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(Boulder)vol.11 世界が注目する“スマート・グリッド”(次世代電力網)は、ボールダーから

  • 2009年7月16日

ボールダーが「スマート・シティ」に選ばれた理由

ボールダー
「スマート・シティ」に選ばれたボールダーの街
 スマート・グリッド・シティはアメリカで初めて、町中にスマート・グリッド・テクノロジーを集約したコミュニティとなるだろう。スマート・グリッド・シティを先導する電力会社エクセル・エナジー社が、アメリカ中から候補として上がっていた他の8つの地域を差し置いてテスト区域として選んだのはコロラド州ボールダーの地。人口10万人弱という理想的なサイズ、新テクノロジーを受入れられるだけの教養を備えた地域住民の質(地域人口の70%が大卒以上の学歴を有している)、コロラド大学や国立再生可能エネルギー研究所を始めとする連邦政府研究施設の数々を有するアカデミックな土壌、この全てがボールダーを選ばしめた理由である。
 現在14,000個のスマート・メーターとそれらをつなぐ100マイル(160km)の光ファイバーが取り付けを完了した。「これは非常に進んだ考え方のプロジェクトだ。私たちのビジネス形態さえも変質させかねない」とエクセル・エナジー社ディック・ケリー社長は語っている。

ボールダーのダウンタウン
ボールダーのダウンタウン
◆ボールダーにおけるスマート・グリッド計画

フェーズI: 2008年3月〜8月

  • 15,000個のスマート・メーターを個人住宅と商業施設及び工場施設に設置
  • インターネット上のスマート・メーター・ポータルサイトに利用者がアクセスを開始

フェーズII: 2008年9月〜2009年12月

  • 35,000個のスマート・メーターを新たに設置
  • スマート・メーター・ポータルサイトに全ての利用者がアクセスできるようになる
  • プラグインハイブリッドカー、ソーラー発電、風力発電などがスマート・グリッドに接続可能となり電力の双方向配電が稼働しはじめる


利用者の意識は変えられるか?

スマート・グリッド宣伝カーの内部
スマート・グリッド宣伝カーの内部
スマートハウスの模型
スマートハウスの模型
 エクセル・エナジー社はボールダーで最新のテクノロジーをただ試行運転しているだけではなく、最新テクノロジーへの利用者の反応を確かめることにも注意を払っている。真夏の暑い日、果たして利用者は「電力を無駄遣いしているから」という理由で電力会社が自分の家への送電をストップすることを本当に許容できるのだろうか?そもそもこんなに高度なシステムを全ての利用者が使いこなせるようになるのだろうか?「猛暑に襲われ気温が35℃になった途端に‘ねえ、もうスマート・グリッドなんてどうでもいいわよ’と言い出したりはしないだろうか」とエクセル・エナジー社カスタマー・サービス課のケン・フロイド副代表が指摘するように、利用者側の意識変革が追いつくのかが懸念事項である。

 私が数週間前に参加したエクセル・エナジー社主催のセミナーでも計画にかかる費用とそれから得られる効果について参加者から同じような質問がたくさん出ていた。スポークスマンが回答に窮するという場面にも度々遭遇した。「当社はこの計画に多大な投資を行った。当初、オバマ大統領が誕生し、景気対策法案が可決され、そしてこの分野への国の援助が大幅に増えると知っていたなら、もう少しスタート時期を遅らせても良かったかもしれない」と弱気なスポークスマンの発言が印象的だった。
 しかし私はこう思う。厳しい質問が利用者から出るということは、それだけ人々が注目し期待を寄せているプロジェクトなのだと。スマート・グリッドは「採算が合うプロジェクト」というゴールだけを目指してはいけないだろう。エクセル・エナジー社はかつてのエジソンのように、ライフスタイルを向上させる公益をもたらす計画に取り組んでいるのだから。

 トーマス・エジソンが世界で初めて電球を発明してから一世紀以上。デジタルコミュニケーション機能を備えた配電網は私たち自身が「どのように」「どこから」エネルギーを取得するかを選ぶ権利を与えてくれるだろう。そしてもっとも重要なのは、私たち一人一人がエネルギーの個人消費と地球上のカーボンフットプリントに責任を持つことをスマート・グリッドは可能にしたということだろう。

(更新日:2009.7.16)


■ 筆者紹介
サミュエル D グッドマン
サミュエル D グッドマン
Colorado House International, LLC 代表。コロラド州生まれ。コロラド大学ボールダー校心理学部を卒業後、約5年間に渡り、シンガポールと日本の公立及び私立の小中高校、各種企業・政府機関で英語を教える。アメリカに帰国後、コロラド州ボールダーで「コロラドハウス」を立ち上げる。Boulder Green Building Guild 執行委員、Boulder LOHAS Guild 共同創設者。
http://www.coho-online.com/cms/
info@coho-online.com (お問い合わせは日本語でどうぞ)

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