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このコンテンツは、地球・人間環境フォーラム発行の「グローバルネット」と提携して情報をお送りしています。

第6回 環境で夢を語ろう!〜学び、行動する若者たちと

  • 2004年7月15日

このコンテンツは、「グローバルネット」から転載して情報をお送りしています。

環境で夢を語ろう!〜学び、行動する若者たちと

企業に対する働きかけ

社会システムの側面でいうと、企業に対してはどういった印象でしょうか。藤谷さんは環境提言大会で企業と接触してみてどうでしたか?

藤谷

もともと、「企業の環境活動はイメージ戦略、広報ではないか」という問題意識から始めたんですが、提言大会でご協力いただいた企業はやっぱすごいなっていうところもありました。そういった企業に対して学生側がさらに、環境活動はこうあるべきじゃないか、環境報告書のここはわかりにくかった、もう少しこうしたらよいのではないかなど、具体的かつユニークな提言を行いました。僕らの提言を受け入れてくれた企業もあります。

反面、大会への協力を断られた企業もいっぱいあるんですよね。もちろんそれにはさまざまな理由がありますが。環境報告書に関しても大企業はかなり出していますが、中小企業ではあまりなく、まだまだという感じです。

企業のイメージ戦略に利用されている感じはないですか?

藤谷

参加した企業が、「参加した」ってことをホームページに載せてアピールしたりすることで、イメージ戦略に利用してるなぁという気持ちを抱いたことがないといったら嘘になります。でもそれよりも、予想以上に僕ら学生の意見を真剣に聞き入れてくれたという思いが強いです。

福島

企業や組織に対してどういう働きかけができるのかっていうのでは、僕はコンビニエンスストアを対象にして「こんびっつ」という活動の中で思ったのは、企業側に一般の消費者や私たち学生がついて行けないところがあるなということ。コンビニに関していろいろ調べて、「こうしたらいいんじゃない?」みたいな提言を自分たちでしたんですが、相手はそれで仕事をして毎日生活しているので、正直かなわないなと思いましたね。このような提言は僕たちにとっては意味があるが、相手にとっては「そんなことはもう検討したよ」って感じのことも多いんですね。

この活動は自分たちの都合もあってもう終わっちゃったんですが、これを5年続けられれば問題点の蓄積も増えるし、企業とちゃんと話せるくらいになれるんじゃないかって。日本の土壌として、欧米のように企業活動を監視し、それを続けて悪い点の改善を提言するといったものがないですね。行政や企業からサービスを受けて自分たちは金を払う、それでいいじゃないかっていうのが強く根づいているなっていうのは感じました。

藤谷

イメージ戦略自体は悪いことではないし、必要なことだと思うけど、ISO14001の認証を取っていないと契約しないよって流れや、企業が環境活動をやることは、もはや「当然」っていうとこまで来ているんだととらえるべきだと思います。そして、提言大会をやってみて感じたのは、学生の提言を商品開発部門でも参考にしたいというような西友からの話もあったことだし、企業の環境活動も、イメージ戦略というよりその次のステップに進んでいる気がしますね。

福島さんがおっしゃったように、僕たちの中でも最初は「学生の考える提言なんて、当然、担当者の人たちも検討したことあるものだろうなぁ」という不安がありました。でも、実際やってみると、学生ならでは、消費者ならではの視点をちゃんと評価してくださったと、すごく嬉しく感じましたね。もちろん企業によって温度差はありますが、良い流れもできつつあるし、また僕自身もこれからも何らかの形で関わっていきたいと思います。

「幸せに生きたい」が出発点でもありゴールでもある

最後に将来に向けての「夢」を語ってください。

私の話をまずさせてもらうと、私が環境をやろうと思ったのは自然や環境を守ろうというよりも、人が好きだったってことがありますね。人がどうやって生きていくか、個人レベルでは自己実現っていうのもあるけど、自分と周りと、とにかく人間が幸せに生きていくにはどうすればいいのかって大きいことを考えました。環境がこのまま悪化していっては個々の自己実現も図れない、世界の人たちの幸せもありえないと思って、環境に対する危機感はあるけど最初には人間のことを考えている。それがモチベーションで始めたのですが、それで将来どうなるか。

勉強していくと暗くなっていくといいますが、私は楽観的に考えていて将来的には環境は良くなるし、人も幸せになるんじゃないかと思っているんですね。それが単なる楽観主義ではなく、その根拠を持ちたいなと思って今勉強しているわけです。

学生の環境ネットワークのような明るい材料もありますし、社会全体が環境に向いてきているのではないかって。問題は環境問題解決に向けてのシナリオを考え、つくっていかないといけないということ。先人の築いたものを土台にして、若い世代が解決シナリオをつくっていくことができると思うし、環境問題は解決するって自信を持って言いたいですね、終末論に陥らずに。

鍋島

ペシミストの友人、ペッシー君と呼ばれていたんですが、ペッシー君に終末論を説かれた時、私は返す言葉がなかったんですね。何かに対するアンチテーゼがあると物事が明確化してくることがあります。終末論をどう乗り越えるか、大げさな話なんですけど、自分の中で戦いがありました。終末論に対し自分の答えをはっきりしなければならない。自分は終末論で生きていけるかなと考えたら、生きていけないじゃないですか。

