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(Boulder)vol.18 ボールダーの学校給食改革は成功するか

  • 2013年3月1日

生まれ変わった給食、子供たちとアン・クーパーさん
生まれ変わった給食、子供たちとアン・クーパーさん
 2009年、ボールダー郡の公立小中学校で新たな給食プログラムが始まった。加工食品中心の従来給食が見直され、手作りで健康的な学校給食が全ての子供たちに平等に提供されると期待されている。
 プログラム発足当初、私は「ボールダーほど健康的なライフスタイルに関して意識の高い町ならば、新しくヘルシー志向のこの給食制度もすぐに根付くことだろう」と楽観していた。しかし3年が経った今、現実 はそう簡単ではないことが明らかになってきた。


従来の学校給食

典型的な給食の一例
典型的な給食の一例
学校の売店で売られるスナック菓子
学校の売店で売られるスナック菓子
 アメリカの小中学生にはお昼ご飯をどう食べるか、2つの選択肢がある。一つは「サックランチ」というお弁当を持参する方法、もう一つは「学校給食」を利用する方法。様々な人種、文化背景、宗教を有するアメリカの子供たちの状況を一般論で表現するのは難しいが、良く目にするサックランチとは、ジャムやピーナッツバターをたっぷり塗ったサンドイッチとチップス、リンゴ一つを紙袋に入れて子供たちに持参させるようなものが多い。
 学校給食では主に加工食品が出される。典型的な給食メニューは冷凍のコーンドッグやハンバーガー、チキンナゲット、ピザ、ブリトーなどがメインディッシュとして繰り返しメニューに並び、副菜はフライドポテトや生のにんじん、ブロッコリー、もしくは缶詰の豆などの野菜が少々。そして砂糖たっぷりの市販のフルーツポンチ、チョコレートミルク、または脂肪分1%の低脂肪牛乳が添えられる。
 学校には鍋やフライパンなどの設備はなく、予算も人手も足りない。廉価な冷凍の加工食品をレンジやオープンで暖め直して提供する以外に採算性のある方法がないのだ。学校の食堂にはクッキーやスナック菓子を並べた売店、飲み放題のソーダバーが設置されている。
 メーカー側からのキックバックを期待する学校が多かったためだ。ちなみに高校生になると「外食」という選択肢がこれに加わり、学校周辺のファストフード店で食事を済ませる者も多い。アメリカの子供たちは成長期の大切な時期をこれらのメニューを繰り返し口にしながら過ごす。ボールダーの子供たちも例外ではない。


ヘルシーな学校給食の前に立ちはだかる壁

ボールダーでのアン・クーパーさん活動の様子
ボールダーでのアン・クーパーさん活動の様子
新たに設置されたサラダバー
新たに設置されたサラダバー
写真はいずれもPhoto by Ann Cooper's Lunch Lesson
 2009年、ボールダー郡は「反骨の給食栄養士」と呼ばれ世界的に活躍する女性活動家アン・クーパーをボールダーバレー学区栄養サービスディレクターとして招き学校給食の改革に着手した。
 彼女はまずスナックスタンドを廃止し、全ての公立学校にサラダバーを創設、加工食品の購入を止めさせた。全ての学校にキッチンを設置する予算はなかったが、できるだけ手料理を作れるようにと学区内に5つの給食調理キッチンを作り、そこから毎日1万食を郡内50の学校、2万9千人の子供たちへ配給できるようにした。
 しかし結果は、給食の売り上げ低下という形で表れた。子供たちは給食の味が変わったことを歓迎せず、給食廃棄は増える一方。改革着手から1年経った時点で36万ドル(約3千万円)の赤字を計上してしまった。人工調味料や着色料、防腐剤などがたっぷり入った加工食品に慣れた子供たちの舌は容易に自然の味を受け入れようとしないのだ。
 予算確保の問題は大きく立ちはだかるが、最も重要なのは子どもへの食育だ。「ジャンクフードを与えられている子どもは授業中居眠りばかりしています。考えることも学ぶこともできなくなっているのです。健康な心と体を育てるには、にんじんが土の中で育つことを、調理する喜びを、自然のものを食する有り難さと美味しさを子どもが感じられるような教育を盛んにしなければならない」とアンは訴える。


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