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(Boulder)vol.16 オーガニックへの高まりとGMO(遺伝子組み換え作物)

  • 2012年2月1日

ラベル表示への懸念

GMOを揶揄するトウモロコシ(薬が埋め込まれている)
GMO を揶揄するトウモロコシ(薬が埋め込まれている)Photo by Youtube トウモロコシの缶詰(今のところ非GMO 食品を入手する手段はオーガニック認証に頼る以外ない) トウモロコシの缶詰(今のところ非GMO 食品を入手する手段はオーガニック認証に頼る以外ない) 左:オーガニック認証あり、右:オーガニック認証なし
 オーガニック食品業界における最も切迫した問題の一つとしてまず真っ先にアロン氏が挙げたのは前述のGMO問題だ。強く、栄養価が高く、害虫抵抗性を備えた理想的な作物-そうGMO賛成派は声高に喧伝する。「ごまかされてはいけない」とアロン氏は言明する。「以前から、GMO食品がオーガニック食品より栄養面で劣っているという膨大な数の自主研究が繰り返し提出されているし、害虫抵抗性に関してもGMO種がさらに強靭な新種の害虫を生み出しエコシステム自体を壊しつつある。その食品を口にする人間も例外ではない。本当の悲劇は合衆国政府が食品のラベル表示をないがしろにしていることだ。オーガニック認証の表示以外にはどの食品にどれだけGMOが使用されているかを見分けるすべがないのだから」とアロン氏は憤る。

 次にアロン氏が問題視するのは、消費者を惑わすその食品ラベルの表示についてである。通常食品の材料表示にはGMO以外にも表示されていない重要な情報が多々ある。至るところに存在するこの小さな情報隠蔽や誤解を招きやすい表示は一見無害に見えるが、オーガニック食品業界にとっては大きな害をなすものだ。
 例えば「ナチュラル」という表示。厳格なガイドラインに沿って定義され、政府の認証基準がある「オーガニック」とは違い、審査過程が存在しない単なる一つの表現に過ぎない単語だ。「食品の定義には何の意味もなさない言葉だが消費者を惑わすには十分な効果を発する」とアロン氏は指摘する。「GMOやその他の化学保存料を含んでいても、それを『ナチュラル』食品と呼ぶことは可能だし、消費者は『ナチュラル』という表示を見つけると『オーガニック』よりもクリーンな食品であると思い込んでしまうというリサーチ結果まであるくらいだ」  「GMOが全面的に悪だと言っている訳ではない。巧妙に情報を隠し得るラベル表示システムと生産者の誠意のあり方を問題視しているんだ」とアロン氏は言う。

チョコレートに表示の3つの認証。左から米国農務省(USDA)のオーガニック認証、企業の社会的責任とフェアトレードを推奨するNPOの認証、非GMOを推奨するNPO の認証 砂糖にも2つの認証
写真左:チョコレートに表示の3つの認証。左から米国農務省(USDA)のオーガニック認証、企業の社会的責任とフェアトレードを推奨するNPOの認証、非GMOを推奨するNPO の認証。写真右:砂糖にも2つの認証


オーガニック業界の成長と消費者の誤解

ユダヤ教の戒律に従った乳製品を使用していないと知らせる表示(左)ユダヤ教徒の多いアメリカらしい
ユダヤ教の戒律に従った乳製品を使用していないと知らせる表示(左)ユダヤ教徒の多いアメリカらしい
 最後にアロン氏が言及したのはオーガニック食品業界が直面している「成功とスケール」の問題だ。アメリカのオーガニック産業は毎年成長を続けており、2010年には売り上げ267億ドルの市場へと成長した。2009年からは約7%増の成長率だ。この急激な市場成長に伴い、業界は商品の質、基準、誠実さに関して試練のときを迎えている。
 「今日、オーガニック産業にも大企業が続々と参入しだしている。例えば、大規模農場でオーガニック認証のミルクを生産している大手某デリ企業がある。しかし、その乳牛たちは小さなケージに一日中閉じ込められた状態で飼育されていて到底人道的飼育とは言えない状況だ。そう、オーガニック認証と家畜の人道的飼育は全く別の問題なのだ」とアロンは言う。「オーガニック認証のミルクだから広大な土地で自然放牧されているとばかり思っていたのにがっかりだ」時折このような誤解が消費者の話題になる。オーガニック業界の成長とともに、参画する企業規模も大きくなり、この類いの消費者側の誤解は今後さらに増えていくだろう。

 では、現在のオーガニック認証は食品の生産過程、そして殺虫剤の使用の有無などを定義しているが、その他に、オーガニック認証がカバーする範囲を広げたり、定義し直したりする必要はあるのだろうか。例えば、企業責任にまで認証が言及する必要があるのか。雇用者への福利厚生の内容、取引先への対応、エコフレンドリーな包装かどうか、製造過程、流通過程のカーボン・フットプリントについてはどう判断すべきだろうか。これらすべての事柄を包含し一つの基準を設けることは非常に難しい。
 「個人的には既存のオーガニック認証はこれらその他の事項を包含する必要はないと思う。認証事項の多様化は今のところ成功を収めているオーガニック認証システムの意義を薄れさせる可能性の方が高いだろう。オーガニック認証以外にも商品の質や企業の取り組みを評価し認証するシステムは無数にある。消費者は多様な認証基準の知識をさらに勉強し、商品の優劣を判断する目を養う必要があるだろう。私たちナチュラリー・ボールダーはそのための情報提供と問題提起を今後も続けて行く」とアロンは結ぶ。


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