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緑のgooは2007年より、利用していただいて発生した収益の一部を環境保護を目的とする団体へ寄付してまいりました。
2017年度は、日本自然保護協会へ寄付させていただきます。
日本自然保護協会(NACS-J)の活動や自然環境保護に関する情報をお届けします。

守った自然をもっと良くする
赤谷の森を活かした地域づくり

  • 2017年11月15日
  • NACS-J

 日本自然保護協会が群馬県みなかみ町で進めている森林生態系の協働管理「赤谷プロジェクト」は開始から13年が経過しました。生物多様性の復元と、持続的な地域づくりを目的として、さまざまな活動を行っていますが、現在の重点事項は、①2014年9月から開始したイヌワシの生息環境の向上をはじめとするイヌワシ・クマタカを指標とした具体的な森林管理の提案と推進、②個体数の増加傾向がみられるニホンジカの低密度管理、③みなかみ町のユネスコエコパークと連携した地域づくりの推進です。

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▲スギ人工林2haを伐採して創出したイヌワシの狩場。


イヌワシやクマタカが暮らす森づくり

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▲伐採後の試験地上空でエサを探索するイヌワシ。
 イヌワシの生息環境の向上については、草原地帯を本来の生息地とするイヌワシが狩りをするための開けた環境を創出する試験を14年9月から開始しています。15年10月に試験地として設定した成熟したスギ人工林2haの伐採を行ったところ、伐採後の試験地の上空で獲物を探しているイヌワシが観察されたほか、試験地周辺のイヌワシの出現頻度が高まっているのが確認されています。この試験は16年9月までを第1次試験として設定しており、16年度中に成果をご報告する予定です。
 また、宮城県南三陸地域でもイヌワシの生息環境を向上させるため同様の取り組みを行う準備を進めています。南三陸地域では60年以上に渡って地元の方々がモニタリングを続けてきたイヌワシのつがいが、11年以降消失しています。地元の南三陸ワシタカ研究会や、山林を所有する林業関係者、国有林と連携しながら、イヌワシの生息環境を復元しつつ、地元の林業を振興する取り組みを進めます。

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▲イヌワシの生息環境を復元しつつ、地元林業の振興に向けた取り組みを進めている南三陸町の民有林(スギ林)。
クマタカについては、「クマタカを指標とした生物多様性保全に資する森林管理」という提案資料を作成しました。クマタカは北海道から九州までさまざまな植生の山地森林に広く分布しています。クマタカはイヌワシと異なり、森の中でも狩りをすることができます。しかし、狩りのためには、獲物となるさまざまな中小動物が生息し、樹木が密生し過ぎない適度な林内空間があることが重要です。現在、日本の人工林では伐採などの管理が行われず、樹木が密生し生物多様性の低い森林も少なからず存在しています。一方で、成長した人工林を営巣木として繁殖しているクマタカも存在します。そのため、クマタカを指標として森林管理を行うことで、生物多様性を保全するとともに、持続的な木材生産を推進することができるのではないかと考えています。今後、この提案を全国の森林管理に普及する取り組みも進めていきます。


ニホンジカをどうするか

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▲赤谷プロジェクトのエリアでもニホンジカの分布拡大が確認されている。
 ニホンジカの管理は、日本の森林生態系保全の最大の課題となっています。赤谷プロジェクトエリアは、まだ低密度の状態ですが、個体数の増加と分布域の拡大がモニタリング結果から確認されています。今後この増加傾向を抑え、現在の低密度を維持することを目標として、検討と試行を始めています。13年度から、低密度の状態における科学的なモニタリング方法と評価指標を整理して実行し、そこで得られた情報をもとに、今後予測される状況を含めて地元猟友会およびみなかみ町役場と情報共有を進めてきました。今年度からは試験的な捕獲をスタートさせ、日本初と言えるニホンジカの低密度管理を実現したいと考えています。

ユネスコエコパークと連携した地域づくり

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▲みなかみ町の木材を使いカスタネット製造が再開した。
 日本自然保護協会では、15年度からみなかみ町のユネスコエコパーク登録を支援しています。16年度に申請書を提出、そして今年6月に晴れてユネスコエコパークに登録されました。みなかみ町は赤谷プロジェクトをユネスコエコパークにおける柱のひとつに位置づけ、森を活かした持続的な地域づくりに連携して取り組み始めています。
 みなかみ町には教育用カスタネットのほぼすべてを生産してきた工場があります。北米からの輸入材の入手が困難になり一時製造が中断されていましたが、赤谷プロジェクトと連携し、地元木材を提供することで、製造が再開されました。みなかみ町は、ユネスコエコパークにおける自然を活かした地域づくりを発信する拠点として「森の恵みと学びの家」を設置し、その主要なコンテンツとして、古くからの地元産業であるカスタネットを活用しています。


※掲載しているデータは、会報『自然保護』掲載時(2016年)のものに若干の加筆修正を加えています。
 出典:日本自然保護協会会報『自然保護』No.552(2016年7・8月号)

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