OpenAIのCEOサム・アルトマン氏に聞いた「AIと日本の未来はどうなる?」【後編】

  • 2025年2月16日
  • Gizmodo Japan

OpenAIのCEOサム・アルトマン氏に聞いた「AIと日本の未来はどうなる?」【後編】
Photo: Taro Matsumura

Lifehacker 2025年2月5日掲載の記事より転載

2025年2月3日、アンダーズ東京で開催されたOpenAI主催の開発者向けカンファレンス「OpenAI Builder Lab」に、同社CEOのサム・アルトマン氏がサプライズ登壇。

当カンファレンスではChatGPT「Deep Research」がもたらす可能性や、日本市場でのAI活用、AIエージェントとロボティクスの未来について日本の開発者たちによる熱気に満ちた対話が。

カンファレンス後に、サム・アルトマン氏が語った「AIと日本の未来」とは……。

日本は重要な市場である。

ーー今回の来日で日本に対して抱いた印象は? 日本でのビジネスに関するビジョンをお聞かせください。

わたしが今回得た質問の多くは「今年後半や来年には何をするのでしょうか?」といった声。「もっと良いものが欲しい」との期待も多く寄せられました。

これこそがわたしたちが提供したいことです。推論モデルやエージェントに対する期待が高まっています。そして、日本の企業やユーザーとの協力について言えば、日本はわたしたちにとって非常に重要で、世界のトップ5に入る市場です。

ーーなぜ重要な市場なのでしょうか?

日本のみなさんは、製品を使うのが好きですよね。APIを利用して構築するのを楽しんでくれてもいます。

実際、わたしが驚いたのは、今日(東京大学でのカンファレンスで)何人かの学生が「OpenAI Pro」を使っていると話していたことでした。世界中のほとんどの学生は利用していません! 学生にとっては高価なのでしょう。しかし日本の学生は積極的に利用してくれている。

わたしたちは、今回いくつかのパートナーシップを発表するために来日しました。日本の大手企業と非常に密接に協力していく予定です。

今晩、大きなイベントがあります。それにいまから非常に興奮しています。だから、日本の企業がサービスを通じて得られる価値を見られるのを楽しみにしています。

ビジネスとAI、教育とAIはどう変わる?

ーー日本のビジネスシーンで特に注目している業界は?

あらゆる領域で。すべての分野、教育、医療、科学、金融、工業、製造分野です。

ーー教育の領域についてお聞かせください。日本では学生がAIに頼りすぎていることを問題視する見方があります。また、利用しようとすると学生にとってはコストがかかるという側面もあります。

わたしたちの最も重要な優先事項の一つは、常に無料サービスを改善していくことです。先週、O3 Miniを無料プランに追加しました。これは現在、世界で最もスマートなモデルかもしれません。あなたも無料で利用できます。わたしたちはこれを実現できることに非常に嬉しく思っています。

これからもこのようなことを続けていきます。わたしたちは学生をとても大切に思っています。いつか教育版も作るかもしれません。それをより多くの人に利用してもらえるようにしたいと考えています。

ーー講義や教師がどのように活用すればいいでしょう?

まずは、AIを使うことを教育する。実際に多くの教育者が、わたしたちの技術を本当にうまく活用しています。わたしたちのウェブサイトにも彼ら向けのリソースがありますが、非常に効果的に機能しています。

ーーAIが学生の学びを妨げているという人にはどのようなメッセージを送りますか?

AIは社会のすべての領域で活用されるようになるでしょう。そのために誰もが準備する必要があります。AIは学生を教育するプロセス全体の中で重要な一部となるべきです。

ーー今後、学生たちにはどのようなスキルセットや経験が必要でしょうか?

