4月23日は「国際マヌルネコの日」。2019年、マヌルネコ国際保全同盟(PICA)によって、マヌルネコの保全や環境について興味と知識を深めるという目的で定められました。
今にも人間の言葉を話し始めそうな表情、むっくりと豊かなわがままボディ……。そんな愛すべきマヌルネコについて理解と知識を深めるべく、今年もCREA編集部がまとめました。
今日はマヌルネコの写真を眺めながら過ごしましょう。
「マヌルネコ」は、むろん、ネコの一種。なんと600万年も前から存在していることがわかっているため、“世界最古のネコ”といわれています。
ロシアのバイカル湖周辺からヒマラヤ山脈、ゴビ砂漠などの砂漠帯、なかには標高3,000〜4,000メートルの高地の草原に生息しているものまでいます。岩の割れ目やほかの動物が掘った穴で暮らし、昼間は休み、夜になると出歩いて捕食するという、夜型生活です。
そもそも「マヌル」とは、モンゴル語で“小さいヤマネコ”という意味。そんなヤマネコが世界中のネコ好き・動物好きを魅了しているのは、抱きしめたくなるようなふわふわむくむくな毛と体、そしてなぜか不機嫌そうな顔つきやのっそりとした動き。見ていて飽きることがない奥深い魅力があると思います。
猫だけに見事な猫背。俊敏さもありますが、のっそりと動く様子がまた愛らしい!
そんな、なにやら表情がありすぎるお顔の特徴にもちゃんと理由があるんです。
まず、ネコのなかでもかなり頭が大きめで、顔も平たんで幅広です。そこに、ネコの象徴ともいえるふたつの耳がだいぶ遠く離れてついています。ほぼ額の横といってもいいんじゃないでしょうか。耳の先端も三角ではなく丸みを帯びていて、印象をファニーにしているようです。
これは、見通しがよい砂漠などで岩場や物陰に隠れて獲物を狙うため。岩から耳がちょこんと出てしまっては元も子もないですよね。岩陰から目だけをそっと覗かせるためにこのような顔になりました。
また、狩りのときにはしっぽを使った作戦も。あえて獲物の前でしっぽを振り、相手を幻惑するといいます。「なんだあれは……?」と獲物が考え込んでいる隙に距離を詰め、一気に捕食するそうです。
もうひとつ、マヌルネコには必殺技があります。狩りのときではなく、イヌワシやアカギツネなどの敵に襲われたときのマヌルネコの秘策……それは岩のふりをすること。
そのモヤッとした毛色と丸みでうずくまられては、岩なのかネコなのか、確かにわかりにくいかも。マヌルさん、さすがです!
待つ、惑わす、うずくまる。生きるためのスキルにスピード感がゼロのマヌルネコ。それもまた彼らの知恵なのですね。
毛皮もイエネコよりはるかにモフモフです。むっくりと大きく見えますが、彼らの名誉のために言っておくと太っているわけではなく、体重は3〜5キログラムと、イエネコとほとんど変わりません。
大きく見えるのは、毛の長さが4〜7センチもあり、さらには、その毛が1平方センチメートルあたり約9,000本も生えているから! このボリュームはネコ界でも堂々の最多です。
というのも、マヌルネコが暮らす土地はマイナス50度にもなる寒冷地。さらには前述のとおり、待つ、惑わす、うずくまるタイプですから、雪や氷の上でじっとしていなければならないこともしばしば。この全身ぬくぬくの毛皮のおかげで、深い雪のなかでも氷の上でもへっちゃらなのです。
とはいえ、夏は毛がだいぶん減り、さらには体重も落ちるため、別ネコと見まごうほどにほっそりします。
さて、私たちがマヌルネコに惹かれるのは、その瞳も理由のひとつかもしれません。
これもマヌルネコ独特の特徴のひとつで、普通のネコと違って、光量の多い明るい場所では縦長になる、いわゆる「ネコ目=(ↀωↀ)」にはなりません。明るくても暗くても丸いままで、大きさがやや変わるだけです。
この理由ははっきりとはわかっていないのですが、いってみれば人間と同じような瞳を持つため、私たちはマヌルネコの表情に親しみを感じるのかも……と勝手に考えています。
室内にいるときは、こんなふうに瞳孔が開いています。つぶらな瞳で見つめられると、つい見入ってしまいます。
YouTubeチャンネル「那須どうぶつ王国」より。480万回以上再生されて大ヒット。中毒性あり。
マヌルネコといえば、那須どうぶつ王国が2021年に発表した「マヌルネコのうた」。一度聞いたら思わず「マヌルヌルヌル」と口ずさんでしまう中毒性のある歌と、マヌルネコを知り尽くしたスタッフが選び抜いた顔や動き。この動画からマヌルの沼にハマった人も多いかもしれません。わかります。
ぜひ4月23日にはこの歌を口ずさんで、マヌルネコや彼らの故郷に想いを馳せたいものです!
◆マヌルネコに会える動物園
・旭川市 旭山動物園(北海道)
https://www.city.asahikawa.hokkaido.jp/asahiyamazoo/
・那須どうぶつ公園(栃木県)
https://www.nasu-oukoku.com/
・埼玉県こども動物自然公園(埼玉県)
https://www.parks.or.jp/sczoo/
・上野動物園(東京都)
https://www.tokyo-zoo.net/zoo/ueno/
・東山動植物園(愛知県)
https://www.higashiyama.city.nagoya.jp/
・神戸どうぶつ王国(兵庫県)
https://www.kobe-oukoku.com/
・神戸市立王子動物園(兵庫県)
https://www.kobe-ojizoo.jp/
※公開については施設の状況によります。また、マヌルネコは繁殖などの目的で、動物園間のお引っ越しも多いです。好みのマヌルネコに会えるといいですね!(初出:2023年4月23日)
文=CREA編集部
写真=深野未季
参考文献=「野生ネコの百科」(データハウス)、「マヌルネコ」(竹書房)