを変える催しを実施

〈東光寺〉縁側

〈東光寺〉では、毎月さまざまなイベントを開催しています。

例えば、お寺が保有する文化財に親しんでもらう「月見茶会」。〈東光寺〉は長い歴史の中で数々の名僧を輩出したことから、お茶道具や伝統工芸品、美術品などが数多くあります。そうしたものに触れてもらおうと、数々の伝統工芸品を鑑賞しながらお茶も楽しめる会を開いています。

ほかにも、ユニークなイベントを随時開催中。保護猫や保護猫活動をしている人々のことを知ってもらうことを目的に、猫にまつわるクイズやスタンプラリー、マルシェを実施する「東光寺ねこ日和」に、地元の菓子店とコラボした和菓子づくりのワークショップなど、バラエティ豊かです。

猫モチーフのお菓子

「東光寺ねこ日和」では、猫モチーフのお菓子や雑貨などを販売するマルシェも開催

また、地域の子供たち向けの体験教室「てらこやぁ」も行っています。

「人々が行き交うお寺」を目指して

〈東光寺〉でこうしたイベントが頻繁に開かれているのは、住職夫妻に「人々が行き交うお寺にしたい」という思いがあるためです。

住職の彦坂怜宗さんと妻・裕貴さんは、どちらも関西出身。6年ほど前に京都から山県市に移住し、〈東光寺〉を先代の住職から引き継ぎました。

住職の彦坂怜宗さんと妻・裕貴さん

しかし移住して驚いたのが、お寺に対する人々の関心の薄さでした。ふたりが住んでいた京都では、お寺はお出かけスポットの定番。怜宗さんが生まれ育った寺にはいつも檀家さんがいて、交流も日常茶飯事だったといいます。

ところが岐阜県ではお寺といえば法要をする場所というイメージしかなく、参拝者から「お寺にそこまで求めていない」とまで言われてしまったことも。「お寺は日本の文化の基盤をつくってきた場所なのに」と、衝撃を受けたそうです。

このままでは、魅力あるお寺がどんどんなくなっていってしまう――そう感じたことから、お寺のイメージを変える大切さを体感したといいます。

そこでまずは自分たちのお寺の固定観念をなくそうと考え、数々のイベントを主催。幅広い世代の人々がお寺に訪れる機会をつくっているのです。

「東光寺夏まつり」

30年前を最後に開催が途絶えていた、「東光寺夏まつり」も復活させた

過去に開催したイベントのなかには、来場者が700人を超えたものもありました。檀家さんから「こんなに人がいる〈東光寺〉は見たことがない!」と絶賛されたそう。

今ではイベントがない日でも若い人々が参拝に来る様子も見られ、徐々に手ごたえを感じはじめています。

「『月見茶会』や『東光寺ねこ日和』のようなイベントはある程度コンセプトを決めて、時間と手間をかけて取り組んでいます。ワークショップはSNSに出てくるカフェや和菓子などの投稿も参考に、『田舎のお寺に行ってでも体験したいことは何か?』という観点で企画しています。

正直かなり手探りなのと、広報担当の私自身もときめく内容であることを大切にしているので(笑)、結果的にいろいろな催しになっています」と、妻・裕貴さん。

一般の人々と同じ目線で内容を考えているからこそ、多くの人に喜ばれ、盛り上がりを見せているのかもしれません。

イベント「夜の東光寺」の様子

山県市と共催した、自慢のドウダンツツジのライトアップをするイベント「夜の東光寺」の様子

今後も引き続きイベントを開催して、「人の行き交う東光寺」というイメージを定着させたいとのこと。そして将来的には、次のような姿を目指したいそうです。

「私たちが今のように直接関わらなくても、『お寺でこんなことがやりたい』と考える人が増えて、地域の人々のコミュニティができたらと思っています。

私たちは、お寺は人がつくるものだと考えています。活気あるお寺づくりに携わっていただき、お寺や地域・文化のことまで楽しんでいただけるようになれば、きっと私たちが老いていなくなってもお寺に対する想いは受け継がれて、なくなるリスクも低くなるはず。

そもそも私たちが『人が行き交う東光寺にしたい』と思ったのも、幼少期を東光寺で過ごした方々から昔のお寺の様子をお話していただいたことがきっかけでしたからね」

クラウドファンディングも実施中

そんな〈東光寺〉は現在、クラウドファンディングを実施しています。

目的は、美術品をお茶とともに楽しむ「月見茶会」に、世界的な現代アーティストの作品を展示すること。そして、アートと日本の文化を楽しむ時間の楽しさを伝え、お寺という場所へのイメージをさらに大きく変えることです。

山県市産のオーガニックコットンを使って、地元の繊維工場がつくったお守り

リターンとして、限定の御朱印や地元・山県市産のオーガニックコットンを使って、同じく地元の繊維工場がつくったお守り、非公開エリアの特別拝観プランなどを用意しています。

クラウドファンディングは、2024年7月31日まで実施中。〈東光寺〉を応援したい! お寺の未来を一緒に考えたい! という方は、ぜひ早めにチェックしてみてください。

information

東光寺

住所:岐阜県山県市小倉618-41

TEL:0581-36-3005

営業時間:9:00~17:00

定休日:なし

Instagram:@fujisan.toukouji

Web:クラウドファンディング プロジェクトページ

writer profile

Hiroko Shimokawa

シモカワヒロコ

しもかわ・ひろこ●岐阜県岐阜市出身。タウン誌の編集者を経て、現在は名古屋を拠点に活動するフリーランスライター・編集者。幼少期から「ローカル」を感じる店や人が好きで、大学ではまちづくり・都市政策を研究していた。

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