こんにちは。「食べもの・お金・エネルギー」を自分たちでつくる〈いとしまシェアハウス〉のちはるです。
6月といえば、梅が旬。梅仕事、進んでいますか?
今年は梅が不作といわれ、手に入りにくい場所もあるようです。貴重な梅を、傷めることなく活用したいですよね。
以前に「5つのレシピ、教えます! 傷んだ梅も余さず使いきる、私の“簡単”梅仕事」という記事も書きましたが、梅仕事にもいろいろな手法や段階がありますよね。
意外と知られていませんが、梅は収穫されてからも熟していくもの。これを「追熟(ついじゅく)」といい、緑色でかたい実は、日を追うごとに黄色くやわらかくなり甘い桃のような香りがしてきます。
酸味が強くキリッとした風味が楽しめる「青梅」はシロップに、「完熟梅」はそのやさしい甘さを生かして、コンポートや梅干しに。梅の熟し具合によって仕込めるものが変わってきます。
ところが、その「追熟」のコントロールがなかなか難しい! 「仕込みたいけれど、今は時間がない」逆に「今、仕込みたいのに、梅が熟していない」また「追熟を待っていたらカビてしまった」なんて声も。
今回は、数々の失敗を経験してきた梅仕事歴11年の筆者による、「適切な梅の保存方法」、「梅を数分で追熟させる方法」、「青梅の状態をキープする方法」をご紹介します。梅の保存方法に悩んでいた方、必読です!
まずは基本の“き”から! 梅の「保存」と「追熟」の仕方・梅の保存方法
まず、基本的な梅の保存方法についてご紹介します。
(1)買ってきたらすぐに袋から出す
袋に入ったままの状態だと梅が蒸れて傷みやすいです。買ってきたらすぐに袋から取り出し、竹ざるかダンボールの上に広げて保管しましょう。
(2)洗わない
梅は水分を含むと傷みやすく、茶色く変色してしまいます。(私も昔これで失敗しました……!)洗うのは、梅仕事の直前に。
(3)梅を重ねない
梅を重ねて保存すると、重なった部分からカビが生えて傷みやすいです。できるだけ広げて保存しましょう。
・失敗しない追熟の方法
きれいに熟した完熟梅。
「青梅を買ったけれど、追熟させて使いたい」という場合は以下の方法で追熟させると失敗しにくいです。
(1)段ボールや竹ざるに青梅を広げる
(2)上から新聞紙をかける
(3)風通しのよい場所で保管
ちなみに、梅が追熟するのは、植物の熟成を促進させる「エチレン」の働きであるといわれています。このエチレンは、「酸素のある所」「20〜30度の環境」で活発になります。
つまり、風通しがよく、エチレンの働きが活発になる温度帯の場所で追熟が進むということ。
一方、温度が高すぎると追熟のスピードが上がり熟しすぎてしまいますし、直射日光は傷みの原因になります。
失敗しにくい梅の追熟方法、ぜひ参考にしてみてください。
梅は収穫時期によっても追熟のスピードが変わります。青梅の状態で収穫されたものは追熟もゆっくりですが、熟してから収穫した梅は追熟のスピードが早いです。
梅の追熟が数分で完了する“裏技”を実験!「今日のうちに梅仕事がしたいから、追熟を完了させたい」そんな場合は、熱湯を使う「強制追熟」という方法があります。
通常であれば数日かかる追熟が、数分で完了するという裏技なのですが、私たちもまだ試したことがありませんでした。
そこで今回は、特に青みの強い青梅を選び、「沸騰したお湯を回しかける方法」と「弱火で煮る方法」というふたつの実験をしてみました。
(1)沸騰したお湯を回しかける
ボウルに青梅を入れ、沸騰したお湯を回しかけます。参考にしたレシピには20秒ほどお湯に漬け込むとありましたが、それだと青いままでした。黄色くなるのには2分半ほどかかりました。
(2)小鍋で弱火にかける
青梅がだいぶかたかったので、お湯をかけるだけではやわらかくならないのでは? と思い弱火でコトコト煮てみました。大きさにもよりますが、2分程で全体が黄色くなり、香りが変化してきました。
梅の熟し具合が違ったので、緑色の強いものからざるで様子を見ながら煮込みます。
お湯から引き上げるタイミングは、「黄色く変化」「桃のような香りがする」ようになったら。
梅の熟し具合によっても加熱時間は変わるので、色や香りの変化が乏しければ、少し長めにお湯に浸すなど、工夫してみてください。
左が強制追熟した青梅、右が同じ日に収穫した何もしていない青梅。
実験の結果、(1)(2)どちらの方法でも無事に梅を黄色く変化させることができました。青梅と比べてみれば、その差は一目瞭然。
ただ、自然に熟した梅よりも若干緑色が残る色合いになりました。香りも、完熟梅に感じる桃のような芳香は控えめで、青梅ならではの爽やかな香りが強く出たような気がします。やはり、自然な追熟とは少し違うかな? という印象です。
今回は緑色の強い梅で実験したので、もう少し熟した梅ならもっと完熟梅に近いものができたかもしれません。また実験してみる価値はありそうです。
ちなみに、(2)の方法で処理した梅は皮が剥けやすくなって触っている間に皮が破れてしまいました。グツグツ煮るのは避けたほうがよさそうです。
左上から時計回りに、弱火で煮た梅、お湯を回しかけた梅、青梅、自然に追熟した梅。
強制追熟した梅は熱湯消毒されているので、梅干しを仕込むにはぴったりだと思います。ただし、水分を含んで傷みやすいので、すぐに加工したほうがよさそうです。
実際に梅干しを仕込んでみると、水分が多いからか、重石をしていなくても2日で梅酢が上がってきました。青梅で仕込んだ場合、実がかたく梅酢が上がってきにくく、その間にカビてしまいやすいのですが、この方法であれば実もやわらかく、梅酢もすぐに出るので、失敗しにくいかなと感じました。
どんな梅干しになるか、またレポートしますね!