学生たちはAIに対応する必要があります。最も重要なのは、ツールに深く慣れ親しむこと、変化のスピードに対して柔軟に適応できること、急速に変わる世界におけるレジリエンス(適応力)を学ぶこと、そしてAIとともに進化・共進化していく方法を学ぶことです。

ーーAI教育においてどのようなツールを使うべきでしょうか。今後、AIを活用して課題を解決したり新しいものを創造するためには、新しいカリキュラムが必要になります。しかし、AIは高速で進化しています。AI教育がどのようにAI自体に影響を与えるとお考えですか?

いい質問ですね。わたしたちもすべての答えを持っているわけではありません。現在進行中の変化として見られるのは、プログラミングの授業が大きく変わっていることです。AIがコードを書けるようになってきており、数年後にはわたしたちはいまと同じ方法でコードを書くことはないでしょう。そのため、「もはやプログラミングを教える意味がない」と言う人もいます。

2026年には、すべてのコードを書けるAIが存在すると仮定しましょう。もしそうだったらプログラミングの授業で何を教えるべきでしょうか? プログラミングの授業の意味は何でしょうか?

わたしたちはこれまでも多くの変化を経験してきました。パンチカードから低水準言語、高水準言語へ。そしていま非常に高度な言語を使っています。しかし、プログラマーとして学ぶべき概念や、ツールの使い方、コンピュータを思い通りに動かす方法は依然として重要です。

わたしが大学に通っていた頃も10年前なら必須だったことが、もう必要がない、ということがたくさんありました。この変化の速さを考慮し、今後も変化が続くことを前提に考えるのが正しいアプローチだと思います。

今後、ガジェットは出る?

ーーこれまでに多くの製品やサービスが発表されてきましたが。AGI(汎用人工知能)が目標だとして、今後数年間でどのようなものが?

GPT-3からGPT-4への進化は世界を驚かせましたし、GPT-4からGPT-5も同様に大きな飛躍になるでしょう。

これらのモデルは驚くべき能力を持っています。もしかすると、GPT-5やGPT-6の頃には「もうこれ以上の知能は必要ない、すでにわたしより賢い」と思うかもしれません。その時点で重要なのは、それをどのように統合し、使いやすくするかです。

音声モード、キャンバス、ビデオなどのすべての機能を一つのモデルに統合できるかどうか。モデルがウェブ検索をすべき時、リサーチプロジェクトに取り組むべき時、コードを書くべき時、音声モードに切り替えるべき時を自動的に判断できるようにすることが次の大きなマイルストーンになるでしょう。

ーーAIの倫理や規制についても多くの議論があります。私たちがAIと共につくる次世代社会に対応するために何をすべきだと考えますか?

わたしたちがAIを世界に提供している理由の一つには、AIと共に進化する必要があるという考えがあります。AIを観察し、適応し、それがどこでうまく機能し、どこで機能しないのかを見極め、どのように管理し、活用していくかを考えることが重要です。

そのためには、グローバルな対話を続けることが最善の方法だと思います。

ーー日本人はガジェットが大好きです。OpenAIから新しいデバイスは?

いまのところ共有できる情報はありません。まだ少し時間がかかりますが思いますが、皆さんが気に入る素晴らしいガジェットを作るつもりです。

日本の読者に伝えたいこと

ーー日本の消費者やライフハッカーの読者にメッセージをお願いします。

こんなに素晴らしい国に住んでいることは本当に幸運だと思います。

毎回日本に来るたびに、この国がどれだけ好きか信じられないほどです。過去3年間で6回も来ていますが、毎回とても幸せな気持ちになります。

AIは、いま急速に進化しています。国として、社会として、企業として、個人として、AIをどう受け入れるかが日本にとっても非常に重要だと言えるでしょう。

カンファレンス中にも「ドラえもん」と共存している日本のようなスタイルはいいと思うと話し、日本に来る度に幸せな気持ちになる、と語るアルトマン氏。

インタビューを通じて「ドラえもん」が友だちとして存在するあの世界のように、AIが私たちの日常に溶け込み、世の中の「当たり前」になるのはすぐそこなんだと感じました。サム・アルトマン氏の次の来日が、どんなサプライズを連れてくるのか、今から楽しみです。

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