日本自然保護協会では、この夏、子どもでも参加できる自然環境調査「自然しらべ2018 身近なアリしらべ」を実施しています。昨今のヒアリ騒動で注目されるようになったアリ。実は、日本のアリがどこにどれぐらいいるかはあまりわかっていません。ぜひお子さんと一緒に「自然しらべ2018 身近なアリしらべ!」にご参加ください。
参加の仕方は→
https://www.nacsj.or.jp/shirabe/2018/06/11192/
アリの「おもしろ雑学」。今回はアリの女王にまつわる雑学を集めました!
女王アリは一匹じゃない!?
▲多女王制のクロナガアリ。秋に出現し、植物の種子を集めて餌としている。
ひとつの巣に女王は一匹。そんな子ども用の図鑑などによく描かれるイメージは、クロオオアリなどの「単女王制」と呼ばれるものです。ですが実際は、ひとつの巣に複数の女王アリがいる「多女王制」のアリも多いことが分かっています。
▲単女王制であるクロオオアリ有翅女王と雄。
面白いのはクロヤマアリ。巣を掘ると数匹から十数匹もの女王が出てきますが、最初に巣をつくる女王は一匹で、そのほかの女王については、近年の観察により、結婚飛行で巣立った新女王が、おそらくは同じ巣の働きアリに連れ戻されていることが分かりました。「出戻り」ならぬ「出戻らせ」をして、自分たちの巣の女王を増やしているのです。
10年生きるなんて当たり前
一般的に女王アリの寿命は10年以上と長寿です。正確な寿命を知るには飼育記録が必要ですから、実際にはそれ以上生きているアリもいるでしょう。世界一は北米にいるハキリアリの仲間で30年続いた野外の巣の記録があります(日本記録はヒラアシクサアリの15年)。飼育記録ではヨーロッパトビイロケアリの女王の29年という記録があります(日本記録はクロオオアリの15年)。
女王がいないなんて…… そんなのアリ?
▲働きアリが子どもを産むアミメアリは、ときに数十万匹のコロニーを形成することもある。
平野部で観察しやすいアミメアリには、なんと女王がいません。代わりに働きアリたちが少しずつ卵を産み、仲間を増やしているんです(働きアリは普通、産卵できませんが、性的には雌です)。また、働きアリには卵や幼虫の世話をする「内勤」と、餌を集めたり外敵から巣を守る「外勤」がいて、若い働きアリは内勤、老いた働きアリほど危険度の高い外勤に回される、という傾向があるそうです。
居候し続ける女王詐欺師!?
▲ヒメウメマツアリの巣に寄生するヤドリウメマツアリの女王(中央)。
ヤドリウメマツアリなど、名前に「ヤドリ(=宿り)」と付くアリの女王は、ほかのアリの巣に侵入し、永続的に生活し続けます。この際、侵入した種の女王アリは殺しません。乗っ取るわけではなくおじゃまし続け、自身は働きアリを産まず、寄生した種(宿主)の働きアリに世話をしてもらいながら、次世代の女王や雄を産んで暮らします。
巣を乗っ取る暗殺女王
▲地中にあるクロオオアリなどの巣から多くの仲間たちを連れて引っ越し、樹洞に新たな巣をつくり直す。
トゲアリの女王は、クロオオアリやムネアカオオアリなどの巣に侵入して女王を咬み殺し、その巣の働きアリに餌を運ばせたり自分の産んだ子どもを育てさせたりしながら、最終的には巣を乗っ取ってしまいます。不思議なのは、トゲアリの女王が巣に侵入した際、働きアリに攻撃されないこと。アリは体表に付いた炭化水素の構成で仲間を識別しますが、トゲアリはそれを侵入する相手に合わせて擬態する術を身に付けているのです。
出典:日本自然保護協会会報『自然保護』No.564(2018年7・8月号)