検証! 青梅を長持ちさせるには?「梅を青いまま使いたい」「すぐに梅仕事にとりかかれない」そんな人もいるのでは?
そこで、同じ日に収穫した青梅を3つの異なる環境で1週間保存し、どの方法が一番青さを保てるか実験してみました。
同じ日に収穫した梅で実験。今回は、常温保存、保存用袋に密閉、冷蔵保存など条件を変えて保存してみました。
(1)ダンボールに入れて常温で保存基本的な梅の保存方法です。
(2)保存用袋に入れて常温で保存酸素を遮断し、エチレンを抑える条件で保存します。
(3)保存用袋に入れて冷蔵庫(弱)で保存酸素を遮断し、温度を下げて、エチレンを抑える条件で保存します。温度が低すぎると梅が低温障害を起こし変色してしまうので、冷蔵庫は弱にしておくのがポイントです。
まずは、(1)のダンボールに入れて常温で保存した場合。
追熟度合は10段階中、7〜8程度。ダンボールを開けた瞬間に甘い香りが広がり、美しく追熟しています。
続いて、(2)の保存用袋に入れて常温で保存した場合。
追熟度合は10段階中、2〜3程度。保存用袋に入れて酸素を遮断したため、(1)に比べると、青いまま保存できています。
袋に溜まった水で少し変色してしまいましたが、加工品には使用できそうです。
どうやら、酸素を遮断するだけでも追熟防止効果は十分ありそうです。
保存用袋のなかにキッチンペーパーを入れるなど、余分な水分が溜まらないようにすれば、もう少しきれいな状態で保存できるかも。
最後に、(3)の保存用袋に入れて冷蔵庫(弱)で保存した場合。
追熟度合は10段階中、1〜2。こちらはほとんど追熟なし!
実もかたく、もともと傷がついていた部分も全然痛みが広がっていません。すごい! ピカピカのみずみずしい青梅のまま保存することができました。
このあと、(3)の半分の梅を常温保存にし、試しに追熟させてみたところ、問題なくきれいに追熟しました。
左は保存用袋に入れて冷蔵庫保存したもの。右は段ボールで常温保存したもの。
上の写真は、同じ日に収穫した梅ですが、保存状態でこんなに変わります。並べてみると全然違いますね!
近年はエチレンガスを吸着透過させる「鮮度保持袋」というものが販売されているようなので、これなら普通の保存用袋よりも追熟防止効果が期待できそうです。
【おまけ】
(3)の残り半分の梅を使い忘れてしまい、1か月くらい冷蔵庫に入れっぱなしにしてしまったのですが、慌てて冷蔵庫から取り出してみると若干痛んではいるものの、まだまだ使える状態でした! すごいぞ、冷蔵庫保存!
裏技の実験から感じた、メリット・デメリット強制追熟も、青梅のままキープする方法も、実験は大成功! これで梅仕事がもっとスムーズにできる気がしました。
ただ、自然に熟していくものを冬眠状態にしたり、熱で強制的に熟したりすることで、香りや風味は少し弱くなってしまうかな……? という印象です。
とはいえ、忙しい現代社会で、梅の熟し具合に合わせて時間をつくるのはなかなか難しい、という人もいるはずです。扱いの難しい梅たちを上手に保存することで、みなさんの梅仕事が少しでも楽しくなったらうれしいです。
以前ご紹介した梅の状態別にあわせた5つのレシピ「5つのレシピ、教えます! 傷んだ梅も余さず使いきる、私の“簡単”梅仕事」の記事もぜひ見てみてくださいね。
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CHIHARU HATAKEYAMA
畠山千春
はたけやま・ちはる●新米猟師兼ライター。3.11をきっかけに「自分の暮らしを自分でつくる」活動をスタート。2011年より鳥を絞めて食べるワークショップを開催。2013年狩猟免許取得、狩猟・皮なめしを行う。現在は福岡県にて食べもの、エネルギー、仕事を自分たちでつくる〈いとしまシェアハウス〉を運営。2014年『わたし、解体はじめました―狩猟女子の暮らしづくり』(木楽舎)。第9回ロハスデザイン大賞2014ヒト部門大賞受賞。ブログ:ちはるの森