7月中旬から1か月以上、毎晩踊り続ける岐阜・郡上八幡の「郡上おどり」。地元の人はもちろん、海外からの観光客が訪れるなど、毎年楽しみにしている人も多い400年以上の歴史を持つ祭りです。
この「郡上おどり」に欠かせないのが、カランコロンと軽やかな音が響く、踊り下駄。かつては郡上で作られていたのですが、下駄の需要が少なくなったことから郡上産の下駄が激減してしまったそう。今回はそんな地元の下駄を復活させたいと立ち上げた、下駄の専門店をご紹介します。
郡上八幡の城下町に残る、かつては繭問屋だったという築100年ほどの建物。広い土間には下駄や鼻緒がずらりと並んでいます。郡上発の下駄専門店「郡上木履」は、好きな鼻緒を選ぶと、その場で足にあわせて鼻緒をすげてくれ、セミオーダーの下駄を作ることができる下駄専門店。地域に根差したプロダクトを作りたいと愛知県出身の木工職人、諸橋さんが立ち上げたお店です。
店にずらりと並んでいる鼻緒は、本当に色とりどり。郡上ならではのものをと、郡上伝統の藍染で仕上げた生地や「オドリマス」という絵文字をあしらった粋な伝統柄の手ぬぐい生地も使われています。
店オリジナルの鼻緒は、ドットや幾何学模様などを取り入れたポップな柄をシルクスクリーンで印刷。郡上はシルクスクリーン印刷発祥の地としても知られていて、色や柄が鮮明に出た生地はシルクスクリーンならではのものです。
下駄といえば浴衣に合わせるのが定番ですが、「郡上木履」の鼻緒は洋服などの普段着にも合わせられることを意識して生地を選んでいるのも特長です。
「浴衣で踊るのはもちろんですが、地元の人は普段着に下駄を履いて踊る人もたくさん。浴衣でなくても、誰でも参加できるのが郡上おどりの魅力。だから普段着に合わせやすいようにと、さまざまなファブリックを取り入れています」
なかでも英国リバティ社のファブリックは、華やかな色合いと繊細な柄で上品なスタイルにも合いそうな鼻緒。色も柄も種類豊富です。
お店で鼻緒を選び、下駄のサイズが決まれば、鼻緒をすげて、履き心地を確かめて…と約10分ほどで下駄が出来上がります。鼻緒をどんな色や柄にするか悩んでしまう人も多いそうですが、浴衣ならば着物の色ではなく帯の色と合わせるのがおすすめとのこと。
「郡上木履」の下駄に使われているのは郡上の山々から切り出した、檜。下駄に使う木材は桐や杉などが一般的ですが、檜は比較的柔らかくて加工がしやすく、何より軽いので踊り用にはぴったりなのだそう。檜は郡上の山々に数多く植林されていることから、この檜の下駄を使うことは、地元の産業の維持発展に一役買うことにもなるのです。
ラバーソールを張り付けた下駄など、日常に下駄を取り入れてもらえるよう、さまざまな商品を開発している諸橋さん。郡上産の木材を使った商品が売れることで地元の林業が支えられ、微力だけれど郡上の山や森を守ることに繋がれば…と考えています。