緑のgooは2007年より、利用していただいて発生した収益の一部を環境保護を目的とする団体へ寄付してまいりました。
2018年度は、日本自然保護協会へ寄付させていただきます。
日本自然保護協会(NACS-J)の活動や自然環境保護に関する情報をお届けします。
日本自然保護協会が毎年行っている市民参加型・自然環境調査「自然しらべ」の今年のテーマは「アリしらべ」に決まりました。昨今のヒアリ騒動など、侵入する外来種が社会的な注目を浴びていますが、アリは日本だけでも300種ほどいて、生息環境も生活の仕方も実にさまざま。ほかの生きものの餌になるほか、動物の死骸を分解したり、植物の種子を散布したりと、自然の中でとても大きな役割を果たしている生きものです。
アリは種類ごとにさまざまな環境を使っており、樹木には樹上性のアリ、裸地には裸地を好むアリ、と各環境にそれぞれ生息しています。また、アリの種数が多い場所というのは、それだけ多様な環境があり安定した環境であるともいえます。例えば、草地や裸地にどんな種類のアリがいるか、どのぐらいの種数がいるのか注目することで、その裸地がいつかく乱されたかどうかを推測することもできます。このようにアリを観察することでその場所の生物多様性の状態を診断することができるのです。身近に存在しながら、普段あまり注目されていないアリですが、自然の状態を把握するのに適した生きものなのです。
残念なことに、ヒアリ侵入のニュースで“アリは悪い生きもの”という認識が広がりました。専門家からは、ヒアリが定着し爆発的に拡散することで、日本の在来アリたちが次々に駆逐されてしまう危険性も指摘されています。同時に、在来アリが高い密度で生息していることで、その環境に外来アリが定着する隙間、すなわち、女王アリが新たな巣をつくり出す可能性を減らせる効果があるという海外の研究報告もあります。ヒアリが怖いというだけで殺虫剤をまいて在来のアリをも含めて駆逐することは、逆にヒアリなどの外来アリが定着しやすい環境をつくってしまうことなのです。
実は、日本のアリがどういうところでどれくらい生息しているかという全国的な調査はあまりされていません。その意味でも、今回のアリしらべは市民が実施する全国調査としてとても意味があることなのです。
在来アリの観察を通じて身近な自然環境の多様さを知ってもらうとともに、在来アリの今の生息情報をしっかりと把握して、今後のヒアリなどの外来種の定着に対し脆弱な場所はどこなのかを知ることはとても重要です。
ぜひこの夏は、お子様やご友人と一緒に「アリしらべ」にご参加ください!
しらべ方など詳しくは・・・・
https://www.nacsj.or.jp/shirabe/2018/06/11192/
出典:日本自然保護協会会報『自然保護』No.564(2018年7・8月号)