サイト内
ウェブ

Vol.178 音楽配信のサブスクリプション・サービスが示唆するものは?

  • 2015年8月27日

 みなさん、こんにちは。ゴスペラーズの北山陽一です。

 8月のアタマに、気仙沼に行ってきました。ここのところはずっとゴスペラーズのツアーだったので全然行けていなかったんですよね。その間に、「ここで歌っていいよ」と言ってくれた人や、「一緒にやろう」と声をかけてくれた人がいると聞いていたので、そういう人たちに代表としてご挨拶するというのが目的のひとつでした。

 加えて、これまでずっと支えてきてくれた人たちの近況も聞きたかった。気仙沼復興商店街南町紫市場の坂本さんはじめ皆様にはプロジェクト開始当初からずっとお世話になっているんですが、現状が「仮設」ということはいずれどこかに移動するということですよね。ところが、そのことに関して伝わってくる情報が錯綜していて、これはいかんと。現場の方に直接お話を聞くのがいちばん早いし正確だと思ったんです。夜中に行って夜中に帰ってくるという1泊3日、弾丸ツアー的なスケジュールでしたが、KRA(気仙沼復興協会)の前川さんを始めいろんな人たちといろんな話をして、すごく有意義に過ごしました。

 さて前回、一口500円や1000円といった単位で自分の気に入った社会的な取り組みを支援する仕組みができていくと、それが社会基盤になってみんながみんなを支えているという感覚が広がるんじゃないかということを書きましたが、「そういう支援の成り立ちを北山さんがリアルにイメージできるのは、ゴスペラーズとファンの関係、さらには意識的なアーティストとその活動に共感するファンのつながりの深さをよく知っているからではないか」と、この連載のスタッフから言われたので、そのへんについてちょっと考えてみました。

 まず、実際に僕らの支援活動に共感して下さっているみなさんへ。ゴスペラーズが主催したり、参加したりするチャリティーイベントに参加してくださって、またチャリティーグッズを購入してくださって本当に有難うございます。お前のためじゃねえよって言われそうですが、メンバーとして、共感をくださったこと、心から感謝しています。“ああ、あいつらやってんなあ”とか、“俺もなんかやんねえとなあ”とか思ってくれるだけでも、すごく嬉しいです。

 で、いただくお手紙にもよく書いてあるのですが、気持ちが柔軟でいられる理由や自分が誰かを赦せる余裕、そういうものを音楽からもらっている人は多いと思います。人それぞれ、パンクかもしれないし、クラシックかもしれないけれど、いずれにしても、どんな仕事をしている人でも音楽から何かをもらって生きているのではないでしょうか。(僕の周りはそういう人ばっかりなのです。それは僕が音楽家だから?)そういう音楽の効用、音楽の有り様を、精神的な部分での社会基盤と呼ぶことはできるかもしれない。僕らは、好きな音楽を「買う」ことで、そしてそれを聴いて癒され、満たされることで社会に貢献してるといえるのだと思います。ただ、買うという行為そのものが音楽の社会基盤的側面と直接結びつくかといえば、そこにはまだ距離があると思います。

音楽 Apple musicやLINE MUSIC、あるいはAWAといった定額配信サービスが始まったことで、その結びつきを感じやすい社会になっていく可能性がでてきたと思っているのです。どういうことかと言うと、そうしたサービスの月額定額聴き放題というフォーマットでは僕ら利用者がAWAやLINE MUSICといった大きな袋にお金を投げ入れて、そこに貯まったお金がアーティストに分配されるという仕組みになっているわけですが、あるアーティストの曲をずっと聴き続けるという楽しみ方をすれば、すごく小さな変化かもしれないけど、そのアーティストへの支払いが大きくなるわけです。その仕組みを冷静に考えてみると、自分が音楽にお金を払うということのイメージがだいぶ変わるはずなんですよ。これまでは、音楽を聴くために、ダウンロードにしろCDにしろアナログレコードにしろ一回購入したら、その後は愛を持って100万回聴こうが、未開封のまま買ったことすら忘れようが、見分けがつかなかったわけですよね。それがこれらの新しいサービスでは、自分がそのアーティストの音楽を聴き続けるという行動によって自分が払ったお金のその後の流れにも関わることができるということなんです。つまり、社会と関わる上で力をくれる音楽に、そしてその音楽を提供してくれた演奏家や作家に対して、これまでよりも具体的直接的に、対価を払うことが出来るわけです。楽しむことが直接投票につながっている。日常的に聴く曲を選ぶという行為の意味が変わるのです。

 それは、消費ということに対する感覚を大きく変えるきっかけになる出来事じゃないでしょうか。

 で、その構図を例えば社会貢献やCSR、ボランティアで考えたらどうか、ということです。自分が気持ちいいと思う話や人を選ぶことが直接支援につながるというようなことになると思うんですよね。

 というわけで、また僕なりの妄想が広がっていきそうですが、続きはまた次回

キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。