すっかり昆虫写真家気分なのだが、20代は仕事がそうあるわけではない。相変わらず家庭塾の先生をしながら写真を撮っていた。
コダクロームのフイルム代は現像代を合わせて2000円近い(現像代はプロ価格で960円)。月に20本ぐらいしか使えない。だから今からすればあまり写真を撮っていなかったなと思う。趣味っぽくチョウや甲虫の珍しいものを追いかけていた。
当時、一生懸命撮ったのに何で、写真が売れないのだろうかと思った。それは売れる写真を撮っていなかったのだから当然だったと今では思う。
売れる写真とは読者が見てみたいと思う写真だ。そしてそれが自分も見てみたかったり、撮影してみたかったりすれば最高なわけだ。けれどそううまくはいかないもので、自分が見たい虫や撮りたい写真が人が見たい写真とは限らない。
それでも、そうこうしているうちに、アニマルライフや朝日ラルースという週間の動物百科が刊行され、ぼちぼち写真を使ってもらえるようになった。けれど使ってもらえるのはたいていは、著名写真家が持っていない珍しい虫だった。
当時から熱帯アジアに通っていて、擬態の写真を撮っていた。それを何とか使ってもらいたいと思ったが、子供の本では海外の虫はちょっとね、ということでほとんど使ってもらえなかった。ハナカマキリでさえ、当時は知る人もほとんどおらず、写真が悪かったせいもあるかと思うが、あまり興味を示してもらえなかった。
写真はハナカマキリの交尾行動。オス(上)は小さく、メスの背中に乗ってカマでメスをたたいてなだめる。2004年撮影(飼育個体)。
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