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キャンプの恵み

Vol.78 潤滑油としての自然

  • 2015年3月26日

自然の中で考ふ  前回、キャンプを自然の中で行う理由として、思考が生まれやすい環境だからということを書きました。ただ、考えるという点において、自然の中にいることのメリットはそれだけではないとおもうのです。
 人の成長にとって「自分と向き合う」とか、「他者と向き合う」ことは重要だと言われますが、マイナスな部分にも目を向けないわけにはいかず、実際にはかなり苦しいプロセスです。暗~い自分の部屋の中で自分と向き合ったりした日には、どんより重い気分になるだけ。他者と向き合っても、いっぽ間違えば大ゲンカということになりかねません。
 けれど自然の中であれば、そんなふうに追い込まれる感じにはなりにくいのではないかとおもうのです。

 自然の中にいると、いろんな小さな変化に気づきます。
 遠くで鳥が鳴いている。太陽の光の色が変わった。風がすこし暖かくなった。
 普段の生活ではあまり気にも留めないことが、ふっ、ふっと意識に入り込んでくる。そんな経験は誰もがしたことがあるのではないでしょうか。これは決して集中力を途切れさせるものではなくて、身動きの取れない状況からスルリと抜け出させてくれる潤滑油のようなものなのではないかとおもいます。
 サスペンスドラマでは、崖の上で犯人が告白するというのが定番です。あれも自然の中ですが、行き止まりがすぐそこにあるという意味では、部屋の中と変わりません。舞台が大草原だったら、あのような切羽詰まった雰囲気は出せないでしょう。
あわいの力  自分と向き合うことも、他者と向き合うこともたいせつだけれど、「向き合いすぎない」ことが肝要です。自分や他者との関係をがんじがらめにすることなく、十分に考えるために、自然が与えてくれる潤滑油は役立つとおもいます。
 グリーフキャンプのような重たいテーマを扱うキャンプが成立するのは、悲しさや苦しさに囚われて居着いてしまうことを許さない環境が自然の中にあるからではないでしょうか。



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