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海野和男のデジタル昆虫記

佐藤岳彦君の写真集「密怪生命」

佐藤岳彦君の写真集「密怪生命」
2018年09月27日

 写真家仲間の若手No1、佐藤岳彦君の新しい写真集「密怪生命」を頂きました。この写真集は佐藤君の単独著書の写真集としては初めてのもの、彼の生命を見る視点のエッセンスがつまっている。立派な装丁の本で、こんな写真集を若くして出せるのは、幸せ者だと思う。内心ちょっとうらやましい。
 彼のフィールドは明治神宮から熱帯。特に熱帯雨林は彼の最も愛するフィールドだ。この本にもたくさんの熱帯での作品が登場する。熱帯ジャングルに最も頻繁に出かけている写真家で、熱帯が好きなぼくにとっても良い刺激になる。ページをめくっていると、小さい世界から宇宙を見ている視点が感じられる。
 構成が面白く、左ページに沖縄のオカタニシ、右ページにタイのアジアゾウなどという異質の組み合わせの見開きも多い。両方とも草や木の間からこちらをそっとのぞいているふうのカットで、よく似たシーンなのだ。大きさもグループも異なる二つの生命体に、奇妙な共通点を見るのである。
 動物や昆虫などの生きものの写真は、クリアーに撮るのが一般的だが、この本では生きものの一部だけが写っていたり、ぶらしたりした写真もある。このあたりが、写真集としてまとまった秘訣かもしれない。クリアーで生きもののよくわかる写真ばかりで構成すると、写真集としては成り立たないような気もする。彼が問いたい、生命とは何か?という視点がパラパラとめくったときに十分感じられる。昔、彼に研究者でもある写真家を褒めた時に、「彼は学者で、ぼくは写真家です」ときっぱり言ったことを思い出した。
 印刷も良好で、最近の写真集としては珍しく、インクてんこ盛りで、コントラストと濃度の高い仕上げになっているのにも感心する。しばし、ページをめくりながら異次元の世界に浸るのも良いのではないだろうか。

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