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【イベントレポート】南三陸町の現状を学び支援する「Smart Action for Forest2017」に参加しました

  • 2017年2月8日
  • 緑のgoo編集部

レポート3:佐藤太一さん講演 日本の林業は「未熟な状態」?

 休憩を挟んでステージに登壇したのは、南三陸で12代にわたって林業を営んでいる「株式会社佐久」の佐藤太一さんです。

株式会社佐久の佐藤太一さん
株式会社佐久の佐藤太一さん

 最近は「生まれた子ども(13代目)と遊ぶのが何よりも楽しい」と語る佐藤さんには、日本の林業の現状と、これからの林業はどのようにあるべきかについてお話しいただきました。

国産の木材には目が向かない? 日本の林業の現状

 日本では、戦後に補助金によって拡大再造林を進めた結果、植樹から50年ほどが経過した使いどきの木が増えているそうです。しかし、業界が外国産の木材への依存から抜け出せないために、なかなか国産の木材には目が向かないとのことでした。

 また、管理が行き届かず放置されているがゆえに、全面的な伐採が必要な森林が全国的に数多くあるとのことでした。放置された森林では、木の葉が隙間なく森全体を覆ってしまうために雨水が地面に届かず、結果として近隣の河川の水量低下を招くのだそうです。そうした事態を防ぐためにも、放置された森の木をすべて切って再造林したり、広葉樹を育てる山にするなどの対策が必要であろうとのことでした。

自然を大事にする林業のあり方

 それでは、次世代の林業とはどのようにあるべきでしょうか。日本の林業の現状を「未熟な森林管理」と表現する佐藤さんは、木の切り方や森林の管理方法を変えていったと言います。

 たとえば「下草の保全」。下草とは、木の根元に生えている低木や地被植物のことを指します。これまでの林業では、安全性確保や杉の栄養管理といった観点から下草を刈ることが通説とされていましたが、佐藤さんたちは「あえて下草を刈らない」とのこと。
 下草を刈らなくても安全性は確保できることや、動植物の活動場所として下草があることがかえって木の栄養になることが下草を保つ理由なのだそうです。また海外では、生物多様性の観点からこうした手法が重要視されているとのことでした。

下草が保たれた森林
下草が繁茂した森林では生物多様性が維持される
出典:「森」について|docomo X AMITA 未来の種プロジェクト ~南三陸町 森・里・海 ものがたり~

 また、立ち枯れてしまった木についても、安全が確保できる限り残すようにしているとのことでした。
 枯れ木には虫が住みついたり、その虫を狙って鳥がやってくるなど、他の動物にとっては大切な機能を持っていることがあります。そうした木はこれまでの林業では伐採されるものとして扱われてきましたが、佐藤さんの経営する「佐久」では、木材以外の動植物の環境を整えるという観点から伐採しない場合もあるとのことでした。

持続可能な林業、持続可能なまちづくりへ

大量伐採ののち全国で一斉に植樹した歴史があるために、日本では「親が植え、子どもが育てて孫が切る」といった理想的なサイクルでは林業は営まれてはいないと指摘する佐藤さん。今後は業界全体が「FSC(R)」(Forest Stewardship Council(R)、森林管理協議会)という国際認証に準拠し、先進国として恥ずかしくない、資源管理を適切に行う林業にシフトする必要があるといいます。

 「FSC認証」とは、森林の管理や伐採が環境や地域社会に配慮して行なわれているかどうかを評価し、それが行なわれている森林を認証する制度のことです。この制度は国際的な基準といっても過言ではなく、実際、オリンピックの関連施設の建築やチケット・プログラムの材料は、そのほとんどがFSC認証を受けた木材です。

 自然をうまく使いながら、持続可能なまちづくりを目指す南三陸町。そうしたまちづくりを進めていくためにも、FSC認証の認知度を上げていかなければならないと佐藤さんは言います。

 現在、南三陸町で建設中の町役場は、FSC認証を受けた木材が工事に使われているといいます。「持続可能なまちづくり」を目指す南三陸町の一丁目一番地である役場には管理木材が使われていてほしいという佐藤さんたちの思いから、町有林の木材が使われることになったのです。FSC認証を受けた、環境に負荷をかけない林業を展開することが、ひいては持続可能なまちづくりにもつながるのです。

編集後記

 東日本大震災から6年。今回のイベントは、震災の復興がまだまだ進んでいないという現状を改めて知るだけでなく、3.11以降の生活を考えていくうえで避けることができない、「自然とどう生きていくか」という問題を改めて考える非常に良い機会になりました。

 とくに勉強になったのは、南三陸町で林業を営む佐藤太一さんのお話でした。持続可能な事業のあり方を追求することや、自然と真剣に向き合う姿勢は、今後ますます私たちの社会のあり方にとって、そして自分たちの生活に今後ますます求められてくることでしょう。

おまけ 会場の様子

イベント会場では、南三陸町で採れたリンゴを使ったシードルやチップス、地元でしか売っていない地酒「歌津」、南三陸の海産物を使った缶詰(タコ・カキ・ホヤ)、現地で栽培された薬草である当帰(トウキ)が入ったロールケーキなどが振る舞われ、参加者が舌鼓を打ちました。

会場で振舞われたグルメその1
会場で振舞われたグルメその2
会場で振舞われたグルメ

■docomo 東北復興支援・新生支援
 笑顔の架け橋Rainbowプロジェクト
 http://rainbow.nttdocomo.co.jp/

■ナガオケケンメイプロフィール
http://www.nagaokakenmei.com/profile/

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