では、何がしたいのと言われますと、単純な話ですが幸せに生きたいということになる。ここにいる人たちはある意味欲深な人たちだと思うんですよ、幸せに生きたいってね。でね、環境問題が障害になりますよと聞けば取り除きたくなるじゃないですか。

そういうところで一つの答えを得ました。あとはこじつけになりますが、ペッシー君を乗り越えようとしているうちにペッシー君の顔つきが変わってきました。私の洗脳作戦が成功したのかどうかわからないですけど、落ち込んでいる人ほど実は希望に満ちあふれた話を聞きたがっている人であるということかもしれません。

人が変わっていけば未来が開けてくると思うのですが、端から終末論では未来はなくなります。ここにいる人たちもそうだと思うけど、最初に計画を立てるときはお先真っ暗ですが、やっているうちに何かしら道筋ができてくるものです。要は、出発点でもあり、ゴールでもあるのですが、幸せに生きたいというのが原点です。

小倉

夢で言うと、私は将来高校の先生になりたいんですよ。なぜ先生になりたいかというと、人が好きっていうのもあるけど、今の教育の仕方に対して、疑問を感じていることがあって、環境のこともそうだし他のこともそうだし。

また、メディアの責任、メディアが伝えるべきことをきちんと伝えてないんじゃないかって思いがすごくあります。今の人たちは昔に比べてメディアを通して得る情報が非常に大きくなっている。メディアは本来教育的志向が高いと思うんですよ。メデイアから知識を得て自分の知識の体系をつくっていくという面は、とくに社会教育という面では大きい。だから、メデイアや学校教育をよくしていきたいという志向があります。

オゾン層の破壊やCO2(二酸化炭素)による温暖化を理論的に理解するのも大切だけど、それが実践につながるようなものになり、それによって社会が変わっていけばいいなと。

21世紀の新しい価値観

福島さんは地方の環境税や森林税を研究しているとのことですが、社会の仕組みを変えるのはそういう税制的な部分からという考えがあるんですか?

福島

環境をやってきた問題意識の原点が経済の構造ですね。現在の経済の主流と呼ばれる人たちの頭の中にはやっぱり経済の向上、GDP(国内総生産)の成長というのが中心で、それがなければ国がだめになってしまうっていう考えがある。GDPが唯一の尺度で、上を見ないとダメなんだっていうものの見方に支配されている感じがするんですよ。

こういった基本的な考え方を変えていかない限り、いろいろ法律をつくっても無意味とは言わないけど根本的な解決にはならないと思う。GDPも一つの指標でいいんだけど、もっと他の評価方法をつくっている研究者もいっぱいいる。さっき幸せって話もあったけど、人の幸せの尺度を測る多様な指標があって、それが評価される社会にならないといけないと思います。

楽観的に見るとか悲観的に見るという話は別にして、客観的に見れば、例えば温暖化などは悪化していくことは目に見えているんですよ。そういった中で、僕は特定の問題を取り上げて、その環境負荷の低減を目指すというよりは、社会全体の価値観をどのように変えていくかというところに興味があります。

大変だけど楽しみですね。今みたいに自己実現を含めて不確定なものに満ちている時代には、幸福の領域を決めるのは難しい。不安はあるけど楽しみとも言えますね。

 

本当の豊かさとは

藤谷

僕は自主的に行動する人が意外といるんだなっていうのは思いますね。環境提言大会(※4)をやった時も、これをやると1ヵ月ぐらい縛っちゃって、海外旅行とか行けないんですよ。でもけっこう自分たちの意見をぶつけてみようっていう人たちが少なからず集まってくれるんですね。こういう人たちがけっこういるんだ、自分だけじゃないんだということを実感しました。その企画自体が受身な姿勢を変えようという意図もあったから手ごたえを感じました。またこういう場でもみなさんと出会えたりもするわけだし。

僕の場合は経済学でもミクロとかマクロというよりは、むしろ今まで経済学で考えられてこなかったものをいかにとらえていくべきかっていうのがあって。「価値」ってなんだろうってことを真剣に考えていきたいですね。景観アメニティみたいなものとか、お金で「いくら」って表せるものじゃないでしょ? そういったことを今後研究していきたいと思っています。

新しい価値観も絡んできますよね。

藤谷

日本は経済大国だけど心の豊かさはないって言われてきたけど、少しずつかもしれませんが、本当の「豊かさ」って何だろうということをみんなが考える風潮になってきてます。これからもますます「価値」というものは注目されていくだろうし、そうあるべきだと思います。

手探りだけど着実に変わっていますよね。やっぱりモノから心へみたいなシフトはしていますよね。もう始まっているんですが、21世紀の、あるいは未来のイメージってできているんでしょうか?

鍋島

21世紀は明るいとか暗いと言う人がいますが、今まで出たことのないまったく新しい時代なんじゃないかって。今までの延長ではありえない時代が来るんじゃないかな。

数年後の日本はどんな風に変わっているんでしょうか。ぜひ5年後にまたこうして集まってもらって、5周年記念座談会をやりたいですね。今日はありがとうございました。

 

(2003年11月15日東京都内にて)

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